商品の本質を追求する企業 ・株式会社イワタ / 京都寄り道推進室 × 1000とKYOと スペシャルインタビュー #5

京都の大学生が主体となって「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の企業を紹介していく「京都寄り道推進室」より、株式会社イワタさんへのインタビューをご紹介します!

はじめに

誰にとっても生きていく上で必要不可欠なものは何か。
それは、睡眠と食べることではないでしょうか。
また、食欲には睡眠の質が影響してくるように、食べること以上に睡眠の質は生きる源になっているのです。

授業に、部活動、アルバイトなど…。せわしなく過ぎる日々の中で、睡眠がおろそかになることもあります。しかし、睡眠が生きる上で非常に大切なものであることを教えてくれる会社があります。生活を支えるものだからこそ、商品の本質を大切にし、基礎を積み重ねるのが株式会社イワタ。京都の三条通りに店を構え、睡眠の質にこだわる寝具を販売する会社です。

先頭に立って睡眠を探究し続けてきたのは、代表取締役・岩田 有史さん。今回は、岩田さんにお話をうかがいます。

岩田さんは、幼少期に一時期京都で生活し、大学進学を機に京都に戻って来ました。

問いを持つことの大切さ

天保元年(1830年)に「岩田蒲団店」として創業した株式会社イワタ。約200年間、時代の変化に応じて布団に向き合ってきました。

岩田さんは、1983年に株式会社イワタに入社した数年後に、ある違和感に気づいたといいます。
毎年行われる寝具の新作発表会では、新しさだけを追求した生地や柄が「良いもの」として受け入れられていました。「寝具は、元々眠るための道具。それなのに、新作発表会では、誰も睡眠の質を高めるための努力をしていないことが不思議でたまらなかったんです」。

「寝具御誂専門店IWATA 京都本店」の2階では寝具をリラックスして実際に試すことができます。


そこで、岩田さんは「寝具」の勉強ではなく、「睡眠」の勉強をはじめたといいます。
勉強していくと、寝具は眠るための「空間」をつくる手段であることに気づきました。部屋の温度や湿度によって、寝具に囲まれる「空間」も変化してしまうといいます。そこで、環境に応じて寝具に工夫を施すことで、少しずつ睡眠の質を高めることができました。

「大事なのはどういう問いを持つのかということです。問いを持つことができれば、その方向性に向かって走り続けることができます。すると、自然と出会うべき人に出会うことができるのです。」
岩田さんは、「昔は勉強熱心な方ではなかったのですが」と笑いながら話します。

『できることをひとつずつ積み上げていくと、偶然の出会いで「良いもの」が生まれるのが京都の良さの1つかもしれない。』
たとえばユニークなヒット商品「人類進化ベッド」は、チンパンジーの睡眠を研究する大学教授との出会いから生まれました。

「人類進化ベッド」は京都大学総合博物館で開催された「ねむり展 ー眠れるものの文化誌」で披露されたことをきっかけに商品化されました。


「布団は中身が見えないからこそ、中身にこだわる。」
基本的なことを大事にしてきたことで、その思いに呼応するように、分野は違っても思いを持った人々が集まってきたのではないでしょうか。

自然と調和することを追求して

「京都の会社や人は、同じことを続けて伝統を守っているだけではなくて、革新の気質が基礎にあるのではないかと思うんですよね」と話す岩田さん。
「心地よい眠りとは何か」を追い求めて、時代の「一歩先」を行く高品質な寝具をつくり続けてきた株式会社イワタが体現しているように感じます。

株式会社イワタでは、商品へのこだわりを大切にしつつ、新たな取り組みを実践しているといいます。それは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を導入し、持続可能なものづくりを行うことです。「サーキュラーエコノミーというと、どうしても循環をさせることに注目してしまいます。もちろんそれも大事なことですけど、長く使うことが最も大事なことだと思うんです。できるだけ廃棄を少なくして、自然の範囲内で物作りが回っていくというシステムにしたいと思ってます」と、作り直しをして長く布団を使い続けていた昔の考え方を支持する岩田さん。


過去15年間、家庭から出てくる粗大ゴミで最も多いのは布団という現実があります。新しい布団を買っては捨てるという現実が生まれているのです。その状況を変えるために、再利用・再資源化しやすい素材を使って、人と自然にやさしい商品開発や設計を実現させたり、自然素材を使った商品開発から、長寿命設計、メンテナンス、リサイクル、アップサイクリング(廃棄物や端材などの創造的再利用)、国産木材・竹材の活用にいたるまで、新しい取り組みで「思い」を実現させていきます。

「布団は、元々天然素材を使っているので、我々の商品は自然と調和していかないと生まれないものなんです。だから、そこに向き合っていくことが大切だと思っています。イワタの布団を使えば使うほど環境が良くなっていくという循環が生まれることが理想だけど、それはまだまだ先かな」と、岩田さんは目を輝かせながら今後の展望を語ります。

きちんと眠ることが全ての原動力

最近、寝具にこだわる若い人たちが少しずつ増えている印象があるといいます。コロナ禍を通して、「ステイホーム」や「オンライン授業」などが推奨され、日々の生活に目を向ける機会が増えたからでしょうか。

岩田さんに若い人たちへのメッセージを聞くと、睡眠の質にこだわり、寝具の本質に向き合ってきたからこその一言が返ってきました。
ちゃんと寝てほしいなと思います。精神と体が健康であるためには、きちんと眠るということがベースになるんです。」

「若い人たちは持続可能な社会を目指して暮らしている印象がありますね。だから、私たちの取り組みに共感してくれる方が多いんだと思います。最近は、サブスクも始めました。」


その思いは商品開発にも現れています。
「そもそも睡眠は、生きていくための基礎にあるものです。無防備で半分意識がないような状態になるわけなので、とにかく安全で快適でないと」と、商品を通じて私たちの生活を支えてくれているように感じました。

日本の風土に合わせて選び抜かれた素材たち。「安心・安全」は、商品の奥の奥に潜んでいます。

おわりに

私たちの生活を支える睡眠。株式会社イワタの寝具は、「心地よい眠りとは何か」と問い続け、新たな取り組みを通して睡眠の質にこだわることで、私たちの思いや自然にとって大切なことを支えてくれているように感じます。

撮影・取材にご協力いただきありがとうございました。

店内の様子


○ 株式会社イワタ

春夏秋冬ごとにうつろう日本の気候や風土を見つめ、「心地よい眠りとは何か」を追い求めて、時代の「一歩先」を行く高品質な寝具をつくり続ける。

高級ベッド、羽毛布団、マットレスの株式会社イワタ【IWATA】


○ 1000とKYOと

1000年先に続く持続可能な社会をつくろうとする企業と若者たちとが新たに出会い、対話・交流し、協働しながら、これからの働きかた・生きかたをともに探索するプロジェクト。

ABOUT 「私たちが紡ぐ、これからの1000年。」について| 私たちが紡ぐ、これからの1000年。

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