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経営理念
作れないモノはない、無いモノは作る。
「作れないモノはない、無いモノは作る。」の精神で不可能を可能にするものづくりにチャレンジしています。具体的には、これまでの限られた分野でしかその魅力を発揮することができなかった伝統工芸技術である「指物」と「組子細工」を融合させ、今までにはなかった新しい技法を開発し、建築内装業という新しい分野に参入することで世界をフィールドにした革新的なビジネスモデルを構築しています。
また、日本には世界に誇るべき伝統文化があります。これらを深く学び日本人としてのアイデンティティーをしっかりと築き上げることが重要だと考えます。モノを大切にして、壊れたら補修しながら長く使おうとする精神はこれからの世界の主流になるべき考え方であり、伝統工芸はその精神性においてもまさにトレンドとなりつつあるのではないでしょうか。先人達の知恵を学び、時代に合わせた形に柔軟に変化させ、未来の日本人に受け渡していく。
私達、村山木工では、このような思いを基に日々の製作を行なっています。
また、私達には伝統技術の継承という宿題も課せられていると思います。
温故知新の言葉が表すとおり、長年積み重ねられてきた技術や感性は一朝一夕には成し得られません。長い年月をかけて研ぎ澄まされ、無駄を削ぎ落とされ、洗練されてきたもののみが現在まで残っていると思います。それらを学ばないほど勿体無いことはありません。そして、それらをしっかりと学んだ上で自分なりの解釈を付け足したり、もしくは全てを覆したり、この様な行為が伝統となり未来に繋がっていくものだと考えます。素材や、道具は時代とともに変化していきます。伝統工芸、伝統技術だからといって何も変わらないのはおかしなことで、時代とともに環境の変化に柔軟に対応しながら守るべきは守り、変えるべきは勇気を持って変える。これが私の考える伝統の継承です。
「守破離」の精神こそ本当の意味での伝統の継承ではないでしょうか。
これらの考えに至るきっかけは、従来の伝統工芸木工では、和室における調度品や お茶・お華の道具、節句の飾り物、などの製作に限られてきました。急速な生活の西洋化により、これらの需要が急激に減り、伝統工芸全体の需要が激減してしまいました。このままでは仕事がなくなり生活ができなくなる危機感をじわじわと感じていた時、友人のキモノ作家からホテルの内装に伝統工芸木工を取り入れたいとの相談を受けたのをきっかけに従来のマーケット以外のマーケットに巡り会えました。
ここでは、全く新しい取り組みを積極的に取り入れようとする機運と、従来の安心安全なことしか受け入れない考えとのせめぎ合いがありましたが、伝統工芸の素晴らしさや、これを成功させた時には世界中からの注目を得られることなどを粘り強く説明しご理解をいただけて、第一号の製作事例となるパレスホテル東京の神殿(2012年竣工)の製作となりました。その後は弊社の製作事例をご覧いただくとお分かりのとおり世界中のラグジュアリーホテルからの製作依頼が後を断ちません。ここでも、常に伝統を踏まえた上での新しいチャレンジを続けています。最初に掲げた「作れないモノはない、無いモノは作る。」の理念を持って、村山木工でしか作れないものを製作し続けています。
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経営理念に基づいて、具体的に取り組んでいること
新しい発想で生まれた「立体的組子細工」を活用した新しい内装業の確立
1、平成3年からはじめた伝統工芸品の製作も、早いものでその経験が33年を数えることとなりました。京都の老舗人形店等からの長年に渡る受注経験から伝統工芸品に対する技術のみならず、有職故実の知識を蓄積することができました。最近では特に「指物」に特化した技術を鍛錬させる中、単にカタチあるものを作るのではなく、「今、作っている伝統工芸品がこの世に誕生した経緯」や「この伝統工芸品をどんな人に使ってほしいか」などの想いを持ちながら製作を続けておりました。
ところが、これら伝統工芸品は「その用途から限られた方にしか接することがない。」という、現在有るその市場の限界に「どうにかしてこの素晴らしい伝統技術を広く世の中の方に知ってほしい。」そして「この伝統工芸技術を発展させたい。」という熱意が芽生えてきました。
そこで、当社はこの伝統工芸技術を「今ある技術」と「新しい技術」を融合させることが、これまでその存在すら知らなかった方々に、この素晴らしい技術と歴史を知って頂く機会になり、また伝統工芸品への興味と理解が広がるのではないだろうかと考えるようになりました。
「今ある技術」と「新しい技術」のさまざまな融合に試行錯誤を続ける中、当社は「組子細工」の可能性に一筋の光を見出しました。 「組子細工」は、私が長年培ってきた「指物」とは関連性はあるものの、これまでその製作経験はほとんどありませんでした。しかし、指物の製作を通して得た知識と経験から、この「組子細工」の従来の技法の習得だけでなく、指物技術を融合させ「新たな組子技術」を開発することができました。 それが「立体的組子細工」です。
基本的に組子細工は平面構造になっておりますが、当社が開発した組子細工には「立体性」があります。 この「立体性」が今の日本の技術には存在しませんでした。
では、なぜ、当社にその技術を開発することができたのか、それは「指物師」として培ってきた経験があったからこそできた技術開発なのです。「指物」は、その「立体性をいかにして表現するか」ということが非常に重要な技術力となります。この長年の経験で培った技術力が立体性を生み出す原点となったのです。 他社との差別化を明確にしたこの「立体的組子細工」こそ、当社の独自性・独創性を発揮するキーポイントとなりました。
建築業界では、顧客のニーズに合わせ、常に新しい技術が求められる中、この技術の独創性に興味を持って頂き、私の提案は見事受け入れられ、有名ホテルの内装に採用されることが出来ました。パレスホテル東京の神殿で手がけた実績が建築専門家より高い評価を頂き、ほぼ営業なしに、各地の有名ホテルより受注を頂いています。
この実績こそが、従来の伝統工芸技術にはない新しい発想で生まれた「立体的組子細工」を活用した新しい内装業の確立を意味するものであります。
2、また、一方では「新しい技術」で開発したプロダクト商品の製造があります。これは組子自体を曲面に製作する技術を開発し特許を取得したことをきっかけに開発を始めました。現在、照明器具やベッドなどをラインナップに揃えています。
これらの開発の目的は、弊社の売り上げの大半を占めるコントラクト案件では、一件ごとの作品が一発勝負で、デザイン性やディテールの美しさなど高次元でクライアントの満足を得なければなりません。そのような製作の場面ではなかなか若い職人たちに出番を十分には与えることができませんでした。しかしそれではいつまで経っても技術の上達は見込めませんので、定番の商品を開発して、それらの製作でスタッフたちの技術向上を測ることを一つの目的としました。
伝統技術の継承には、より多くの経験を積める機会が必要ですし、その機会を得る環境が必要です。また、その環境を整えるにはマーケットが必ず必要だと考えています。例えば社寺建築の技術の伝承のため伊勢神宮では20年毎に式年遷宮という行事を行い、社殿の移築や御神宝の新調を1300年にわたり行われています。このことが技術の継承を保っているのですが、あえて技術の継承のための機会を作っているとも言えるのです。
私たちも、技術の継承のためにはマーケットを作らなくてはならないと考えています。需要のないところに仕事は生まれず、生産の機会はありません。生産の機会を得るにはお客様からの発注が必要です。お客様が欲しいと思える製品を作らないことには技術の継承は難しいと言えるのではないでしょうか。簡単ではありませんが、こうして世の中から欲しいと思って頂ける製品の開発こそが、マーケットを作り、若手職人の育成になる環境が整い、技術の継承が図れると考えています。
3、新規事業のMushroom Rental-office & Cafeではクリエイティブな活動を応援しています。どなたでもお使いいただけるレンタルオフィスですが、村山木工のショールームを兼ねています。そのため施設内には数々のラグジュアリーホテルに納めた作品が設えてありますので、とても洗練された空間になっており、クリエイティビリティーを刺激する施設となっています。
またカフェで食事の提供ができるようにしています。ここで提供するお料理は自然豊かな環境に合う、地域のパン屋さんが焼いたバンズ、地域の有名和牛専門店のお肉、地域の有機栽培農家の育てた野菜、などを使ったハンバーガーは地産地消の典型となっています。特に野菜は、動物性の肥料は使わず村山木工で出た桧の挽き粉を土に混ぜ込んで作った土の畑で、そこで育った野菜は香りが良く野菜の味も濃いと評判です。
加工で出た木屑まで捨てることなく利用し、SDGsが目指す持続可能な社会の実現に向けた取り組みとなっています。
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今後のビジョンや展望など
マーケティングを強化し、海外展開、若手人材の育成に取り組みます
2023年に「ポリズム京都株式会社」を新たに設立しました。こちらは村山木工の製作する「京組子」製品を販売する会社です。販売を村山木工から切り離すことで、村山木工は製造とコントラクトの受注に専念できますし、販売会社はマーケティングに長けた人材を採用してより積極的に販売していけるようになります。もちろん販売会社の売り上げが伸びれば村山木工の売り上げも伸びるのは言うまでもありません。
また、海外進出の方法として、それぞれの国の企業とOEMを組み、日本からは組子ランプシェードのみを輸出し、電気器具は各国の法律に準じた器具を対象国内で製造してもらい、それぞれの国で契約したエージェントに組み立て販売して頂く方法を構築しようと考えています。
これらの事業が順調に構築できれば、目的の一つであった若手人材の育成にもより良い環境が整います。より多くの人材を受け入れることができ、より多くの経験を早期に積むことができる様になります。
もう一つの取り組みとして、新商品(新技術)の開発も怠りません。曲面の組子が完成しましたので、次は球体の組子、3Dの組子の開発です。こちらも趣味の域ではなく市場に出せる製品として用途や価格などをしっかりとマーケティングした上での製造が可能な製品の開発です。 -
取り組みにより、どのような社会的インパクトを起こしてきましたか
Mushroom Rental-office & Cafeが文化発信の拠点に
弊社の主軸となる事業である、商業施設などの建築内装は順調に業績を伸ばすことができており、特に本年度は約200%の伸び率で売り上げを計上できました。この先も京都で計画中のラグジュアリーホテル案件の受注が数件内定しており、そのうちの一件は、単体事業で年商を上回る金額になります。また、2025大阪・関西万博パビリオンのご相談も二件いただいています。創業8年目でようやく売り上げ1億円の壁を超えられる展望ですが、今後は海外案件にも積極的に取り組み、更なる業績の上積みを重ねていく狙いです。
このようにコントラクト案件では順調な展開を予測していますが、これに安心することなく、プロダクト商品の販売にも力を入れていかなくてはならないと考えています。
Mushroom Rental-office & Cafeでは、様々なジャンルのアーティストにお越しいただきパフォーマンスを行なっていただいています。
2022年10月にはフラメンコダンサー SIROCO 率いるチームでのフラメンコ公演、2023年には、平沼有梨さんのクラッシックコンサート、京都在住のシンガーYammyさんのライブ、横沢ローラさんのライブ、Gypsy Carmenのデビューコンサート、
第一回京北文化フェスティバルの開催、福島虎舟美生さんの古代文字ワークショップなどを行い、地元の方たちはもとより遠方からのご来客様にも大変好評をいただいております。
2024年11月には、ランドスケープシアター(風景演劇)という新たな上演形態を作り上げてこられた劇団ソノノチによる、ソノノチ新作パフォーマンス『風景によせて2024 -かざまち-』が上演予定です。
今後も、この場所が文化発信の拠点となるように取り組んでいこうと考えております。
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今後のビジョンや展望により、どのような社会的インパクトが期待できますか
新しいことにチャレンジしながら日本の伝統工芸をリニューアルしていく
村山木工でしか作ることが出来ない曲面組子や、当社が開発して既に多方面で認知されている立体的組子などを総称して「京組子」と呼ぶこととし、「京組子」の商標登録をいたしました。
「京組子」はその為の旗印として、弊社が独占的に商標を使用する為ではなく関わる事業者に広く使用して頂き、それぞれの事業者のブランディングに役立たせていただく為の事と考えており、他の地域で生産される組子との違いを明確にブランディングして製造販売し、当社の職人はもちろん、協力業者も「京組子」の商標を使って事業を行い、京都木工産業の底上げを狙います。
この「京組子」が広く認知され、より一層需要が高まれば多くの木工職人が製造に関わることが出来、その結果として地域の発展に寄与できるのではないか、また新たな工芸品の産地が形成されるのではないかと考えています。いずれはこの京北の地が京組子の産地となることも夢ではないと感じています。
一方、Mushroom Rental Office & Cafeで特に期待する効果としては、弊社には「伝統工芸で現代建築内装」で既に実証している、新しいことにチャレンジしながら日本の伝統工芸をリニューアルしていく事業があり、この事業をモデルケースとしてクリエーター達が新たな事業を起こしていく場になり得る事。または、クリエイター同士の交流でシナジー効果が得られ、全く新しいクリエイションが発生する場になり得る事です。この場所がクリエイター達のハブステーションになることが望めるのです。
そのためには、今後も益々あらゆるジャンルのアーティストにお越しいただきパフォーマンスを行なっていただく予定です。文化都市京都の中心部のみならず郊外にも魅力ある文化発信の拠点を作ることは、観光MICEの推し進める目的とも合致する事業であると考えられます。
11月に上演予定のランドスケープシアター(風景演劇)も、まだ一般的には馴染みのない演劇スタイルですが、自然豊かな郊外だからこそ可能な表現です。この様な芸術が豊に育っていくきっかけになれば、この事業が豊かな社会の実現の一翼を担えるのではないかと考えています。 -
従業員・顧客・取引先への配慮
お互いの得意なこと、不得意なことを補っていく風土
ステークホルダーとの対話
クライアントと、弊社を採用していただいた理由などをコミュニケーションし、今後どのような作品が求められるのか聞き取ることをしています。また私たちの製作話しも聞いていただき次回のご発注の際には、なるべくスムーズに、よりクオリティーの高い作品ができる様に準備が進められるように対話しています。
また、原材料の仕入れでは、地元製材所の社長と一緒にセリに出向き、原木の良し悪しの見分け方を教えていただきながら、一本ずつ吟味して材料を選んでいます。そのおかげで、私たち製作者では見抜けない丸太での木のクセを、今では見ることができるようになってきています。林業の方との対話で、山を守る工夫やその努力を知り、山の木のことを知り、そして仕事をして消費者に木製品を届けている私たち最終加工者がこの循環をより良く巡らせるためには何が必要か、何をしていくべきかを学んでいます。
スタッフ達とのコミュニケーションには神経を使っています。私たちの時代は仕事とプライベートは特に区別なく、話したり聞いたりしてお互いの理解を深めようとしました。しかし、最近の風潮としてはプライベートには立ち入らないことが原則の様です。そのあたりをデリケートに注意しながら意思疎通がスムーズに図れるよう日頃の何気ない会話に気を配っています。
差別の禁止
弊社のスタッフの構成は男女が丁度50%ずつになっています。このことにより、男女の区別なく仕事の役割を分担していますし、またスタッフ達が自ら率先してお互いの得意なこと、不得意なことを補っていく風土が育っています。
労働安全衛生の徹底
労働基準法を順守した工場運営をしています。また技能講習を修了した作業主任者を配置しています。
働きやすい労働環境の整備
主婦の方も働いておられます。家のご都合で出勤時間の変更なども認めています。
また、弊社以外での仕事を掛け持ちで働いているスタッフもおります。
色々な働き方に柔軟に応じた労働環境を整備しています。
人材育成
伝統工芸木工の技術を習得するための勉強会を終業後に開いています。
ここで、代表の村山伸一が自ら技術をひとつずつ実践を交えながら伝授しています。
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地域社会への配慮
京北を「京組子」の産地に
「京組子」の商標を取得し、ここ京北を「京組子」の産地となすべく取り組んでいます。具体的には、弊社が受注する案件が手に余る様な時は外注にお願いすることになりますが、その請先がいずれ京北に工場を設ける様になると、自然とこの地に多くの「京組子」生産者が集まり、産地を形成することになります。
弊社の原材料は、一部輸入材を使うこともありますが、桧や杉は地元の北桑材木センターの市で購入しています。
このセンターに集まる材木は京都府内産の原木ですので、弊社が使用する材料の90%以上が京都府内産材ということになります。
また、Mushroom Rental Office & Cafeは地域住民の憩いの場となっています。 -
環境(未来の社会)への配慮
作品が100年後の重要文化財指定を受けることを目指します
弊社で加工した木材の挽き粉は、近隣の農家に引き取っていただき畑の肥料として使っていただいています。
現在の独占的地位に甘んずる事なく、より進化した内装工芸品の開発に努力し、結果として、製作した作品が100年後の重要文化財指定を受けることを目指します。衰退の一途を辿っている伝統工芸産業ですが、内装業に「立体的組子細工」を取り入れるという新たなマーケットを発掘出来た事により、この道を目指す若年層の雇用を増やします。
京都市右京区京北在住の方を毎年1~2名、伝統工芸大学校(TASK)の卒業生を毎年1~2名、新たに雇用する予定です。