乳がんを経験しても、自信を持って生きることのできる社会をつくりたい「アボワールインターナショナル」

アボワールインターナショナル株式会社は、乳がん患者のための、術後の下着を販売している会社です。手術をした後も前向きな気持ちで社会に出て活躍できるように、おしゃれな下着を提供したいという思いで起業されました。

「おしゃれなブラジャーがない」乳がん経験者だからこそできる製品開発

── まず、御社の企業紹介をお願いします。

中村さん:乳がん経験者専用の女性用下着の開発、販売をしています。術後の傷跡のケアなど機能面でのサポートはもちろんのこと、見た目にも華やかな下着を届けることで、女性の「おしゃれを楽しみたい」という気持ちも応援します。当社の商品は、乳がん患者と女性医師、看護師の方々とともに企画・開発しています。医療関係者が必要と考える機能と、患者が求めるデザイン面との両立を目指し、柄やレースなどの細かな面も検討を重ねて商品化しています。

── 術後の下着は、機能優先でデザインは後回しなのかと考えていましたが、アボワールさんの下着は機能とデザインを両立させたものなのですね。機能というところでは、特許を取得されたとお聞きしました。

中村さん:2020(令和2)1月、乳房再建手術後の専用下着として、着用時の乳房の左右差を調整できる機能の特許を取得しました。販売方法についても、必要な方に望まれる商品が届くように、全国の病院内のコンビニエンスストアで、術後すぐに使えるブラジャーの販売を開始しています。開発から販売まで、女性の医療関係者や実際に乳がんを経験された方の声を活かして事業を進めています。

乳がん経験者の方の声を聴き、コミュニティを強化する

── 販売だけにとどまらず、患者さん同士のコミュニティづくりにも取り組まれていますね。

中村さん:患者さん同士が励まし合い、乳がんを乗り越え、そしてさらに輝かしい人生を送っていける。アボワールの商品を通してそんな社会をつくっていきたいと思い、毎月第一日曜日には、患者さん向けに「乳がんサロン モンシュシュ」を開催しています。自分自身が乳がんを経験したからこそ、同じ立場で悩みや不安を共有し、前を向いて進んでいただくお手伝いをしたいと思っています。

── サロンは今まで何回程、開催されたのですか?

中村さん:これまでに約50回、毎月の開催を続けてきました。京都の方だけでなく、北は長野県から南は熊本県まで、たくさんの方々にご参加いただいております。全国各地での試着販売会などを通して、私たちとお客様のつながり、そしてお客様同士のつながりを育み、患者さんの気持ちに寄り添っていければと考えています。

── 商品の販売だけにとどまらず、患者さん同士のコミュニティの場を提供されているところに、アボワールさんの経営姿勢が表れていると感じました。

乳がん経験者の、生活の質(QOL)の向上に向けて

── 最後に御社の経営を通じ、実現したい未来を教えてください。

中村さん:医療が進み、女性が乳がんで命や乳房を失うことのない時代が訪れることが、私の何よりの願いです。乳がん患者数は、残念ながら増加の一途をたどっています。今は身近に感じていなくても、乳がんのリスクは全ての女性が等しく抱えています。家族や友人が乳がんを患うことも、いつでも起こり得ます。乳がんを経験した後も、仕事を続け、人生を歩み続ける女性がたくさんいます。

── 乳がんは女性のがんの中では最も多いがんとの報告があります(厚生労働省ウェブサイト.がん登録 全国がん登録 罹患数・率報告 平成29年報告より引用)。

中村さん:趣味嗜好が多様化する中で、乳がん経験者が使えるブラジャーの選択肢が少ないままでいいとは思えません。乳がんの治療には、約10年を要すると言われています。アボワールは、治療費の負担にならない価格でおしゃれな乳がんブラジャーを提供することで、女性の社会復帰の後押しをしていきます。

── アボワールさんの下着は術後の人生を伴走してくれる存在ですね。多くの患者さんに届きますように!ありがとうございました。

中村 真由美(なかむら まゆみ)

1984年から京都在住。2011年に乳がんが発覚し手術を経験。治療後の下着の選択肢の無さやお洒落とは程遠いデザインに絶望し、それなら自分で作ろうと起業を決意。2015年5月 29年間勤務した会社を退職。同年10月 オフィス開設。翌年2月 法人化し、アボワールインターナショナル(株)設立。同じ乳がん患者としての想いを伝えるべく、現在はweb販売の他、代理店・各病院で開催される相談会やイベントでの販売を展開。全国の病院にパンフレット設置を拡大。開業当初より毎月開催している乳がんサロンはすでに50回を超える。京都から日本各地の乳がん患者さんにお洒落で気分が明るくなる乳がんブラジャーを届けるために日々邁進中。