インタビュー企画「ピンチをチャンスに!」【第7回】霍野 廣由(つるの こうゆう)さん | TERA Energy株式会社
第7回は、TERA Energy株式会社 取締役 霍野 廣由(つるの こうゆう)さんです。僧侶として、仏教やお寺が世の中にもっと貢献できないかを常に考え、行動している霍野さん。若い僧侶が集まってお寺が果たす役割や価値を再定義する活動や、自死相談を行うNPOの役員など、幅広く活躍されています。2018年にはエネルギーの会社「TERA Energy」を興し、売り上げの一部を社会的な活動を行う団体や寺社が使える仕組みをつくりました。
新しい価値を創造し続けている霍野さんに、現在行っているチャレンジについて詳しくお話を聞きました。是非ご一読ください。
Q: どんな事業をされているか、簡単に教えてください。
霍野: 小売電気事業者、いわゆる新電力会社です。気候変動や自死などの社会的な問題について取り組んできた僧侶4人で、2018年に会社を立ち上げました。「毎月の電気代の一部を寄付してソーシャルグッドな活動を応援するんだ!」とか、「再生可能エネルギーにこだわるんだ!」など、想いと勢いで起業したものの、経営のことなんて一切分からず、周囲の人が「辞めるなら今やで!」と心配してくれることもありました(苦笑)。イノベーション・キュレーター塾の髙津塾長をはじめ、本当に多くの方々に助けていただいたおかげで、どうにか事業を続けることができています、今のところ(苦笑)。
Q: 新型コロナウイルス感染症による影響はありますか?
霍野: アポイントが相次いでキャンセルになり営業活動がストップしてしまったので、事業計画の修正は余儀なくされています。とはいえ、電気は生活や経済活動に必要なインフラ事業であるため、深刻な経済的ダメージを受けているわけではありません。
Q: 影響を受けて新たにチャレンジしたことと、その中で見えてきた課題や解決策を教えてください。
霍野: 学生の頃からよく通った飲食店や、友人が運営するホテルなど、僕の周りでも沢山の悲鳴が上がっています。そんな中「私たち電力事業は影響が少なくて良かったね」と他人事でいることの心地悪さや、もどかしさを感じていました。そこで、家庭や店舗等の固定費削減に少しでも役に立てればと願い、現在の利用者様へも、これからご加入いただく方へも、思い切って期間限定で電気料金を限界まで値下げすることにしました。
価格競争に挑むことは会社の持続性を弱めるし、僕たちの訴求ポイントではないと考えていました。しかし今回ばかりはシンプルに電気料金を下げるのが社会貢献だと信じて、電気料金値下げキャンペーンの実施を決断しました。
そんな想いでやる以上、中途半端に下げても意味がない。僕たちのできる限界まで値下げをしました。料金が安いといわれている新電力会社と比較したところ、他社よりも安い金額であることを確認できたため、自信を持って、ご紹介させていただいています。
だけど、新型コロナウイルスの影響で、直接お会いしての営業活動はことごとくキャンセルになりました。そこで、営業もオンラインベースに切り替えました。料金値下げのキャンペーンに合わせ、毎日オンライン説明会を実施しています。いまはYouTubeを使って告知するべく、事業や電力の仕組み等を説明する動画を急いで制作しています。今後はオンラインでのイベントも企画する予定です。
Q: ピンチをチャンスに変えるために心掛けていることは何ですか?
霍野: 周囲の悲鳴を聞くなかで、まず考えたのは「僕たちは何者であるのか」ということでした。僕たちは新電力会社としてお客さまに電力を供給していますし、僕の肩書きは会社の取締役です。が、それはあくまでも肩書きであって、僕は僧侶、お坊さんとして生きているつもりです。新型コロナウイルスを前に、お坊さんとして何ができるのか。理屈云々はさておき、「苦悩を抱える人の助けになりたい」と強く思いました。経営的なリスクがあっても、本当に役に立つことをしたい。それは経営に携わるものとして未熟な考えであることは重々承知ですが、僧侶としての想いをどこまでも事業に反映させていきたい。
とはいえ、経営が立ちいかなくなっては意味がありません。関係各位に打診し、諸々の調整をはかり、期間限定のキャンペーンと位置づけ、広報戦略の一貫として中期的に利益を生むためのターニングポイントとして捉えています。
尊敬する事業家である信頼資本財団の熊野 英介 理事長からいただいた「社会事業は、理想と現実の同時獲得をするからこそ、社会を動かせると思っています」というメッセージを励みに、引き続き、悪戦苦闘し続けます。
Q: 最後に一言!(これから行いたいチャレンジ、読者へのメッセージ等)
霍野: 「ピンチをチャンスに!」というインタビューを受けておきながら言うのもなんですが、今回の僕たちの取り組みがチャンスになっているのか、いまは全く検討がつきません。あのときやり過ぎたから、経営悪化につながったねって後々言ってるようにも思います(苦笑)。それでも後悔はしないだろうなと感じています。
今回の新型コロナウイルス感染拡大だけでなく、VUCAの時代といわれるこのご時勢にあって、何が正解なんて僕に分かるはずもありません。
そんなときこそ、社会の現状とその現実を目の当たりにした時に立ち上がる自分自身の声に耳を傾ける。強く意識しないと聞きそびれてしまうような、かすかな声をキャッチし、その声を頼りに、ただ自分が納得できる道を歩む。そんなことが大切なのかなと、僕は思ったりしています。
第1回 :【第1回】中田俊さん |株式会社夢びと