「思い」をそれぞれの現地で実現する企業 – “ MOTHER HOUSE ” / 京都寄り道推進室 × 1000とKYOと スペシャルインタビュー #1

京都の大学生が主体となって「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の企業を紹介していく「京都寄り道推進室」より、株式会社マザーハウスさんへのインタビューをご紹介します!

■ はじめに

『途上国から世界に通用するブランドをつくる』ことを理念に掲げ、「途上国」の可能性を「モノづくり」を通じて世界中のお客様に商品をお届けするマザーハウス。

京都にお住まいの方は、温かみを感じつつも気品がある三条寺町の店舗を思い浮かべるのではないでしょうか?

マザーハウスは京都に大丸京都店・三条寺町店・三条メンズ店の3店舗を展開しています。( 写真は三条メンズ店 )
店内にはカバンや財布などの革製品が多く並びます。
( 写真は京都三条店です。)

伝統工芸品などの手仕事の技術が昔から大切にされてきた京都で、途上国の技術と素材を生かした商品を販売するマザーハウス。現地の素材を生かすというところで、京都とマザーハウスには相通じるものがあるのではないかと思い、今回は店内に入ってみたくても学生には少し勇気のいるマザーハウスの店舗で働くお二人にお話を伺います。

東京都出身の齋藤 華さん(左)と、佐賀県出身の永田 健一朗さん(右)は、
マザーハウスに入社したことをきっかけに京都へ。

 

■ 経験の延長線上にあった会社に惹かれて

「大量生産が主流になった世の中で、マザーハウスはその場所でしかつくることができないものづくりを大切にしています。頭では正しいとわかっていても、色んな理由で実践できないことってありますよね。そういう行動の後押しができるんじゃないかと思い、入社しました」と永田さんは話します。

学生時代、永田さんはジェンダーに対する課題意識を持ち活動をしてきました。しかし、社会問題のような大きな問題は、自分が正しいと思うことが他者に伝わってもその人の行動までなかなか変えることができないもどかしさを感じていたといいます。

そのもどかしさを解消してくれたのは、マザーハウスで学んだお客様との接し方でした。

「お客様にとって楽しいお買い物の時間をつくりつつも、マザーハウスを訪れたことをきっかけにその人の生活の中に新しい世の中の見方を提示できることがやりがいになっています」と、その難しさも感じつつ笑顔でお話されていたことが印象的でした。

「難しいことを考えるのが好きなので、それも含めてやりがいになっている」と語る。

一方で、齋藤さんは幼少期からの発展途上国への旅行経験がマザーハウスに興味を持ったきっかけだったという。学生時代も発展途上国への関心を持ち卒論のためにネパールを訪れたそうです。

「それまでは助けてあげたいという思いが強かったのですが、現地の人たちの生きるたくましさを実感し、対等な関係で関わるべきだと思いました」と話し、それがマザーハウスで実現できるのではないかと思い入社を決めたそうです。

対等な関係とは、今自分ができる範囲でそれぞれがベストを尽くすことだといいます。

永田さんも惹かれたというマザーハウスの価値観”その場所でしかつくることができないものづくり”とは、自分が住む土地の魅力を掘り起こし、それを最大限に生かすことだと感じました。

発展途上国の職人さんたちから
「なんで売れてないんだ」と言われることも。
しかし、そのように対等に意見を交せることもやりがいに繋がっているといいます。

■ 「ものを大切にする」それが、マザーハウスと京都の共通点

”think globally act locally”

マザーハウスは、途上国で作られたものをお客様にお届けする場所は、ローカルであることを大切にしています。目指すのは、地域のために存在するお店づくり。

インタビュー時には、企画展のノベルティとしてお客様に「オリジナルくみひもチャーム」をプレゼントしていました。伝統工芸の担い手である「昇苑くみひも ( 京都・宇治市 )」とコラボレーションし、レザーの端材を組紐の技術で組み上げたものだといいます。さらに、三条メンズ店内のテーブルには北山杉が使われています。

「昇苑くみひも(宇治市)」は、1948年に帯締めを作る工房として創業。
職人の精緻な技術で、組紐の技術を様々な形で発展させてきました。

「京都の伝統文化とマザーハウスの素材や技術を生かしてまた何か新しいものを作れないか」と、 ” act locally” を模索中のマザーハウス。

京都とマザーハウスには多くの共通点があるといいます。

例えば、齋藤さんは京都の日本屈指の美意識と、マザーハウス代表・山口絵理子さんの美意識にシンパシーを感じると話します。また、永田さんはできるだけ物を余すことなく使う文化、始末の心に注目しています。素材の可能性に光をあてたモノづくりを大切にするマザーハウスにとって、その姿勢を形にする場所として京都がぴったりな理由の一つだといいます。
このような共通点を知ると、京都の手仕事が残存する理由もみえてきました。
素材を十分に生かす素朴な美意識が根付いており、その土地や人でしかできないものにこだわってきたからではないでしょうか。

もののバックグラウンドを大切にすることでものを大切にする。それは、京都とマザーハウスの共通点でもあり、前向きな姿勢で仕事をすることにつながるのではないかと感じました。

バッグ1つ1つのバックグランドが見えてくると、商品の見方と生活も変わってきます。

■ 我々が描いている未来を一緒に作っていく仲間への思い

「若い人もお客様も、マザーハウスが描いている未来を一緒に作っていく仲間という気持ちが強い」と、永田さんは期待を膨らませた表情で話します。
理念を大切にしながらも、固定概念に縛られずに歩んできた”マザーハウスらしい”思いかもしれません。

そのためには、若い人と対等に意見を交わす場やきっかけが必要だと感じている様子でした。
「新しい視点で我々が思いつきもしないことを一緒に議論したり、我々のビジネスを広げていくためにどういったことを楽しめるだろうかと一緒に考えたりすることを実践していきたいと思います」

”think globally act locally in Kyoto”が今後どのように展開されるのか、私たちもどのように仲間になっていくことができるのかと考えるとワクワクしてきます。

マザーハウスでは、革製品だけでなく、スカーフやジュエリー、バレンタインシーズンにはチョコレートなど、でさまざまな商品を取り揃えています。

■ 最後に

次にマザーハウスを訪れる時は、勇気を出して一歩を踏み出すというよりも、寄り道をするように”思い”に惹かれてお店に入ることができるのではないかと思います。

撮影・取材にご協力いただきありがとうございました。

※ 本インタビューは 2024年8月16日に実施致しました。そのため、掲載商品などは現在はお取り扱いのないものもございますので予めご了承ください。


○ MOTHER HOUSE

『途上国から世界に通用するブランドをつくる』ことを理念に掲げ、「途上国」の可能性を「モノづくり」を通じて世界中のお客様に革・布製品を中心とした商品をお届けするアパレルブランド。

マザーハウス|MOTHERHOUSE

○ 1000とKYOと

1000年先に続く持続可能な社会をつくろうとする企業と若者たちとが新たに出会い、対話・交流し、協働しながら、これからの働きかた・生きかたをともに探索するプロジェクト。

ABOUT 「私たちが紡ぐ、これからの1000年。」について| 私たちが紡ぐ、これからの1000年。

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