状況を俯瞰して捉え、言語化しにくい考えを伝え合う、レゴ®ワークショップ│働き方改革セミナーレポート[後編]

イベント後半は、こども国連環境会議推進協会 事務局長 / LEGO®SERIOUS PLAY®公認ファシリテーター 井澤 友郭さんによるレゴ®ブロックを活用したワークショップを行います。内容は、自分にとっての理想の組織を一人ひとりがレゴで表現するというもの。

最初は「ブロックでそんなこと表現できるのだろうか……」という緊張が伝わってきましたが、進めるにつれて「なんでピンク色なんですか?」「この人は何しているの?」と話が広がり、言葉だけのコミュニケーションより深いところまで会話ができたように思います。

(以下、敬称略)

[前編]はこちら

井澤: 今日は、組織の中の壁を打ち破ろうというテーマで集まっていただいているので、皆さん一人ひとりが見ている壁を整理して、どうやったら乗り越えていけるのか、どうやったら変えていけるのか、愚痴を吐いて終わりではなく、その一歩を踏み出せる場にしたいと思っています。このあとディスカッションもするのですが、今日はみなさん4つ権利をお持ちです。

1. 考えるだけじゃなくて感じたままを語ることができます。
あるべき論とか知識ではなく、感じたままを語ってください。

2. どんな意見も尊重されます。
感じたことを語るので、誰もあなたの言ったことを否定できません。他人からどう思われるかとか、正しいかどうかとかは一切気にしないでください。

3. 失敗できます。
今日は他人から評価されるようなワークショップではありません 。普段言わないようなことを言ってみるとか、チャレンジをする場にしてください。

4. 秘密は守られます。
結構デリケートなテーマなので、このあとお互いに話した内容は他言無用です。この場だけで留めてください。

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井澤: 最初に少し注意点をお話ししますね。今日は、無理に分かり合わなくて構いません。ワークショップでよく「分かるー!」って言って分かり合えた気になって、そのまま終わっちゃうことがあるんですけど、それはやめましょう。相手の話を聞く中でちょっと違和感を感じることがあるはずなので、ぜひそれを口に出していただきたいです。そして、発表はしないので、皆の意見を無理にまとめなくて結構です。自分と相手の違いを感じることを頑張ってみてください。

同じ物事でも、どう解釈するかは一人ひとりの自由です

テーブルの真ん中に置かれたレゴのバッグを開け、まずはブロックを使ってテーブルのメンバーに自己紹介をします。今の自分を表す3つのパーツを選び、なぜそのパーツを選んだのか、なぜその色なのかを語ります。

1つ目、今の気分。
2つ目、期待していること。
3つ目、私の仕事。

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井澤: テーブルの中に同じパーツを選んだ方が結構いましたが、説明はそれぞれ違いましたよね。この自己紹介では、“事実と解釈は違う”ということを皆さんに体験していただきました。皆さん、その違いにイラッとしなかったと思うんです。解釈は一人ひとり自由なんだから、当たり前ですよね。でもなぜか社内の会議とかだと、人の解釈を否定する人がいます。今日この場は、そのブロックが他人からどう見えているかは関係ありません。否定する人は現れませんよってことを今確認いたしました。

「自分が見えている景色は、自分にしか見えていない」

ここからは、自分にとっての理想の組織をブロックで作っていきます。たくさんのパーツを組み合わせ、様々な組織像ができあがりました。

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井澤: 私はずっと模造紙とかふせんを使ったワークショップをやってきたんですけど、色々難しさを感じている中でレゴと出会いました。最近は言語化する前にレゴを使っています。文字で書かせると、意見の違いから個人攻撃を始める方もたまにいるんですよね。ブロックだと、意見の内容と意見を出した人間(人格)を切り離しやすいだけじゃなく、俯瞰した状態を作ることができるようになります。

別に今のお題も、ふせんを配って理想の組織の要素をたくさん書き出すことはできると思います。でもそうすると、例えば「壁がない」というキーワードが何人かから出てきた時に、その何枚かがグルーピングされますよね。わざわざ、その「壁」という言葉に対して「あなたが書いた壁ってどういう意味?」って聞かないと思います。一人ひとりの「壁」の解釈の違いがあっても、誰も聞かないから違いに気づかないまま進んでいくんです。同じ単語が出てきた瞬間に、分かり合えたという勘違いが始まる。そうならないように、レゴを使って質問をすることのハードルを下げています。

ブロックで作ると、真っ黒で向こうが見えない高い壁を作る人もいれば、穴だらけで向こうに人が見えているのに行かない壁を作る人もいるかもしれない。ふせんを使ったワークショップだと、部長が書いた「壁」に対して「どういうことですか?」って聞きづらいですよね。でもおもしろいことにブロックだと、「なんで部長ここ柵にしたんですか?」って聞けるんですよ。すると、部長が見ている景色がちゃんと部下に伝わっていく。

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井澤: 私たち実は全然分かり合えてませんよというところから、ワークショップを設計するように変えました。ちゃんと質問をしましょう。他人に興味を持ちましょう。こう捉えたんだけど、合ってますか?という確認することの大切さを感じてほしいです。

「自分が見えている景色は、自分にしか見えていない」という哲学の言葉があります。自分のとっての壁は、自分にとっては日常なので改めて言語化するのは実は難しいんです。でもレゴでお互いに作ってみると、私が思っている壁とあの人の壁は違うということに気づくんですね。自分の意見なんて皆と一緒だろとか、自分の発言には価値がないと思っちゃって、意見を言わない人が多いんです。そうじゃなくて、あなたが見ている景色はあなたにしか見えていないんだから価値がある、ということを分かっていただくためにレゴを使っています。レゴがすごいわけじゃなくて、質問をすることが大事なんです。

言語化できない、本当に思っていることを伝える

次のステップは、テーブル内で全員の作品を模造紙の上に並べて、関係性によって配置を考えます。配置が決まったら、模造紙に作品の説明を書いていく。その上に、理想の組織の実現を邪魔しているものをポストイットに書いてどんどんはっていきます。最後に、実現に向けて自分は何を提供できるか、象徴するブロックを1個選んでテーブル内で共有します。

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井澤: 思った以上に自分の言いたいことって書けないんだな、言葉じゃ伝わってないんだなってことを体験していただけたんじゃないでしょうか。今後の展開として、ぜひこれを社内でやっていただきたいんです。社内研修って難しいんです。だからこそ、こういう本人が言語化できないことを語らせるワークを取り入れることで、はじめて他人に興味を持つんですよ。あいつ普段何も言わないけど、こんなこと考えてたんだっていうのが、意外に作品に出るんです。2社、3社合同でやると、それぞれの会社の文化の差が如実に出るので更におもしろいと思います。文字で書かせるとありきたりのことしか書かないんですよね。作品には、本当にその人がどう思っているのかが出てきます。


言葉で伝えることを生業にしている私にとっては、レゴを介することで生まれるコミュニケーションがとても新鮮でした。言葉には表れにくい考えを共有できたり、全体の状況を捉えやすくなったり、お互いに質問がしやすくなったりと、いいことがたくさん。ものごとを俯瞰して考えるためにこんなやり方もあるのかと、大変勉強になりました。

総務・人事がクリエィティブな仕事だと思っている方はまだまだ少ないかもしれませんが、総務・人事こそが会社を変える鍵を握っています。理想の組織を作るために自分に何ができるのか、この日レゴブロックと共に掴んだ感触を社内に持ち帰って、ぜひ実践していただければと思います。

青山さん、井澤さん、今回のイベントを主催してくださったKRPの皆さん、ありがとうございました!

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主催:京都リサーチパーク株式会社 共催:公益財団法人京都高度技術研究所
会場:公益財団法人京都高度技術研究所 10階 プレゼンテーションルーム

写真・文:柴田明(SILK)


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