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経営理念
生態系サービスに最大限の価値創造を追求する
弊社メンバーは、当時大学4回生時に、学生ベンチャーとして「株式会社RE-SOCIAL」を設立しました。
大学時代は龍谷大学の政策学部に在籍し、まちづくりや地域課題、社会課題をどのように解決するかを研究しており、その中でもメンバー3名は、社会課題をビジネスとして解決するソーシャルビジネスを専攻していました。
さまざまな地域で実践的に研究を深める中で、どこの地域を訪れてもよく耳にしたのが「獣害被害」という社会課題でした。
近年、全国各地で獣害被害は深刻化しており、猪や鹿による田畑の被害総額は年間130億円にも上ると言われています。政府は獣害被害の抑制を目標に報奨金制度を定め、野生動物の捕獲が推進されました。その後、捕獲頭数は増加傾向にあるものの、利用手段がないことから、捕獲数の約90%が焼却・埋設処理されているという現状が続いています。加えて、獣害駆除を担っている猟友会では高齢化・弱体化が進み、機能していない地域が多いのが現状です。
私たち3名は在学中、とある地域で、捕獲された野生鳥獣が大量に廃棄されている現場を目の当たりにしました。壮絶な現場に大きな衝撃を受けるとともに、「大切な命が無駄にされている」「こんな現状があってはならない」と獣害被害に関わるソーシャルビジネスに取り組むことを決心しました。
当時大学3回生の私たち3名は獣害被害に関する情報を集め、個体の捕獲後、利用に至らない理由を以下の3点に定めました。
①硬さ臭みが強いイメージ
②安定供給が難しい
③歩留まりが悪い
これらを解決する事によって捕獲個体の利活用が大きく進むのではないかと考えました。
そして、これらの課題に向き合う徳島県の「中川食肉販売店」にて、半年に及ぶ修行を行いました。そして3名自ら、野生動物の捕獲、殺傷、精肉処理、加工を行い、商品として販売するための一連のスキルを身につけました。
修行後、現在の拠点である笠置町へ移住し、食肉加工施設の建設に向けて活動を始めました。当初は地元住民の反対もあり難航しましたが、獣害被害の解決と捕獲個体の有効活用をすることで、地域の活性化や地域ブランドの創出に貢献できることを伝えるため何度も説明会を開き、支持を集めることができました。
そして大学卒業とともにコロナウイルスが流行し始め、計画通りではありませんでしたが、2020年10月に京都府笠置町にて「京都鹿肉専門やまとある工房」を開業し、食肉処理業・販売業・食肉製品製造業を取得しました。
修行で身につけた弊社製法である、生捕り&活け〆は臭みが少なく柔らかい肉質を実現できることから、都市部を中心に多数の飲食店様やホテル様にお取り扱いいただいております。生肉だけでなく加工品の開発を行うことで、小売業(ネット販売や催事)においても着実に売上を伸ばしています。
また、生捕りによって一時的に鹿を飼育する「養鹿」に成功し、寿司屋の生簀のように、新鮮な精肉を提供することも実現しています。
さらに鹿は食肉利用部位が体重の20~30%のみと歩留まりが悪いことから、その他内臓や骨、レザーの商品化も進め、2022年度よりペットフード事業(京都天然鹿肉ペットフードGOOD MEALONE!)とレザー事業(COL STYLE)、鹿肉を中心とした自然派バルMEAT UPを運営し、鹿の歩留まりの悪さを軽減することにも成功しました。
以上の4事業を確立することで、企業理念である「生態系サービスに最大限の価値創造を追求する」ことと、地方での獣害被害という大きな課題に対して「無益な殺傷から有益な経済活動へ転換する」ことに繋がると考えています。 -
経営理念に基づいて、具体的に取り組んでいること
鹿一頭を余すことなく効率的に活用できる点が弊社のビジネスモデルの強みです
・食肉事業
1.他にはない生体搬送・冷蔵販売:
弊社では、仕入れ(狩猟)から精肉処理、販売までを一貫して行っており、自社で仕入れた個体のみを扱っております。銃は一切使用せず、箱オリでの捕獲後は工房まで生体搬送(生きている状態で工房に搬入・止め刺し)を行い、徹底的な血抜き、素早い処理を行います。そして、個体に合わせた熟成管理・細やかな精肉加工を行います。捕獲から精肉加工・販売までを一貫して行うからこそ、飲食店様やお客様のニーズに合わせた商品を提供することが可能です。
また、生体搬送により、捕獲後すぐに止めを刺す必要がないため、受注状況に応じた個体管理が可能となります。従来の鹿肉は、冷凍状態で販売されることが多いですが、捌いたその日に冷蔵状態で出荷する、「生ジビエ」は人気商品で、リピーターの方々にも多数ご好評いただいています。
2.ジビエを身近に感じる商品開発:
「ジビエ=ハードルが高い、臭みや硬さが気になる」という、お客様のイメージを払拭するため、素早い処理と徹底的な精肉技術によって、柔らかく旨味の詰まった商品を実現しています。 現在は、生肉・味付け済み生肉・加熱済みの加工品のそれぞれを充実させ、ジビエ初心者の方にも自ら調理をしたい方にもお楽しみいただけるラインナップを展開しています。実際に、「こんなに食べやすいと思っていなかった!」や「鹿肉に対するイメージが変わった」など嬉しい声を多数いただいており、おうち時間やネット通販が増加している現代において、ECサイトの拡充にも尽力しています。
3.国内2番目のハラール認証取得:
近年、世界的なイスラム教徒の増加や在日イスラム教徒の増加により、ハラール市場は大幅に拡大しています。一方で、現在国内の食肉加工においてハラール認証を取得している施設は11施設、その中でも鹿肉での取得は2施設のみなのです。新型コロナウイルスや国際的な物価高騰により、海外からの輸入品が減少する今、国内で生産・販売している弊社は、市場のニーズに十分に応えることができると考えています。今後は、海外の言語を用いた新たなページの作成や、インバウンド向けのホテルや飲食店への営業など、新たな販路開拓に向けて尽力します。
・ペットフード事業
1.ヒューマングレードな商品:
ペットフードを製造する際は、特別な施設や許認可を必要とせず保健所への届け出のみで製造することができるため、商品の製造過程が不透明な場合が多くあります。一方弊社では、食肉と同じ素材を用いて同じラインで製造するため、ペットにとって安心安全で最高品質な商品をご用意できるのです。実際に、同じ素材を用いてペット用鹿肉ステーキと飼い主様用鹿肉ステーキ(味付け済み)をセット販売した際は、大変好評で「家族だからこの子と同じ食事ができて嬉しい」「自分も口にできるから安心して与えられる」というお声をいただきました。これは、食肉事業を行っているからこそ実現できる商品開発であるため、今後もさらに伸ばしていきたい強みです。
2.無添加で栄養豊富な商品ラインナップ:
従来、犬が野生動物であった頃、捕食対象の動物は内臓→骨→お肉の順に食されていました。ライフスタイルが変化した今でも、お肉だけでなく、内臓や骨が持つ栄養素はペットが生きていく上で必要不可欠なのです。弊社では、捕獲から精肉処理を一貫して行っているからこそ、内臓や骨、角などの商品をご用意することができます。各商品から様々な栄養素を得ることで、ペットの食事と健康をお手伝いしています。
また、近年よく耳にするのがペットの食物アレルギーについてです。多くのペットフードで使用されている家畜のお肉は、家畜が餌としている穀物に合成保存料やホルモン剤が含まれており、ペットのアレルギーリスクを非常に高めています。一方で、自然素材のみを体内に取り入れ育った野生の鹿は、アレルギーリスクが非常に低いオーガニックなお肉なのです。弊社では、保存料などの添加物は一切使用せず、健康で良質な素材を丸ごと活かし、製造・販売しております。
3.比較的低価格での販売が可能:
一般的に、野生鳥獣を取り扱う企業において、仕入れ→精肉処理→販売のそれぞれを異なる業者が担うため、自然とコストがかかりエンドユーザーには高価格な商品が提供されます。一方弊社では、自社で仕入れた個体のみを取り扱い精肉処理・販売を行うため、製造工程が可視化され安心安全な上に、市場に比べ、比較的低価格帯(一般的な価格の70%程度)での販売が可能となるのです。
また、今年度よりペットフード事業において海外輸出を見込んでいます。国内外問わずペット市場が拡大しているアジア圏を中心に海外輸出を進めることで、外部環境の変化に動じない、大きなマーケットになると見込んでいます。
・レザー事業
弊社では、大型機械を用いた大量生産を行わず、受注後にひとつひとつ手作りで製造しております。そのため、商品の形状やデザイン、レザー素材の好みなどお客様の希望に沿った商品を展開することが可能です。
?実際に、ECサイトでは色味や素材感の指定に加え、付属品やラッピングの有無も承っております。また、カフェや飲食店のロゴマークを刻印したメニューブックやコースターも製造しており、お肉だけでなく、お店全体が一体となって自然素材を取り入れるという事例も増えてきました。お客様のニーズに寄り添った商品を開発することで、より愛着が増し長く使用いただくことができるとともに、お客様の満足度向上、日々の生活スタイルの向上に繋がると考えています。
以上のように、鹿一頭を余すことなく効率的に活用できる点が弊社のビジネスモデルの強みです。 -
今後のビジョンや展望など
日本全国で廃棄される鹿を0にすることを目指します
今後の中期的な事業計画は以下の通りです。
1.今年2024年は、展示商談会やビジネスマッチング等に積極的に参加し、新規顧客の獲得や百貨店のバイヤー様などとの接点を深めます。
食肉事業では、百貨店でのお取り扱いや、催事出店でのお客様をリピーターに繋げるため、ECサイトの見直し等の施策を行います。また、捕獲頭数が前年より1.5倍ほどの推移で増えていることから、ロースやモモ肉などの人気の部位を中心に飲食店への卸売りも広げていきます。
加えて、京都ではインバウンドが年々増加しているため、ハラール認証を取得している鹿肉という強みを活かし、ホテルレストランなどへの展開も強めていこうと考えています。
ペットフード事業ではSNSの活用やECサイトの充実により、大幅な販路拡大を目指します。
これまでの商品ラインナップ20種類から50種類ほどに商品開発を行い、鹿肉ペットフードとしてのブランディングを強めていきます。
また海外展開を進め、国内市場に留まらずより大きな市場の開拓を進めます。
レザー事業では、製造可能な商品ラインナップを拡充させるとともに、様々なニーズを取り入れた商品を開発することで、百貨店様でのお取り扱いや認知を拡大するための経験と実績を獲得します。
2.来年2025年には、4つの事業の地盤を強化します。販路開拓や商品開発を進めながら、他地域へのビジネスモデルの展開を進めます。他地域展開に向けて、新たな人材や事業者と協働を目指します。また、供給量の拡大とともに海外の販路を継続的に広げ、海外での販売実績を獲得します。
3.2026年以降については、4つの事業がそれぞれ安定的な売上と収益が得られる事業に成長することを目指します。同時に、他地域に展開したビジネスモデルのコンサルティング業務やアドバイザーとしての業務も行います。
より多くの国や地域に展開することで日本全国で廃棄される鹿を0にすることを目指します。
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取り組みにより、どのような社会的インパクトを起こしてきましたか
2022年「京の公共人材最優秀賞」、2023年「KYOTO NEXT AWARD最優秀賞」に選出
弊社は、創業から5年間、狩猟から精肉加工、販売を行いながら、年間100回ほどの催事に出店し、お客様に直接鹿肉の魅力を発信し続けてきました。
その中で、鹿肉が美味しい食材であるだけでなく社会的意義のある食材であるという認知が広がっているように思います。
実際に、「家畜のお肉を食べるのは抵抗があるけど鹿肉であれば消費したい」「美味しいお肉だから食べないともったいない」という声が年々増えています。また、都市部で販売した際には、「都会でも手軽に鹿肉を楽しみたい」「定期的に購入したい」というお声も多数いただきました。このように昨今の消費者行動の変化や健康志向の点からも、弊社の食肉事業は人々の食事の選択肢になりつつあると考えています。
また、全国初、町内で捕獲された鹿を100%利用することができました。2022年以降、笠置町内で捕獲されたすべての鹿を弊社で引き取り、捕獲個体の100%を食肉やペットフードとして流通・消費させています。さらに現在は、近隣5市町村との連携を進め、捕獲地域の拡大や京都府南部地域としてのジビエの利用拡大を目指しています。
加えて、弊社メンバーは学生ベンチャーとして起業したことで、様々な新聞やテレビなどのメディア様に取り上げていただきました。そのおかげで社会的反響も大きく、今でも全国各地から応援の声がたくさん届きます。2022年には「京の公共人材最優秀賞」や「ポケットマルシェチャレンジアワード優秀賞」、2023年の「KYOTO NEXT AWARD最優秀賞」にも選んでいただくことができました。また、地域外からの移住者にも関わらず、地元地域の猟友会や住民、民間事業者、自治体との関係を築き上げ、事業を進めることができています。
今後も引き続き、情報発信を続けながら事業に真っ直ぐに取り組んでいきたい思いです。
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今後のビジョンや展望により、どのような社会的インパクトが期待できますか
人々の生活の中にジビエという選択肢を広げる
弊社が今後も事業を進めることにより、以下の3点を期待することができると考えています。
・弊社拠点の笠置町について
弊社の拠点である京都府の笠置町は人口1,000人と西日本で2番目に小さな町であり、過疎市町村にも認定されています。過疎化や高齢化により、一次産業や観光事業の衰退はとても著しいものであります。
そこで、弊社がこの地域で社会課題にビジネスとして向き合い、経済効果を生み出すことで、獣害被害の軽減はもちろんのこと、笠置町の雇用創出や関係人口の拡大、地域ブランドの確立など付随する様々な社会課題の解決に繋がると考えています。
実際に、近隣住民の方の雇用や猟友会会員の所得の向上など一定の成果が出ています。
・ジビエを消費することの有意性
ジビエを食肉だけでなくペットフードやレザー商品など、さまざまな視点からの消費を促すことで、人々の生活の中にジビエという選択肢を広げることを目指しています。そうすることで、地域社会では、獣害被害の軽減、産業の活性化、雇用・地域ブランドの創出を図り、Iターン・Uターンの促進や森林再生、関係人口の増加などの地域社会の発展に寄与することができます。
また、穀物危機や地球温暖化、家畜が及ぼす環境負荷など、様々な社会課題が認知され始めたことにより、畜産に代わる、代替肉の市場規模も増加しています。人間と食物・水資源を競合する家畜に比べ、鹿は野生動物のため、特別に飼料を必要としません。よって、今後の国内における食糧安全保障の観点からも、鹿肉を消費することの意義はさらに大きくなっていくと考えられます。
・現代版ニホンオオカミとしての役割
鹿や猪等の野生動物が増加している背景には、ニホンオオカミの絶滅が挙げられています。生態系におけるニホンオオカミは鹿や猪等の野生動物を食べることで頂点捕食者としての役割を担っていたのです。現在はそんなニホンオオカミが滅び、生態系が崩壊しています。
京都府下において、鹿は適正個体数の7?9倍生息しており、さらに自然増加率1.3倍のスピードで今後も増え続けると考えられています。
私たちは人間が生態系の輪の中に一部加わり、ニホンオオカミの役割を担うことで、生態系の回復・発展と人間の経済活動との両立を図る必要があると考えています。
私たちの考えるこれからの社会に必要な、古くも新しい生態系の形という考えを広げていきたいと思っております。
以上のように、獣害被害の対象として廃棄されていた大切な地域資源を、弊社がこの事業を通して最大限に活用することによって、さまざまな視点から地域社会に寄与します。そうすることで、社会的価値と経済的価値を創造するソーシャルビジネスの発展と、全国的な地域社会の発展へと繋がると信じています。
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従業員・顧客・取引先への配慮
長く働きやすい環境づくりに努めています
・ステークホルダーとの対話:
実際に催事出店に足を運びお客様と顔を合わせることにより、弊社事業の周知拡大とともにお客様のニーズに合わせた商品開発を行うことを心がけている。
・働きやすい労働環境の整備:
スタッフ同士のコミュニケーションや学生アルバイトスタッフとの定期的な面談など、長く働きやすい環境づくりに努めている。 -
地域社会への配慮
猟友会にも所属し、獣害被害の軽減に奮闘しています
・地産地消の推進:
拠点である京都府南部の鹿を中心に扱い、産業の活性化やブランド化、雇用の創出を図っている。また、地場産品であるブルーベリーや椎茸、蜂蜜などとコラボすることによって地域全体としての発展を目指している。
・地域への参画:
拠点である笠置町は過疎地域にも認定されており約7割が高齢者であるということから、清掃活動やまちづくり活動に積極的に参加している。また、猟友会にも所属し獣害被害の軽減に奮闘している。 -
環境(未来の社会)への配慮
鹿肉を消費することの意義はさらに大きくなっていくと考えています
・温暖化対策・2050年CO2排出量正味ゼロへの取組:
穀物危機や地球温暖化、家畜が及ぼす環境負荷などにより、畜産に代わる、代替肉の市場規模も増加している。人間と食物・水資源を競合する家畜に比べ鹿は野生動物のため、特別に飼料を必要とせず、今後の国内における食糧安全保障の観点からも、鹿肉を消費することの意義はさらに大きくなっていくと考える。
・環境教育・学習の推進:
地域の小学校や小学生を対象としたイベントに参加し、食育の周知にも参画している。