これからの1000年を紡ぐ企業認定

[社会・地域貢献部門]

2023年度認定

松井酒造株式会社

代表:松井 成樹

松井酒造株式会社

太陽光発電で醸造するサスティナブルな酒造り

醸造用電力の約6割を太陽光発電でまかない、醸造過程で生じる副産物も一切無駄にしない酒造りを心がけています。素材は京都産を中心にして地産地消を第一に考え、廃棄される果実を使ったクラフトジンの開発など、循環型の持続可能なものづくりに取り組んでいます。

次世代を担う人たちへのメッセージ

伝統と革新

2026年に松井酒造は創業300年を迎えます。酒造りを生業としており、所謂、伝統産業に分類される業種です。でも私は極力「伝統」という言葉を使いません。伝統という言葉は時としてマジックワードのように使われてしまうからです。
作業の一つ一つは長い歴史に裏打ちされてきたものですが、技術の革新は日進月歩です。伝統を守ることに固執すると進歩の道から外れてしまいます。所作そのものが伝統を形作る世界であればそれでも良いのでしょうが、ものづくりを生業とする私たちにとって伝統は手段に過ぎません。私たちの目的は、より良いものを生産することにあります。伝統の名のもとに思考停止に陥ってしまうようなことがあってはなりません。歴史的な名作はその時代にあっては常に最先端だったのだろうと私は思います。伝統を疑い、問うことは伝統の破壊ではなく、再解釈だと言えます。

一方で、酒は酔うためのものです。精神に作用します。だから機械がお酒を造ればよいと考えるのも、また間違いであると断言できます。ここに2本のお酒があったとします。一方は蔵人の手で造られたもの。もう一方は機械がオートメーションで造ったもの。どちらの方が美味しいと感じるでしょうか。酒を分析するのは機械ですが、味わうのは感情を持った人間です。どんな風にして造られたのだろう、この酒蔵はどんな歴史を経てきたのだろうと想像するのです。時代が変わろうとも、人の手が入らないと良い製品にはなりません。手造りの素晴らしさはここにあります。造り手の想いは手を通じて製品に宿るのです。
その想いを伝えるために会社は、地域の為になる仕事をしなければなりません。その方が会社の利益に適いますし、また、効果的に伝播するからです。私たちは都市化の波の中で酒造りをできない時期が長くありました。だからこそ、環境都市京都において環境に配慮した企業でありたいと願っています。醸造用電力の約60%に太陽光発電を用いたり、日本酒の副産物である酒粕や廃棄予定の植物原料を再利用したジンを製造したりするのは、その一環です。常に解釈し、問い続けること、そしてそれを伝えることが必要なのだと思っています。

伝統が楽しいものに思えてきたのではないでしょうか。私は今日もワクワクしながら蔵に向かいます。もし興味が湧いたならぜひ、酒蔵見学に来てください。皆様にお会いできるのを楽しみにしています。

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  • 経営理念

    酒は人と人、心と心をつなぐもの

    松井酒造は代々「酒は人と人、心と心をつなぐもの」と考え、一本一本、心を込めて醸造しております。もうすぐ創業から300年を迎えるにあたり、次の100年に向けて以下の経営理念を掲げております。
    ・人と人、心と心がつながる世界の探求
    ・未来の子供たちのために多様性を認め、社会への貢献に努めます。
    ・環境に配慮し、グリーンな活動を積極的に行います。

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  • 社会課題の解決

    廃棄されるような不揃いな果実で作る、サスティナブル・クラフトジン&リキュール

    ものづくりが環境や社会に与える悪影響が深刻化している。製造工程や消費後に廃棄物が発生して、それらが環境に負の影響を及ぼしている。二酸化炭素の排出、水質汚濁や大気汚染といった公害問題の端緒となっており、食品産業をめぐる環境問題は深刻である。
    当社ではこれらを社会課題として捉え、循環型の持続可能なものづくりに取り組んでいる。

    ── どのような取組をしていますか?

    環境への配慮の項目でも述べたが、当社は地域や自然環境にも配慮した持続可能な酒造りを目指している。
    醸造用電力の約6割を太陽光発電により賄い、醸造過程で生じる副産物も一切無駄にしない酒造りをしている。
    京都産の農産物を中心に地域で廃棄されるような不揃いな果実等を使って、新たに蒸留酒製造にも着手し、サスティナブル・クラフトジン&リキュールと名付け、循環型の持続可能なものづくりに取り組んでいる。
    また地産地消を意識し、販路は主に京都府内の酒販店、飲食店やホテル、相国寺・鹿苑寺金閣などの神社仏閣が中心である。主に無濾過生原酒を扱っており、常温で長期間保管することが難しいため、短期間に消費される希少性の高い日本酒として地域に親しまれている。

    ── どのような成果が生まれていますか?

    酒の神様が祀られている松尾大社で開催される『酒-1グランプリ』第4回大会では優勝の栄誉をいただくなど、当社の日本酒は観光客や地元の小売店・飲食店等において高い評価を受けている。
    香りと味のバランスの取れたお酒作りを重視し、果実のような華やかな香りは日本酒のビギナー(若者・外国人)にも人気であり、トリップアドバイザーなどで高評価(4.5点※5点満点)を頂いている。
    環境への負荷を最小限にしたものづくりが実現できており、そのような製造工程を見学したいという国内外の観光客が多数訪れる酒蔵になっている。

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  • 従業員・顧客・取引先への配慮

    アメリカ人蔵人が在籍しています

    当社は製造と販売(営業)担当を分けずに兼務している。日本酒は味だけでなく、酒蔵の思いやストーリー性を含めて楽しむ消費者が増加している中、全従業員が酒造りに携わり醸造に関する知識を高め、当社のこだわりを消費者や取引先へ正確に伝えることで、品質の「見える化」「伝わる化」を実現している。
    また、当社にはアメリカ人蔵人が在籍しており、英語が堪能な社員が多く、英語による酒蔵案内を実施し、テイスティング、各日本酒の特徴説明・販売を行っている。

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  • 地域社会への配慮

    地産地消を第一に考え、地域に根差した酒造りを

    地産地消を第一に考え、主に京都産の「祝」「京の輝き」「五百万石」を仕込みに用いており、地域に根差した酒造りへ取り組んでいる。
    主要顧客は問屋や特約店(地酒専門店)であり、最終的に京都府内の酒販店、飲食店やホテルなどで提供されている。比較的小規模の酒蔵なので生産量が限られており、販売チャネルを限定してきた。相国寺・鹿苑寺金閣などの神社仏閣の御用達のお酒の製造販売している。吉田神社における節分祭では、お神酒を製造する唯一の酒造会社として出店させていただいており、地域に密着した取り組みを多数を行っている。

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  • 環境(未来の社会)への配慮

    太陽光発電を利用し、副産物も無駄にしない

    当社は地域や自然環境にも配慮した持続可能な酒造りを目指している。
    醸造用電力の約6割を太陽光発電により賄い、「太陽の力で醸した酒」として環境にも配慮した日本酒を醸造している。
    醸造過程で生じる副産物も一切無駄にせず、循環型の持続可能なものづくりを意識している。日本酒の醸造過程で副産物として出る酒粕(さけかす)を用いて、酒粕に8%ほど残ったアルコール分を蒸留して作るクラフト・ジンの蒸留も開始して無駄なく原料を活用している。ジンやリキュールに使用する果実等は、京都産の農産物を中心に選定し、地域で廃棄されるような不揃いな農産物を生かす。これをサスティナブル・クラフトジン&リキュールと名付け、循環型の持続可能なものづくりに取り組んでいる。

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