
2024年度認定
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経営理念
私たちは染色の持つ魅力を発信し、人と社会に楽しさと豊かさを提供し、未来に新しい市場価値を創造します。
関谷染色の経営理念
私たちは染色の持つ魅力を発信し、人と社会に楽しさと豊かさを提供し、未来に新しい市場価値を創造します。
「着物は世界一の民俗衣装」と自負し、染色技法の向上や美しさの追求にはゴールがないと思っています。常にその姿勢を忘れずに、着物をお召しになる方に関谷染色の着物を着て良かったと思っていただけるよう、ものづくりにこだわります。
着物市場は年々生産数の減少が続き、京友禅総生産量はピーク時の昭和46年度の16,524,684 反から令和5年度は245,081反と、約98.5%減少しており極めて厳しい状況に直面しています。そしてこの厳しい背景のもと、後継者不足、それに伴う職人の高齢化、生産量減少による分業工程の崩壊など、着物業界には様々な問題が山積しております。『このままでは着物の製造は維持できなくなる。伝統文化である京友禅を未来へ継承するために何か良い方法はないか?着物の技術を生かした新商品開発はできないか?』という課題認識のもと、京友禅の技術を使った新商品を開発することを誰よりも真剣に考え、それに賛同した株式会社日根野勝治郎商店、株式会社関谷染色、安藤染工、株式会社美和の京友禅の染屋4社で「京友禅を世界に向けて発信する」ことを目的とした京友禅ブランド「SOO(ソマル)」を2016年に構成しました。
SOOの経営理念
京友禅と同じ着物本来の製法にこだわること(品質)
着物と同じ正絹を使うこと(素材)
使っていて気持ちよく、お気に入りのアイテムになること(愛着)
SOOは時代にマッチした独創的で魅力あるデザインの上質なライフスタイルアイテムをお届けします。 -
経営理念に基づいて、具体的に取り組んでいること
着物の染色技法を今までなかった製品に転用し、新たな価値ある製品を生み出す
経営理念にある染色の魅力発信については、後述の「環境(未来の社会)に対しての配慮」をご参照ください。主に大学からのご依頼で定期的に講義を通じて京友禅や染色の魅力発信に努めております。
新しい市場価値の創造については、大きく2点あります。
まず一点目は、着物の染色技法を今までなかった製品に転用し新たな価値ある製品を生み出していることです。具体的には、店舗用の暖簾や宿泊施設の客室の装飾品(主に額装など)、インバウンドの顧客をターゲットとした扇子や団扇などの小物製作などがあげられます。
おそらく昔はそれぞれの分野に専門で製作していた業者があったと思いますが、廃業などでその専門業者が少なくなり、当社がその分野をカバー出来るよう取り組んでおります。
扇子や団扇などは京都でも老舗のお店と連携し、生地は当社で染色、組み立てはお店にお任せすることで、顧客にとっては京都の伝統産業のコラボレーション製品として新たな価値を提供できるよう工夫しております。
二点目は、着物と同じ民族衣装であるインドの「サリー」に着目し、「京友禅サリー」の製作プロジェクトに参画しております。このプロジェクトはその規模の大きさから自社だけでは運営が難しいですが、当社が加盟しております京都工芸染匠協同組合内で企画・立案・商品製作などを進めております。組合では「京友禅サリー」プロジェクトの担当副理事長を拝命しております。
製作面ではなかなか難しいこともありました。まず、着物の生地幅の約3倍ある広幅の生地をどのように染色するかが一番の課題でした。各工程の職人さんとの協議の中、その方法を模索しましたが一筋縄ではいかないことが多くありました。道具や材料などを一から開発し、普段の着物の工程を変えることなく製作することに成功しました。組合所属の各事業所に製作方法を公開・共有し、各事業所の特色のある「京友禅サリー」が新たに生み出されました。
SOOとしての取組みの大きな目標は、伝統産業としての京友禅を未来へ継承することです。
そのために、京都ならではのギフト、お土産、アイテムとして京友禅の製品を認知してもらい、京都を訪れる日本人・外国人観光客のお土産として、京都の方に京都らしい手土産として、京友禅技法を活用し手に取ってもらいやすい京都らしいアイテムを新たに開発し、販路拡大、認知度向上に向けた取組みを同業4社で実施しています。
SOOの4社は、それぞれ普段は京友禅で着物用生地の染色に従事しておりますが、自社だけでは実現不可能なことを各社それぞれの強みを生かし、4社で役割分担して事業を推進しています。本物の京友禅を着物に馴染みのない方々にも、身近な日常生活に溶け込むアイテムを届けるため「SOO(ソマル)」ブランドを立ち上げ、商品開発・販売・宣伝広報活動を行っております。
私たちが普段染色している京友禅の技術と絹の特性を最大限に活かし、かつ現代生活にマッチした上質なライフスタイルアイテムとして試行錯誤の末、私たちが生み出したものが、「京友禅手染め絹の眼鏡拭き”おふき”」です。
絹素材の中でも用途に適したきめの細かい着物生地を使用した眼鏡拭き。“おふき”と名付けられたこの眼鏡拭きは、着物用の38cm幅の絹の生地に着物の柄を一度染色した後、その上からさらに17cm四方の眼鏡拭きに適したサイズにデザインした眼鏡拭き用の柄を染色しています。すべての染色加工工程は、いつもは着物の染色をしている私たち4社の京都の染工場にて行っており、4社それぞれの特色を生かすために、個々に異なるデザインで染めています。パッケージにもこだわり、着物を保管しておく際に湿気より着物を守る為に入れておく“たとう紙”を“おふき”用に作りました。”おふき”の特徴は、きものと全く同じ素材を同じ染色工程で加工することで、本物の京友禅製品としてのクオリティを維持しています。高レベルのクオリティを求められる着物用生地の染色で培われた意匠・技術力、絹に染色された図柄の構図や発色、繊細さが特徴の一つです。長年の着物染色によって培われてきた私たちの伝統・感性・色彩感覚・技術を最大限に反映した商品です。また素材には、着物用正絹生地の中でも特にきめが細かくしなやかで眼鏡を拭くのに適した素材のみを選んで使用しております。正絹生地は天然繊維の為静電気が起きにくく、ほこりや塵を寄せ付けにくいため眼鏡拭きとしての機能性も兼ね備えています。
同じ柄や配色のものはなく、お客様にとって“一期一会”になるように工夫されています。また「京都でしか買えない」、「ネットでも買えない」という希少性を持たせ、京都の取扱店舗の店頭でのみ手に入れる事ができる京都ならではの購買体験を提供しています。
商品コンセプトは同様にスマートフォン拭きの”おふきmini”、タブレットPC拭きの”okkiiおふき”とラインナップを拡充した”おふき”シリーズは、グッドデザイン賞2017受賞をはじめ、京都デザイン賞2018・2022受賞、おみやげグランプリ2019クールジャパン賞受賞、第59・60回全国推奨観光土産物審査会推奨品、2019年度全国伝統的工芸品公募展入選、OMOTENASHI SELECTION2019・2020受賞など高い評価を頂いております。
SOOの活動も第11回文化・ベンチャーコンペティション京都経済界賞・京都産業21賞受賞、第9回知恵ビジネスプランコンテスト認定などの評価を頂いております。 -
今後のビジョンや展望など
「モノづくり」と「コトづくり」の共存を実現し、自らと社員がワクワクし、お客様もワクワクさせる
今までは自社で製作した着物が複雑な流通経路を経て、最終的に誰が購入され、いつお召しになられたのかわからない状態でした。様々な角度から考えているうちに、やはり自分が製作した商品がどのような想いを持つ顧客の手に届き、どんなシーンで着る想定で購入されたのか?知りたいと思いました。
クリアすべき課題は多いですが、できれば顧客の想いを「ものづくり」の段階から実現できる商品を製作したいと思い実践しております。分業制の中で何か1つの工程でも関わってもらえれば喜んでもらえるのでは?と考えるようになりました。
現在、製作過程が相互に楽しくなる仕組みを構築中で、「モノづくり」と「コトづくり」の共存を実現し、自らと社員がワクワクし、お客様もワクワクさせます。具体的には「モノづくり」と「コトづくり」の共存を実現させるために、新たに工房(ラボ)の設立を目指し、自社のブランディングの確立と地域のコミュニティとしての役割を果たす「空間」にしていきます。工房に併設したショップの開業も合わせて計画し、お客様の声をダイレクトに聞ける「空間」にもしていきたいです。
中期的には、委託染色加工(待ち)中心から自社商品販売(攻め)への事業展開
・自社の特徴を押し出した商品(ブランディング)の確立
・販売ルートはあるが、販売員がいないのでその確保
長期的には、顧客参加の体験併用型市場への参入
・新規市場なので、仕組みづくりからスタート必要
・職人さんと顧客を繋ぎ、ものづくりの楽しさを共有する仕組みづくり
SOOの今後のビジョンや展望については下記の通りです。
私たちは小幅(約38cm幅)の正絹の生地を染色することにおいては、京友禅が世界で一番すぐれていると自負しております。多様性を持って少ロットから大ロットまで染色する技術とインフラを持つ都市は京都の他にはなく、京友禅は世界に誇るべき伝統産業だと信じています。この京都に長年にわたり根をはり、意匠力・技術力・対応力・生産能力を駆使して京友禅の一翼を担ってきた私達は、小幅の正絹生地のファブリックブランドとしてSOOが世界中で認知され、「SOOの生地を使う」ことが表現手段の一つとしてアパレル・インテリアブランドに求められることを最終目的としています。
小幅の正絹生地は着物用途のみの素材ではありません。小幅の生地の着物以外の用途への汎用性についてネガティブなイメージを払拭するために、SOOの生地の価値を伝え正当な評価を受けることが、着物以外の様々な分野における京友禅の可能性を広げていくことに繋がると確信しています。
小幅の絹の生地には、日本人が長い年月積み上げてきた伝統・文化・感性・知恵・技術が詰め込まれています。多くの文化活動と密接に関連し、単純に着飾るという行為を超えた衣である着物は世界に誇るべき文化の一つです。この誇るべきバックボーンを着物というフィルターを一旦外し「生地」という素材として評価されることが、最終的には着物文化の再評価・着物人口の増加につながります。
2017年7月に販売を開始した絹の眼鏡拭き「おふき」ですが、現在は京都市内に約280の取扱店舗があります。百貨店、専門店、書店、宿泊施設、土産物店、寺社仏閣や日本郵便株式会社様やセブン-イレブン・ジャパン様など日本を代表する企業とも取引を行い、商品の販売のみならず事業を通じて様々な社会貢献に取り組んでまいりました。また、スタジオジブリなど非常に知名度が高い企業様とコラボレーションし、オリジナル商品の製作を行っております。
これまでの呉服関連企業との取引から、これまで関わることが無かった多種多様な新たな分野とのかかわりを更に一層広め、SOO、おふき、京友禅のさらなる認知度向上とブランディングを強化するための活動を積極的に進めたいと思っています。
これら”おふき”シリーズを核とした活動に加え、今後京友禅の生地をSOOブランドの生地として発信する活動も行っていきます。京友禅の伝統技法で染色したSOOの生地が、着物以外のアパレルやインテリア等の分野で素材として注目を浴び評価されることで、京都の伝統産業が注目され産地として新たなビジネスチャンスが生まれることを期待しています。分業体制で生産されている京友禅は一社や特定の工程だけでは継続することが出来ません。産地として新たな分野を開拓することで、職人や製造業者が利益を得て地域経済が活性化することは、一産業にとどまらず京都の魅力の増大にも繋がると考えています。 -
取り組みにより、どのような社会的インパクトを起こしてきましたか
三条大橋オリジナル柄のおふきminiを制作し、セブンイレブンで販売
「京友禅サリー」プロジェクトは、その革新性と話題性からテレビや新聞で大きく報道され、あるテレビ局では反響の大きさから国際ニュースとして取り上げていただくことにもなりました。
着物と同じく、サリーも着姿が非常に重要で着装時にどこに柄が出るなど、一から考慮すべきポイントも多くあります。今後も改良を重ね、より良い製品になるようしていきます。
現在では行政機関の多大なるご協力もあり、外務省やインド大使館・領事館などとも連携し事業として成立するまで成長しました。インド国内や東京での展示会を通じて、直接顧客の反応や意見など情報を獲得できるようしております。その情報をもとに製品を進化させ、少しでも多くの方に「京友禅サリー」を身に着けていただくことが今後の目標です。
SOOの具体的なケースとして、二点あげさせていただきます。
まず一点目は、京都市、セブン‐イレブン・ジャパン、SOOの三者で取り組んだ「三条大橋プロジェクト」。
老朽化した木製高欄が更新の必要な時期になっていた三条大橋。高欄更新に必要な良質木材の調達が困難で、数億円かかる費用の捻出のために京都市が寄付を募ったり、ふるさと納税の使用用途の項目に入れたりしていることを知ったのは2019年の春。今更新しないと木造での更新は不可能という事を聞き、京都市民でもあるSOOのメンバーも三条大橋の為に何かできることは無いかとプロジェクトをスタートしました。
一人でも多くの方に現状を知ってもらおうと、三者で重点的に告知活動を行いました。三条大橋オリジナル柄のおふきminiをSOOが制作し、セブン‐イレブン市内全店店舗にて専用什器での販売を通じポスターの掲示等を行っていただきました。発売当日には京都市、セブン‐イレブンスタッフ、SOOメンバーにて三条大橋にてビラを配り道行く人に三条大橋の現状を訴えました。その様子は新聞にも取り上げられ、またSOOのメンバーがテレビにも出演し、雑誌ではSDGsの取り組みとして取り上げられ、更新事業の前進に役立つことが出来たと伺っています。
二点目は、京都市、日本郵便、セブン‐イレブン・ジャパン、SOOで「SOOの年賀状プロジェクト」。新型コロナ禍の2020年よりスタートし、毎年行っている京都の新年の風物詩です。
新型コロナが流行し、人の往来が無くなった2020年。京都からも観光客の足音がぱったり消え、新年の挨拶も面と向かってすることが叶わなくなりました。京都でしか買うことが出来ない京都ならではの製品をつくっているSOOとして何か出来る事はないかと考えつくった「SOOの年賀状」。京友禅手染め絹のスマホ拭き「おふきmini」を定形郵便で送れるようにこれまでの「おふきシリーズ」のパッケージコンセプトはそのままに封筒型のパッケージに改良しました。
初年度はコロナの早期終息を願い、アマビエ柄に染色したスマホ拭き用の生地を、京都市長をはじめ日本郵便、セブン‐イレブン・ジャパンの重役方にもお集まりいただき高台寺様にてご祈祷いただきました。毎年少しずつ薄れていく日本の年賀状文化と京友禅のPRにもなったこの年賀状、コロナ禍の京都ならではの年賀状としてご好評をいただきました。
以後2022年は高台寺様、2023年は三十三間堂様、2024年は養源院様に、それぞれの寺社の特徴をデザイン、染色した生地を一年の無病息災を願い祈祷いただき、毎年京都ならではの年賀状として制作しております。
京都市内の郵便局、セブン‐イレブンにてポスターを掲示いただき、専用什器にて販売することで、伝統産業である京友禅と京都の重要な文化・観光資源である寺社、日本の正月の風物詩である年賀状のPRを毎年行うことが出来ます。 -
今後のビジョンや展望により、どのような社会的インパクトが期待できますか
「長期滞在型工房製作体験」事業をスタート
「モノづくり」と「コトづくり」の共存を実現し、自らと社員とお客様がワクワクするような事業を展開できるよう計画中です。新たに工房(ラボ)の設立を目指し、自社のブランディングの確立と地域のコミュニティとしての役割を果たす「空間」にし、工房に併設したショップの開業も合わせて計画しております。
これらが実現することで、国内外の観光客をターゲットとした「長期滞在型工房製作体験」事業がスタートできると考えております。従来、短時間や長くて一日の体験しかないですが、ホテルなどの宿泊施設とタイアップし、「工房にしばらく通って、ものづくりに没頭する」という新しい顧客層を獲得できるようします。特に国内外の富裕層は、もうすでに世界中の観光地に滞在済みでただの旅行では満足できない方々も多くおられると思います。その層をターゲットに古都京都に滞在し、職人さんの全面的なサポートのもと、ものづくりに没頭する環境を作り出し、非日常的な空間での生活を楽しんでもらえれば、新たな体験市場が構築でき、業界にインパクトを与えることが可能になります。
また、着物業界は生産量の減少に伴い、職人さんの高齢化・後継者不足が大きな問題であると先程から申しておりますが、「コトづくり」である体験事業の需要が増えることで指導する職人さんの需要も増え、業界の抱える問題の改善に寄与することができるのではと思います。
SOOとしては、京友禅の伝統技術を使って現代のライフスタイルに合った新しいアイテムを創出することを目指し、京友禅手染め絹の眼鏡拭き“おふき”シリーズを京ならではのアイテムとして製作しました。京都でしか買えないギフト、京みやげとして販売を開始しましたが、最近では認知度の高まりと共に京都に訪れる観光客の方々にもお買い求めいただけるようになりました。
SOOの活動には、京友禅の魅力を広め、着物文化をより身近に感じていただきたいという強い思いが込められています。着物は単なる服ではなく、日本の文化や感性を表す大切なものです。また世界に誇れる唯一無二の民族衣装だと思っています。私たちは、SOOの製品がその美しさを広め、日本人だけでなく世界中の老若男女の方々に着物文化の素晴らしさを伝える手助けができればと願っています。
京友禅を継続的に維持するには若者に関心をもってもらうことが重要です。最近の若者は伝統文化に興味を持っていますが、日常生活で使う機会が少ないことが課題として挙げられます。SOOは、京友禅の生地を使い日常生活でも使用できるような製品をこれからも提案し続けたいと考えています。これによってより身近に感じられ、若者が関心を持ち、次の世代へと伝えていけると信じています。
またSOOでは、もっと身近に京友禅の素晴らしさを体感してもらうため商業施設や宿泊施設、地元の学校やコミュニティと協力して、京友禅の技術を学ぶワークショップも継続的に開催しています。これまで京友禅にふれたことが無かった参加者に、”おふき”の染色体験を通じて自分の手で伝統技術を学ぶことで、楽しみながらその魅力を実感できる場をこれからも更に提供できればと思っています。
どれだけ素晴らしい製品をつくり、活動を行っていても世に知られないものは存在しないことと変わりません。これまで着物に興味がある方以外に関心を持ってもらえなかった京友禅を発信するために、ウェブサイト、SNSやデジタルメディアでSOOについてのみならず普段の京友禅の仕事や着物文化の美しさを広めていきます。実際オンライン上での発信を強化してからはSOO直営店舗への来店、取扱店舗での売り上げ、ウェブサイトからの問い合わせが右肩上がりで増加しています。これからも分かるように京友禅も含めた京都の伝統産業は、京都にとってキラーコンテンツになる要素を秘めていると考えられます。露出を増やせば興味を持ってもらうことが出来る京都の多くのコンテンツを互いに協力して発信し続けることが、京都の活性化、伝統産業の維持、発展に繋がると確信しています。
現在”おふき”シリーズは京都でのみ販売を行っており、京都ならではの商品として展開を行っております。今後は、SOOとして海外のファッション、インテリア分野等のブランドへのアプローチを行っていく予定です。”おふき”シリーズで培ったブランド力を武器に海外での京友禅生地の需要を開拓するべく有名メーカー、ハイブランドとの協業、コラボレーションを実現させたいと考えています。0から始めたSOOのこれまでの活動を振り返ると大手企業との取引、コラボはビジネス、活動を推し進める大きな原動力になります。今後私たちが各分野のトップ企業との取引を実現しそれが発信された暁には、SOOのブランド力の向上に繋がるのみならず、京友禅のブランド力のさらなる向上に繋がります。私たちSOOが0からブランドを立ち上げこれまで活動して来られたのは、「京都」「京友禅」のブランド力のおかげです。この二つが無ければここまで来ることは不可能でした。「京都」「京友禅」は国内外で強力なブランド力を持っています。先人が築き上げてきたこのブランド力を活かし、さらに発展させ今後に繋げていくために新たなフィールドに向かっていきたいと思っています。
”おふき”の販売のみならず、”おふき”を通じて多くの方々と交流し活動の幅を広げられていることは、”おふき”が単なる京友禅製品のみならず人、コト、モノを繋げる媒体として機能し始めたことを表しています。京友禅で染色した眼鏡拭き用の生地でありながら、様々な分野で多くの人たちとの活動を行うことが出来るツールとなり始めた”おふき”と共に、京友禅のみならず京都の地域課題の解決の一助となるようにSOOの活動を続けていきます。 -
従業員・顧客・取引先への配慮
常にコミュニケーションを取り、社員の意見を尊重できる経営者でありたいと思っております
当社は定年という考え方は基本的になく、社員さんには元気に働ける限り働いていただきたいと思っております。しかし、このままいくと10年後、2名の社員は80歳台、1名は70歳台になってしまいます。次世代を見据え、営業社員1名、専門職1名の確保が急務です。
そして何よりもまずは社員にとって働き甲斐のある会社であることが大切です。小規模の会社なので常にコミュニケーションを取り、社員の意見を尊重できる経営者でありたいと思っております。その中で就業規則の見直し、改善など定期的に計っていきます。特殊な専門技術が必要な部門もありますので、ベテラン社員から技術を継承していける体制を維持・発展します。
小規模なので組織とまではいきませんが、現在のように経営者がプレイングマネージャーになりすぎないよう責任のある役職の者と役割分担し効率的に事業を推進できる体制を目指します。
SOOの活動については、8年前に0からスタートしました。
着物需要の減退に立ち向かうべく立ち上げたブランドとして従来の着物関係の取引先、販売ルートと異なる販路を自分たちで一からつくりました。百貨店店頭でのポップアップからスタートしたブランドは今や京都市内のすべての百貨店に口座を持ち、その他大型書店、専門店、郵便局、コンビニエンスストア、生協、ドラッグストア、雑貨店、土産物店、宿泊施設、メディア、一般企業、寺社仏閣、文化施設と多種多様な業種との取引に広がっています。これらすべての取引店と問屋等を通さず直接取引を行っている事がSOOの活動の大きな特徴であり、活動していく上で大きなアドバンテージとなっています。
SOOは商品の販売に重点を置いたスタンスで各取引先とやり取りを行っておりません。京友禅の現状や魅力、染屋としての普段の仕事やSOOの製品や活動に込めた想いを一軒ずつお伝えし、商品の販売だけでなく想いに賛同し共に歩んでいける方々に商品を取り扱って頂いております。
その為適正アイテムの選択からはじまり売り場づくりから販売していく際の施策なども共に作り上げており、施設ごとに什器、POP等の制作からオケージョンに合わせた施策や企画を共に立ち上げ継続的に対話を続けながら、”おふき”の販売を通じて売り場と活動を常にブラッシュアップしています。
また”おふき”は生地、染色工程、パッケージに至るまですべてが普段着物をつくる際と同じもので出来ています。着物用の生地に、着物の絵師が描いたデザインで染色型を制作したものを使用して京友禅の職人が染色し、その後の工程も着物と同じ工程をすすみます。
パッケージは着物を保管しておく際に使用する“たとう紙”をつくる職人がおふき用にリサイズしたものを制作しています。すべて着物と全く同じ作業を行いながらSOOが企画、アイテム、販路を変えることで着物以外の需要を生み出しています。
”おふき”製造の各工程で新たな設備や作業が必要ないことから、染色工場や職人の自宅内の工房でこれまで通りの環境で仕事が可能です。加えてSOOの取組みにおいてこれまでの着物用生地の染色以外の需要を生み出せていることで、持続的に若い職人の育成ができる仕組みが構築できております。 -
地域社会への配慮
着物で参加する「上京de婚活」イベントなどを地域と一緒に運営しております
関谷染色の主な事業である染匠とは、染色加工全体のプロデューサーであり、その指揮のもと、京都内の職人さんに工程ごとに分業で仕事をしてもらう仕組みです。当社では創業から約130年経過した今もその仕組みは変わらず、古来より「地域内経済循環」を実践し続けています。
材料や道具なども京都の専門店から購入し、積極的に「地産地消」に努めております。
地域への参画として、京都中小企業家同友会上京支部に所属し、地域連携担当副支部長を拝命しております。上京区役所様との包括連携協定も約2年前に締結し、具体的な活動として着物で参加する「上京de婚活」イベントなどを一緒に運営しております。この婚活イベントは、将来的に結婚して上京に定住してもらうことに寄与できる活動と思っております。
また、同志社大学政策学部との産学官の連携で、企業と学生さんを中心とした「地域課題解決プロジェクト」を毎年開催し、現在全体のプロジェクトリーダーをしております。「地域課題解決プロジェクト」は企業の抱える問題点を学生さんの視点で企業と共に解決に導き、さらには学生さんには京都の地域企業の魅力に気づいてもらえるWINWINの活動で、行政や大学から大変高い評価をいただいております。卒業すると地元や東京などで就職し京都を出てしまう学生さんが多い中、少しでも京都に定着してもらえることを目標に日々活動しております。
学校への貢献活動として、近隣の平安女学院中学・高等学校からの校外授業も積極的に受け入れ、普段は非公開の友禅工房や書庫の見学など、伝統産業である京友禅の教育現場での周知にも協力しております。
SOOでも地域社会に対して、様々な配慮を行っております。
SOOの製品はすべて京都市内にて染色加工され、その販売においても「京都でしか買えない」「ネットでは買えない」というブランドコンセプトを持った究極の「地産地消」製品であると自負しております。
京友禅の着物はその製造工程は完全に分業化され、一つの工程の技術を向上させ、職人の技術の結集によってクオリティの高い製品を生み出す”仕組み”があります。この”仕組み”は、「地域内経済循環」を何百年も前より実践してきた証です。SOOの製品は、京都という産地だけではなく、京都ならではの購入体験を通じ販売店様にも大きく貢献できていると感じております。
地域への参画の面では、京都の大学からの依頼で「京友禅の未来を考える」というテーマのもと、SOOの取組みについての講義も定期的に実施しております。また工房見学やワークショップ(型染め体験)なども積極的に受け入れ、子供たちにものづくりの楽しさを説明する機会も設けております。
加えて地域課題の解決に向けて「三条大橋プロジェクト」や「SOOの年賀状プロジェクト」等では、商品の販売を通じての地域課題や地域資源の告知活動を行っており、また商品を販売した収益の一部を伝統産業の振興に繋がるよう寄付させていただいております。 -
環境(未来の社会)への配慮
京友禅の現状や未来について、大学の講義にてお話しさせていただいています
環境(未来の社会)に対して、関谷染色として様々な取組みをしております。
その中でも、特に文化の継承・発展を計る活動について力を入れております。代表取締役である関谷幸英が主に大学などからのご依頼で定期的に京友禅の現状や未来について講義にてお話しさせております。具体的な事例は下記の通りでございます。
・立命館大学産業社会学部 専門特殊講義Ⅱ地域創造型事業活動論講義(2016年5月12日、19日、26日 計3回)
・経済産業省和装振興協議会分科会(ものづくり)委員(2016年5月)
・伊藤若冲生誕300年記念シンポジウム『若冲デザインの先進性』パネリスト(2016年7月1日)
・同志社大学政策学部『21世紀企業の挑戦 デジタル時代のビジネス戦略』講義(2017年11月7日)
・大学生協チャレンジプログラム企業体験(2018年6月5日手描友禅体験、7月21日活動報告会)
・静岡文化芸術大学公開研究会『伝統工芸の海外展開をめぐる意義と今日的課題』報告者(2018年8月3日)
・早稲田大学人間科学学術院『ものづくり技術論』講義(2019年9月10日)
・同志社大学大学院総合政策科学研究科『地域力再生実践論研究』講義(2019年12月5日)
・京都橘大学現代ビジネス学部経営学科『中小企業論』(2020年6月27日 ZOOM講義)
・京都市地域コミュニティ活性化推進審議会委員を拝命(2020年4月~2021年3月)
・京都市輝く地域企業表彰 地域企業輝き賞受賞(2021年1月)
・京都染色美術協会会長時に文化庁×吉本興業×吉田朱里×京都染色美術協会のコラボレーションで第70回京都染色美術展の会場の京都市京セラ美術館で『やってみよう日本の文化』プロジェクトへの協力
・同志社大学政策学部FYE『企業が果たす地域での役割とは?』講義(2022年7月4日)
・早稲田大学人間科学学術院『ものづくり技術論』講義(2022年8月30日)
・京都産業大学文化学部専門教育科目『きもの学』講義(2022年9月9日)
・同志社大学政策学部FYE『企業が果たす地域での役割とは?』講義(2023年7月3日)
・工房長の大矢博司氏が当社在籍50年以上にわたり京友禅の製造に従事した功績が認められ「瑞宝単光章」叙勲
代表的な活動は以上ですが、その他多数の実績があります。
環境(未来の社会)に対して、SOOとしても様々な取組みをしております。
”おふき”シリーズは環境に配慮した商品です。使い捨てのマルチクリーナーが多く販売されている中、おふきは洗うことで繰り返し使用することができます。天然繊維である絹本来の特性を活かした製品であることから化学繊維の製品のように帯電防止等の加工をすることなく製品としての要素を満たしており、加工による余分な環境負荷をかけることなく製品を完成させることが出来ます。
また、”おふき”シリーズは使う材料は着物そのままに着物の製造と全く同じ工程で製造できるため、新たな設備投資などの必要がなく工場に負荷がかかりません。染料には有害物質が含まれず、製品パッケージも和紙でできており、環境に対する配慮が適切に行われております。
また、職人が染色する際に使用する道具や材料などは一度購入すれば非常に長く使用でき、道具は脈々と受け継がれています。
地域に対しては、工房見学や染色体験、教育機関での講演など積極的に実施し、子供たちに伝統産業や京友禅、ものづくりの楽しさなど継続的に伝えております。危機的な状況にある京友禅の未来を誰よりも考えSOOを結成、新たな市場開拓を通じて持続的にものづくりが可能なインフラを維持・向上できるよう取組みをしております。また、伝統産業の振興に寄与できるよう寄付活動も継続的に行っております(前述)。
情報開示に関しては、ウェブサイトやSNS、プレスリリースなどを通じて積極的にSOOの活動情報や京友禅、着物の情報を配信しております。
多くの企業様や行政機関からもご支援頂きながら、これからも京都と京都の伝統産業、京友禅の未来を考え、活動を継続してまいります。