認定企業2社とSILKが語る「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の現在地 — 自分たちで運営するコミュニティづくりへ —

2025年度「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の募集が始まりました。2015年に始まり、今回が記念すべき10回目です!(募集期間:2025.07.04~09.26)
昨年度の募集にあたってコーディネーターの石井・井上・田中が語った「『これからの1000年を紡ぐ企業認定』をアップデートします!」から1年。この間にも、新しい動きが生まれています。
認定企業が100社を超えた「これからの1000年を紡ぐ企業認定」がこれからどうなっていくのか、認定企業のお二人とイノベーション・コーディネーターの言葉で、皆さんにお伝えできればと思います。
- 株式会社アグティ 代表取締役 齊藤 徹 さん
「会社は働く人のために存在する」という信念のもと、医療や福祉施設にクリーニングとビルメンテナンスを提供。従来の雇用ではない自由な働き方を、ACWA BASEで実践しています。 - 株式会社水星 HOTEL SHE, 統括Manager/Designer 岸 えりな さん
「観光とライフスタイルの新しい選択肢をつくる」ホテルプロデュースカンパニー。ホテルをメディアと捉え、宿泊という体験を通して価値観や文化を伝える空間を創り出しています。 - SILK イノベーション・コーディネーター 石井 規雄
- SILK イノベーション・コーディネーター 橋本 勇人
会場協力:HOTEL SHE, KYOTO

認定する側・される側という立ち位置を超えて
石井:「これからの1000年を紡ぐ企業認定」のあり方がこの数年でずいぶん変わってきた中で、一番大きな変化は、認定企業コミュニティの運営を認定企業の方々が主導する動きが生まれていることなんですよね。
なので今日は、僕たちSILKのコーディネーターだけではなく、アグティの齊藤さんと水星の岸さんと一緒に、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」についてお話ししていければと思います。
橋本:新鮮ですね。よろしくお願いします!
石井:これまではSILKが交流会などを開催して、認定企業さんに参加いただくというかたちでした。今後は私たちSILKも、コミュニティの一員として場に参加する側になっていくんですね。この広がりはすごく嬉しいです。きっかけをつくってくれたのが、齊藤さんでしたよね。どんな思いからプロジェクトが始まったんですか?
齊藤:こういった制度においては、認定する側とされる側、支援する側とされる側、という立ち位置が固定されているのが一般的ですけど、そうなると「される側」は、いつまでも自分ごとにはならないと思うんです。
せっかく認定されて、「1000年」というかなり長い目線を共有できているんだから、持続的で自由なコミュニティをつくった方がおもしろいんじゃないかな。今の立ち位置をいったん取っ払って、皆でつくっていったらええんちゃうかな。そんなことを言い始めたら、賛同してくれる人たちが出てきて、京都市さんにも相談しながら自分たちで交流会をやってみました。

石井:おもしろいことに、同じくらいの時期に若手社員が集まる場も始まったんですよね。岸さんも参加されて、HOTEL SHE, KYOTO でも交流会をやったと聞きました。
岸:そうなんです。水星としても、ホテルの中にとどまらず、まち全体に新しい選択肢を増やすことに取り組んでいこうという流れがあって。ちょうど地域との関わりを増やしていきたいと思っていたタイミングだったんです。色々な分野で活躍されている同世代とのフラットなつながりができて、ありがたいですね。新しいアイディアの源にもなっています!
石井:詩人の最果タヒさんとの企画では、京都市交通局ともコラボレーションしてましたね!
岸:はい。SILKさんに交通局の方をご紹介いただいて、地下鉄の九条駅構内や、東九条エリアの銭湯や周辺店舗にも展示をさせてもらいました。
石井:経営者同士の会合はよくありますけど、若手同士で気軽に集まれる場って意外とないですよね。ソーシャルな取り組みに共感して入社している方が多いので、自然と話がはずみそうです。
齊藤:いいですね。若い人は特に、いきなり新しいコミュニティに入っていくのに抵抗がある人もいると思うので、僕たちが軽く背中を押した方がいい時もあるのかも。やっぱり、自分が知らない世界を知っている人と出会うと視野が広がるし、選択肢を増やす機会になるから。すっと入っていける人もいれば、時間がかかる人もいるだろうし、焦らず見守りたいですね。

未来のため、地域のため、という視点を持った企業が集まっている
石井:こんなこと言っていいのかわかんないですけど、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」って、他の認定と比べると、目に見えるメリットがあまりなくて。皆さんに聞くと、認定企業同士のネットワークができたことが一番ありがたいって言ってくださるんです。
齊藤:確かに、そこは感じます。京都市さんからいい感じのお墨付きをもらっている、というのも目に見えないけど大きいですよ!
あとは、市の職員さんも、SILKのメンバーも、そして認定企業同士も、不思議と距離感が近いんですよね。一緒に頑張りましょう、おもしろいことやりましょう、という雰囲気があるので、動きやすいなと思います。
橋本:昨年SILKのコーディネーターになるまでは外からこの制度を見ていたのですが、その時も今も、「これからの1000年を紡ぐ」という名前の通りの制度やなと感じています。未来のため、地域のため、という視点を持った企業が集まっている。
特徴的なのは、さっき齊藤さんもおっしゃってましたが、企業同士の温度感が合っているところですね。色々な企業連携の取り組みを見てきましたけど、ここまで自然にフィットするのは珍しいと思います。
齊藤:一般的な認定制度は認定されることがゴールだけど、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」は認定されてからがスタートという感じがします。業種も社風も違う企業同士が出会って、人が混ざり合って、新しいイノベーションを起こしていく。そこにワクワクする人たちが仲間になってくれたら嬉しいですね。

岸:認定企業のコミュニティで、採用活動を一緒にできたらいいなと思っています。京都って、就職先がないイメージがありませんか?スタートアップや起業家も、大企業も、東京にしかいないと思われがちで。認定企業数社で大学に説明会に行くとか、やってみたいですね。
橋本:めっちゃいいですね!
石井:知るきっかけがないんですよね。学生さんたちも認定企業と出会いたいと思うので、一企業でアプローチするよりも面でやっていけるといいですね。コミュニティの中でそういう話が出てくると、「うちもやりたい!」って人が現れて企画が動き出すと思います。
岸:それぞれ忙しい中で企業同士が連携して進めていくプロジェクトの場合、舵取りが難しい場面も出てくると思います。でも、京都をよくしたいという共通の思いが軸にあれば、多様な企業が関わっても、空中分解せず続けていけるのではないかと期待しています。
橋本:企業数が増えたことで、どうしても関わりの濃さに差が出てしまう点は気になっていて。色々な分野の取り組みが出てくると、今まであまり参加していただけなかった企業さんにも関心を持っていただけるかなと、楽しみにしています。SILKのやることがどんどんなくなっていくっていうのが理想的ですね。

「これからの1000年を紡ぐ」ってどういうことなんだろう
橋本:岸さんと齊藤さんは、「これからの1000年を紡ぐ」という言葉をどういう風に捉えていますか?ありがちな誤解として、「うちは1000年も続かないと思うから無理です」という反応があって。「1000年を紡ぐ」ってどういうことなんだろうってSILKのメンバーとも話し合ったことがあるんですけど、ぜひお二人の考えを聞いてみたいです!
岸:私たちの会社が認定された2020年は、スタートアップや若手起業家が流行り始めた時期でした。新しい事業をどんどん展開して早いサイクルで回していくのが良しとされる中で、「自分たちは長く続いて信頼されるビジネスをしていくんだ」って思っていたと、代表の龍崎から聞いています。その思いに「これからの1000年を紡ぐ」という概念がマッチしたんですね。
齊藤:1000年先って、自分はもう生きていないから、未来の世代にバトンタッチしていく感覚ですよね。1000年後に何があるかっていう話じゃなくて、1000年先をつくっていく営みの一部を自分たちが担っているという意識でいます。そうなるともう、自分だけでできることなんてなくて、やっぱりコミュニティの一員として皆でつくっていくことが大事なのかな。
橋本:100年ではなく1000年っていう、誰も想像できないところを見ているのが京都らしいですよね。全然わからない、遠い話やけど、でも今や明日がなければ1000年先はないわけで。そんな大きな問いを共有できる仲間がいることは、非常に心強いですね。
石井:京都に拠点がある企業はもちろんですけど、京都で何かチャレンジしたい、京都進出をきっかけに事業を全国に広げていきたい、という企業さんにもぜひ応募していただきたいです。では最後に、水星さんとアグティさんの最近の取り組みをぜひ教えてください!

既成概念や常識を、軽やかに超えていく
岸:私たちは京都・金沢・大阪でホテルを運営しているのですが、この夏にもう1拠点、休館していた北海道の「ホテル雲井」が再始動します。ここHOTEL SHE, KYOTOは、今ちょうど泊まれる演劇『雨と花束〜ゆらぎ、ただよう』の公演中なんです。
泊まれる演劇 とは HOTEL SHE, がプロデュースする世界初の宿泊型イマーシブシアター。 劇の舞台に滞在しながら鑑賞・体験する没入型の演劇作品です。 |
石井:内装がいつもと違うので、驚きました。ここまで演劇の世界を作り込むんですね。Wi-Fiのパスワードまで演劇仕様になっていて。HOTEL SHE, は、客室にレコードプレイヤーがあるところも素敵ですよね。
岸:レコードに針を落としてみるっていう体験を、楽しんでいただいてます。コロナ禍以降、アナログレコードの文化がまた盛り上がっていますけど、2017年にHOTEL SHE, OSAKA がオープンした時はレコードを見たこともない若者が多かったので、反響も大きかったです。

石井:「ホテル雲井」のオープンも楽しみです。アグティさんも、今年新しい拠点をオープンされましたね。
齊藤:はい、4月から京都市内に「梅小路ACWA」ができて、色んな人が来てくれています。これまでの雇用契約ではできなかったACWA BASEの自由な働き方を梅小路でやってみたら、学生やお母さん、高齢の方などなど、多世代が入り混じる場になってきました。
ACWA BASE とは 「いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。たくさん働いてもいいし、おしゃべりだけでもいい。」洗濯物をたたむ作業を中心に、地域社会と企業と人がつながる、地域循環ワークシェアリングを実践しています。 |
石井:SILKのオープンデーを梅小路ACWAで開催させてもらったり、Umekoji MArKEt や KBL THE GARAGE とのコラボ企画があったりと、さっそく関係性が広がっていますね。
アグティさんも水星さんも、ホテルという概念や雇用という常識を超えていくイノベーティブな会社だなと、お話を聞いていて改めて感じました。今日はありがとうございました。これからもよろしくお願いします!

2025年度の募集について
募集期間 | 2025年 7月 4日 (金) ~ 9月 26日 (金) |
応募要件など | 詳しくは京都市のページをご覧ください。 「これからの1000年を紡ぐ企業認定」対象事業者の募集開始について |
応募方法 | 下記オンライン申請フォームから必要事項を入力し、必要書類を添付のうえ申請してください。 申請フォーム |
制度説明会を開催します!
どちらかの日程にご参加ください。両日程参加できない場合は、担当者にご相談ください。
説明会のお申込:https://forms.gle/2qdckjBXLnemkGex9
◯日時:7月25日(金)18:30~20:00
場所:学び舎 傍楽(京都市中京区六角油小路町345-2)
参加企業:株式会社マザーハウス、有限会社シサム工房、株式会社水星
◯日時:8月26日(火)14:00~15:30
場所:京都市役所 本庁舎 地下1 階会議室(京都市中京区上本能寺前町488)
参加企業:株式会社アグティ、株式会社おいかぜ、山田繊維株式会社