これからの1000年を紡ぐ企業認定

[社会・地域貢献部門]

2023年度認定

株式会社千昇堂

代表:長谷川 千佐子

株式会社千昇堂

京都の着物文化と製作技術を、今の生活スタイルの中で活かす

日に焼けて廃棄されてしまう着物生地や、行き場がなくなった着物生地を生産者から直接購入し、ボディケア・フェイスケア商品の素材として新たな市場を開拓。近畿大学とのコラボレーションなど、外部とも連携して着物文化の新しい可能性を模索しています。

次世代を担う人たちへのメッセージ

アイデアをカタチに!

 千昇堂は、若い世代の発想の豊かさを知っています。

 2021年~2022年、千昇堂(当時は「いと半」)は近畿大学との産学連携の共同研究に取り組みました。代表者の長谷川は1年半の間、経営学部のゼミに参加し、学生たちと共にマーケティングを学びつつ、商品開発を共に進めました。授業の中で、まずはメイン商品である「SHIROTSUKI 洗顔パフ」の詳細をプレゼンテーションし、理解を得たうえで学生たちによるアンケートを学内外に配布・分析し、新製品について提示したコンセプトに沿って学生たちがアイデアを膨らませ、生地や技術の実地見学をゼミで行い、試行錯誤を繰り返し、共同研究製品
である「シル近ピロー」の完成に至りました。
 SHIROTSUKIのベースである「優しさ」「穏やかさ」「上品さ」を大切に捉え、その上に積み重ねられた学生たちの発想は、とても豊かなものでした。コロナ禍のリモートワーク疲れの世相からの回復を目指したこと・白を基準にしていたSHIROTSUKIに、日本の伝統色を取り入れ、カラフルなバリエーションを創り出したこと・色に意味を与える事で、製品への愛着を深める為の手法を取り入れたこと・SDGsへの考えを製品に反映させたこと・若者世代にパケ買いを促すようなパッケージやロゴ、そしてネーミングの作成に注力をしたこと。結果は、「素材
」と「香り」と「色」に拘り抜いた「“シルク”素材の着物生地の特性を活かし、“近”大とのコラボレーションで創られたアイ“ピロー”」、つまり「シル近ピロー」が産み出され、完成発表イベントを行い、メディアでも取り上げて頂きました。その後も「シル近ピロー」は、千昇堂いと半事業部の主要アイテムとしてラインナップされ、その発想は柄の着物生地と生成り生地を組み合わせた「SHIROTSUKI香り袋」へと広がっています。 

 学生たちとの時間を過ごした千昇堂だからこそ、若い世代の発想の豊かさを知っています。若い世代の発想とコラボレートする機会を再び得た時には、千昇堂はアイデアをカタチにしたいと考えています。

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  • 経営理念

    着物素材を活用し、人々が豊かな気持ちを愉しめる社会へ

    着物素材が活き活きと輝く製品を創り出すことで、人々が豊かな気持ちを愉しめる社会をプロデュースする。

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  • 社会課題の解決

    産地に出向き、職人と接することで、果たすべき新たな課題を見出す

    京都が長年の間に培ってきた伝統的な文化が、ライフスタイルや経済状況の急激な変化により衰退の傾向にあり、近い将来には無くなってしまう技術があることに危機感を感じています。技術が次代へと継承されていくためには、高度な伝統技術をもつ職人の仕事がビジネスとして成立する事が重要と捉えています。しかしながら、現在の状況を鑑みた場合、職人が十分な収入を得られなくなっている事が顕著であり、この事が後継者の不在や廃業の要因となり、結果、次代への技術の継承が止まってしまうという傾向を生み出しています。弊社は、一世紀近くに亘って着物業を営んできた歴史を踏まえ、「着物の技術」を視点として、着物生地を活かした製品開発のビジネス展開により、京都が誇る着物文化が再び時代の先端となる事を目指した取り組みを行っています。

    ── どのような取組をしていますか?

    弊社が展開する"SHROTSUKI"ブランドの製品は、京都の素材によって構成する事に拘りを持ち、企画開発をしています。京都産でありながら日に焼けて価値を落とした「生成り生地」の柔らかな色あいの穏やかさや緻密な織柄の楽しみを引出し、「西陣織ビロード」が持つ特性をスキンケア製品としてを活かした結果が""SHIROTSUKI"と成っています。また、京都製の組紐や西陣織生地を組み入れた製品を開発するなど、着物に関わる職人の技術を結集させる取り組みを続けています。着物の素材が「日常に使うモノ」の素材という異なる領域を拡げる事により、着物の素材は新たな商品価値を持ち出し、職人の仕事への意欲や継承への欲求が高まるという好循環を生み出すことが弊社のビジネスモデルと位置付けています。

    ── どのような成果が生まれていますか?

    販路を拡大する事で、より多くの製品の製造の為に、必然的に、丁寧に製作されながら行き場がなかった着物生地を弊社が仕入れる事は、職人の経済的支えとなります。また産地に出向き、職人と接することで、製造者がもつ問題等を知り、弊社が果たすべき新たな課題を見出すことができます。この2点に真摯に取り組んできた経緯が、弊社の社是でもある「目には見えない思いやりや優しさ、そして相手を労わる気持ちを大切にする心を伝えることのできる 京都ならではの商品を開発し、そして伝統文化を守る職人など多くの人と技や感性との出会いを絆にかえる企業」としての成果と捉えています。また、産学連携で一年半をかけての商品開発に取り組んだ結果、学生の髙い感性を表現できたことは、着物文化の将来的な可能性を見出せる成果となっています。

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  • 従業員・顧客・取引先への配慮

    廃棄される生地を、新たな市場で活かす

    弊社の「いと半」事業は、着物生地を「着るもの」としてではなく、愛着を持って日常に「使われるもの」となるオリジナル製品の企画開発を行っています。日に焼けた着物生地である「生成り生地」が廃棄される運命にある事を“もったいない”と捉え、絹の天然素材と着物の伝統技術で織られた”大切なもの”として活かす事が弊社の原点となります。日焼けで商品価値が衰えた着物生地や着物産業の斜陽化により行き場がなくなった着物生地を、新たな市場での製品の素材として、取引先である各生地の生産者から直接購入する事により生産者の収入となると同時に、ユーザーからの製品への好反応や高評価を生産者との対話の中で伝えていく事により生産意欲を取り戻す契機となるよう配慮をしており、結果として、着物文化を作る技術の継続や継承に繋がる取り組みを続ける事が弊社の第一義的責任としています。また、長期的視野で鑑みると、廃棄となりうる物を削減する活動は地球環境に貢献していると考えています。

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  • 地域社会への配慮

    着物生地で作られた洗顔パフやボディタオルのブランドを展開

    弊社が「SHIROTSUKI」ブランドで展開するラインナップの中心は、100%着物生地で作られた洗顔パフやボディタオル等のボディケア・フェイスケア商品となります。京都産の「生成り生地」に加えて、繊細で緻密な技術を要する着物生地である「輪奈ビロード」を組み合わせる事で、着物生地の可能性と伝統技術の新たな活路を模索した結果として生まれた製品です。また、2021年~2022年には、近畿大学とのコラボレーションにより、京都で織られた着物生地と京都産の天然素材を組み合わせたアイピロー「シル近ピロー」を共同開発するなど、京都の着物文化を活かしたブランドとして成長させることに取り組んでいます。

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  • 環境(未来の社会)への配慮

    京都の着物文化と製作技術を、今の生活スタイルの中で活かす

    「世界に誇る京都の着物文化と製作技術を、今の生活スタイルの中で活かすことが、着物文化の再興となり、次の世代への技術の継承に繋がる」という信念のもと、企業活動を行っています。「着物生地を日常に使う」をコンセプトとした製品を市場に提供する弊社のビジネスは、熟練の技で織られる着物生地の需要を蘇らせる事により、次代へ繋げるべき価値ある着物生地の製作技術の継承に寄与する事を目的としています。また、製品の広報と併せて、着物生地の味わいや美しさ、歴史や技術を紹介することで、若年層の着物への興味を喚起し、弊社の「着物生地を日常に使う製品」が「着物を着る生活の楽しさ」へとフィードバックする流れを作る事に因り、着物文化全体の再興へと貢献できることを理想としています。

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