自転車の可能性を追求し、地域活性・脱炭素・健康寿命の延伸を実現する「きゅうべえ」

シェアサイクルやサイクルツーリズムなど、自転車を使った地域活性に取り組む「これからの1000年を紡ぐ企業認定」第7回認定企業の株式会社きゅうべえ。自転車は今、健康寿命を延ばし、脱炭素社会への貢献にもつながるツールとして注目されています。その活用方法を広げるために、同業者・他業界の企業・自治体などと幅広く連携し、事業を展開しているきゅうべえさん。これまでの歩みや今後の事業展開について、代表取締役社長の谷口 創太さんにお話を伺いました。

自治体や企業と連携し、シェアサイクルを広げていく

── まちの自転車屋さんに留まらない柔軟な事業展開がきゅうべえさんの強みだと思うのですが、新しい事業はどのように生まれているのでしょうか。

きゅうべえは、昭和32(1957)年に自転車屋として創業しました。私は2011年に3代目の代表に就任したのですが、この十数年でお客さんのニーズや社会の変化に合わせて、事業モデルを大きく変えてきました。そのベースにあるのは、自分たちがこうしたいという思いよりも、社会が何を求めているのかという意識だと思います。早い時期からEC(インターネットでの販売)に力を入れていたのも、先に事業の構想があったわけではなく、お客さんのニーズを感じたことから始まっています。自転車のパーツは多品種に渡るので、店舗に買いに来られても取り寄せになる場合が多いんです。自分で修理やカスタマイズをされるお客さま向けのパーツ販売を中心に、ECの売上が増えていきました。

── 認定を取得されてからの約半年の間にも、京阪電気鉄道株式会社・大津市・京都信用金庫との連携や京都中央信用金庫との連携など、シェアサイクル関連の新しい発表を次々にされていますね。

シェアサイクルは、海外での広がりを受けて、京都でも今後ニーズが出てくるだろうと考えました。日本で最初にシェアサイクルを運営したのはNTTドコモさんなんですけど、京都には導入されなかったんです。なので、独自のソフトウェア・アプリ・ロックの開発に取り組み、2019年から「kotobike」のサービスを開始しました。交通手段としても、レジャー・スポーツのツールとしても、自転車には大きな可能性があります。自治体や民間企業との連携が広がり、イベントや自転車教室も各地で行っています。

大津市では、2022年に大津港サイクルステーション「O-PORT-able」の運営を始めました。2023年には京阪電気鉄道株式会社・京都信用金庫・大津市との連携がスタートしたので、シェアサイクルをさらに広げていければと思います。琵琶湖を一周する「ビワイチ」をはじめとしたサイクルツーリズムを盛り上げることで、地域活性化を目指します。

── シェアサイクルを始める際に、社内から自転車が売れなくなるのではないかという反対意見はなかったんですか?

全くなかったわけではありませんが、あまりその点は心配していませんでした。今まで自転車を所有したことがなかった人が、レンタルをきっかけに買ってくださることもありますし。借りるタイミングも所有するタイミングも、選ぶのはお客様なので、まずは自転車の利用機会を増やして、自転車のよさを感じていただくことの方が大事だと思います。

まだまだこれから需要が増えていく段階なので、同業他社さんとも、競合するのではなく一緒に盛り上げていきたいですね。1社だけでは繁忙期に必要な台数をまかなえないので、協力してやっていく必要があります。今のところ自転車専門店が運営するシェアサイクルサービスは国内でうちにしかないので、システムや事業運営のノウハウは、オープンに提供していきたいと思っています。

お声がけいただいたら、全国どこへでも出向きます!

── 今後はどのような事業展開をお考えですか?

2017(平成29)年に自転車活用推進法が施行されて、国が自転車をもっと活用していこうという方針を打ち出しています。その流れの中で、パイオニア的な会社として活動を広げていきたいですね。自転車で地域を良くしていくという事業領域には、まだまだ伸びしろがあります。コロナ禍が明けてインバウンドも増えてきたので、サイクルツーリズムにも非常に可能性を感じています。

実際に、他府県の自治体さんからもいくつか相談をいただいています。京都は不法駐輪にかなり厳しいですよね。道が狭くて観光客が多い中で景観と安全を保つために、自転車関連の制度やルール・マナー啓発が他府県よりも進んでいるようです。遠方だと運営に我々が関わることは難しいので、その地域の自転車屋さんにノウハウをお伝えして、運営をサポートするかたちになるかと思います。我々の経験が役に立つのであれば、惜しみなく提供させてもらいます。

自転車関連のサービスには設備もある程度必要なので、作ってしまうともう引き返せないじゃないですか。全国によりよいサービスが増えていくといいなと思っています。行政の方と一緒に視察の対応をすることが多いのですが、「もっとこうしたらよかった」という話も含め、本音をお伝えしています。自治体の方と話してどんな課題を感じておられるのかがわかると、そこから事業のヒントをもらえることもありますし、お声がけいただいたら全国どこへでも出向きますよ!

変化を受け入れて、新しいことにチャレンジしていく

── 従業員数も増えておられますよね。組織作りの面で意識されていることはありますか?

もっと大手の自転車店もある中で、なぜうちにお声がけいただけるのか不思議だったのですが、決断が早くスピーディーに動けるからだと言われたことがあります。我々も規模が大きくなってきたので、今後も機動力を保てるようやり方は考えていきたいですね。各事業のチームに権限を渡すこと、単年度の収益で判断しないことが大事ではないかと思います。

ここ数年で、販売・修理以外のスタッフが増えました。プロジェクトマネジメントを担うスタッフの他、デザインや動画制作を行うクリエイターも4名います。柔軟性がある人と働きたいですね。変化を受け入れて、新しいことにチャレンジできるかが大事です。新卒の定期採用やインターンシップの実施など、採用には引き続き力を入れていきます。これからは人事を会社のまんなかに置いておかないと、立ちゆかなくなる時代だと思いますので。

ホームセンターなど自転車専門店以外のお店でも自転車が売られるようになっているので、専門店としてメンテナンスや安全への啓蒙活動は率先してやっていかないといけません。まちの自転車屋さんとして創業した会社なので、小売業では専門店の価値をしっかり出しながら、新しい事業にもチャレンジしていきたいですね。京都はスタートアップが盛んなまちですが、親族間の事業承継で会社を発展させていくことは、スタートアップと同じくらい社会にとって大事だと思います。大変なこともありますが、その分メリットもあるので、事業承継のモデルケースにもなれたら嬉しいです。

── 今日はありがとうございました。今後の展開を楽しみにしています!

11月18日(土)には、京都向日町競輪場で地域の方々と「サイクリングフェスティバル」を開催しました。自転車は「脱炭素」と「健康寿命の延伸」に貢献するとずっと言い続けてきて、ようやく認知されるようになってきました。社会課題・地域課題に自転車が役立てることはまだまだあると思うので、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」をきっかけに、他業種の方との関わりも増やしていきたいです!

取材・文:木村 響子 / 阪本 純子 / 柴田 明(SILK)

■企業情報
株式会社きゅうべえ
〒605-0992 京都市東山区下堀詰町246 テイブンビル2F
電話:075-533-7718
URL|https://qbei.co.jp/


谷口 創太
株式会社きゅうべえ 代表取締役社長

1982年京都市左京区生まれ、京都大学経済学部卒業後、2012年当社代表取締役社長就任。 先代から事業承継をしたのち、伝統を守りながらも新規事業・業務改革を牽引する。 近年はシェアサイクルをはじめ、地方自治体と連携して、MaaS実証実験やサイクルツーリズムの推進等、自転車を活用した地域活性化事業に注力する