研究開発を基盤として、新たな価値の創造により、人々の健康で快適な生活に貢献する「ナールスコーポレーション」
株式会社ナールスコーポレーションさんは大学発ベンチャーとして、新たに研究開発されたエイジングケアの化粧品原料を製造し、スキンケア製品の製造販売へと事業を展開されています。
研究開発を基盤として、新たな価値の創造により、人々の健康で快適な生活に貢献
── 御社のご紹介をお願いいたします。
川崎さん:弊社は、京都大学・大阪市立大学の共同研究の成果である「ナールスゲン®」という化粧品原料を製造する、大学発ベンチャー企業です。エイジングケア効果の高いナールスゲンを使って、スキンケア製品の製造・販売も行っています。
── 会社の設立は2012年3月ですね。
川崎さん:はい、そうです。設立に至るまでの研究開発期間には、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)など多くの公的機関からの支援を受け、国民の税金に支えていただきました。そのため、設立当初から、研究成果を広く世の中の人々に還元したいという強い思いを持っています。大学での生命科学の研究開発を軸に、公的研究機関や他社とのコラボレーションにより、「健康で快適な生活に資するモノづくり」を追求するという姿勢は現在も変わりません。弊社の社名「ナールス(NAHLS:Nippon Amenity Health based on Life Science)」も、この理念に基づいたものです。
── 支援を受けた研究を自らの成果だけにとどめるのではなく、より多くの人に還元したい。その言葉から、ナールスコーポレーションさんの企業としてのあり方が強く伝わってきます。
化粧品だけでなく、口腔ケア分野、医薬部外品・医薬品開発へ
── ナールスゲン®とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
川崎さん:ナールスゲン®は、生命体を構成するアミノ酸の類似化合物です。衰えた皮膚にハリや潤いをもたらし、さらに皮膚のバリア機能を改善する作用があるため、様々な化粧品の原料として使われています。一般の方にナールスゲン®の機能性を実感していただくために、ほかの成分を極力抑えたシンプルな自社化粧品「ナールスミントプラス®」なども販売しています。
── ナールスゲン®について、もう少しくわしく教えてください。
川崎さん:ナールスゲン®は、皮膚(肌)用の化粧品として開発されましたが、研究の過程で口の中の粘膜に対しても同じ効用があることがわかってきました。その特徴を活かすために、京都府の「企業の森」推進事業などを活用し、株式会社ニッシンと共同で口腔保湿剤の開発、販売を行いました。この口腔保湿剤は、従来あるような口腔化粧品のように表面的に保湿するようなものではなく、粘膜の細胞そのものに働きかけるナールスゲン®の特徴を活かし、口内粘膜のバリア機能を向上させる効果があります。お肌と同じように保湿ケアをして口の中の状態を整えることで、咀嚼機能を保ち、さらに疾病予防や快適な生活の維持につながることが期待できる製品です。将来的には、医薬部外品や医薬品として商品を開発することも検討しており、複数の機関と連携して共同研究を進めています。
── ナールスゲン®の研究は現在進行形なのですね。認定審査会においても、さらなる可能性を求めて、新たな原料や製品の開発を目指されている点が評価されていました。
元気で長生き、高齢者も若者も生きがいを感じ続けられる社会を
── 今後、事業をどのように成長させていきたいとお考えですか。教えてください。
川崎さん:高齢化が急速に進んでいる現在、皮膚や口腔の健康を保つことが健康長寿に直結するとの認識も高まっています。同時に、高齢者がイキイキと働ける環境づくりも求められています。大学発ベンチャーである弊社は、設立時から大学関係者と60歳以上のメンバーが働く会社として経営してきました。シニア陣が長年培ってきた知識・経験を駆使し、若い世代と共に、情熱を持って取り組んできました。その成果が販売実績として現れつつあり、年齢を超えた活気が芽生えています。
広く社会に役立つ、新たな原料や製品の開発(モノづくり)には、幅広い知識と経験が重要であると、これまでの経験から実感しました。若年層、女性の活用も積極的に推進していきたいと考えており、今後も、大学などの研究機関や企業と連携し、持続可能な経営、イキイキとした社会の構築を目指します。
── 川崎さん及び創業者の松本さん(現会長)、お二人とも、世間一般ではシニアにあたる世代ですが、シニアが経営するベンチャー企業という点もナールスコーポレーションさんの特徴のひとつですね。お話を通じて、ナールスコーポレーションさんの「真摯な姿勢」がよくわかりました。その企業姿勢が大学などの研究機関や企業との連携につながっていると感じます。これからの企業展開に期待しています。ありがとうございました。
川崎 元士(かわさき もとじ)
1958年生まれ。東京大学大学院薬学系研究科修士課程卒業。(財)相模中央化学研究所で5年間研究員として、その後米国オレゴン州立大学で博士研究員として2年間勤務。帰国後1990年に大日本製薬株式会社(現・大日本住友製薬株式会社)に入社し、20年間にわたり探索研究部門での化学合成や、臨床開発部門での業務等に従事。2010年に天然薄荷メーカーである長岡実業株式会社に入社して技術部部長として勤務。2018年に定年を迎えたのを機に株式会社ナールスコーポレーションに入社。2019年7月に社長就任。ナールスコーポレーションは、2020年10月「地域未来牽引企業」、2020年11月「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定される。