持続可能な働き方実践中-個人も組織も社会もサステナブルな関係ってどんな形だろう-|河村 翔|ポートフォリオ・キャリア実践家

今回コラムを執筆いただいたのは、SILKの認定企業でもあるDari Kを卒業して新しい働き方を実践し始めた、河村 翔さん。フリーランスの働き方自体には馴染みがありますが、複数の関心事や仕事も趣味も掛け合わせたスタイルを目指しているそう。「サステナビリティ(持続可能性)」を軸にしながら、河村さんが挑戦し、社会に投げかけているのはどんなことなのでしょうか?

[目次]

1. サステナブルで自由な働き方の一歩
2. サステナビリティの最適解
3. 拡がりはじめた私の挑戦
4. あなた自身のキャリアのポートフォリオ、考えてみませんか?

1. サステナブルで自由な働き方の一歩

皆様はじめまして。京都を拠点にフリーランスとして活動している河村 翔(かわむら しょう)と申します。

といってもフリーランス1年生。昨年の6月までは京都のクラフトチョコレートメーカー「Dari K」(「これからの1000年を紡ぐ企業認定」第1回認定企業)で直営店舗の統括と広報を担当していました。京都という伝統と革新が融合し、さまざまな面白い人たちが集まるフィールドで、もっとサステナブルで自由な働き方ができないかと思い立ち、活動を始めて6か月。まだまだ仕事のやり方には慣れないですが、なんとなく生活のペースがつかめてきたかなと思うこの頃です。

私のこれまでのキャリアは、大学院卒業後、東京で大手企業勤務⇒海外生活(東南アジアでNPO活動)⇒東日本大震災の被災地で新規事業立ち上げ⇒京都でソーシャルスタートアップ勤務⇒フリーランスとして独立、という経緯になります。独立したというと、よく「起業されたんですか」「すごいですね」と言われることがあります。独立=起業=ハードルがめちゃくちゃ高い、と思われている方もいらっしゃると思います。私の場合は、起業したくて独立したわけでも、社長になりたかったわけでもありません。

皆さん、「ポートフォリオキャリア」という言葉を聞いたことはありますか?ポートフォリオキャリアとは、「複数のスキル」「複数のキャリア」「複数の肩書」を持った自由なワークスタイルのことを指すそうです。私が目指しているのはまさに、限られた時間の中で複数の関心事を仕事や趣味と組み合わせて、生活を、もっというと人生を作り上げることだと思っています。

2. サステナビリティの最適解

最近巷にあふれている「サステナビリティ」という言葉。サステナビリティ=持続可能な社会の実現、ということですが、私はこのサステナブルな社会の実現に関心を持って活動をしています。「サステナビリティ」ということばが広く認知されるようになったのはいいことだと思う一方、現在の言葉の使われ方がとてもぼんやりとしていて、上滑りしているのではないかと感じています。

そもそも私が「サステナビリティ」(この言葉が出てきたのは最近ですが)という概念について考え始めたきっかけは何なのだろうか、とこれまでの人生を振り返ってみると、やはり社会に出て働く中で感じてきた「違和感」なのではないかと思います。仕事や休暇で訪れた海外、そして移住した東日本大震災の被災地で、目にした光景や人々との触れ合いから感じてきたのは、

「今のままでは無理やなあ。地球も、日本や地域社会も、また個人としても、このままのペースで拡大成長を追い求めていくと、そのうち限界が生じて壊れてしまうだろう」

ということ。例えば、インドの首都圏であるデリーの街にあふれる人、人、人……そして、1時間ほど外にいるだけで気分が悪くなってしまいそうな大気汚染のひどさ。

はたまたシンガポールで新規事業を立ち上げていた時、街中にあふれていたのは、あくなき消費意欲をさらに掻き立てる商業施設のきらびやかな装飾でした。さらには、本当に伝えたいブランドメッセージではなく購買させるためだけの広告も。

一方で日本では、東日本大震災と津波の被害で人口が一気に1割以上も減少してしまった東北の港町で、表面化するたくさんの地域課題に向き合いました。そして、そこから始まったコンパクトだけど魅力的なまちづくりに、地域外からたくさんの若者や専門家が集まってくる様子を目の当たりにしました。

その後に起こった、現在のコロナ禍。「バーンアウト」という言葉が話題になっています。私の周りでも、感染による体調不良とは別に、心身のバランスを崩される方が増えています。友人だけでなく、中には事業で大成功を収めている起業家の方や、とても精力的に活動されている方も。地球規模から個人まで、様々なレベルでの歪みが生じていて、これまでとは異なる価値観への転換が必要とされていることを実感しています。

このような経験から、大きな概念として捉えられている「サステナビリティ」という言葉に、一人ひとりが実感を持てるようになるには、さらには実現に向けて行動できるようになるにはどうしたらいいのだろうと、ずっと考えていました。ここで改めて現在の社会の構造を考えてみると、

個人<家族<会社などの組織<地域<国家<地球

となっています。ということは、それぞれの立場にとってのサステナビリティだけを考えるのではなく、関係性の中で最適解を見つけることが求められるはずです。なぜかというと、個人の生活がサステナブル(新しい言葉で言うとWell-being=幸せ)でないと、家族も会社もサステナブルではないし、逆に地球環境がサステナブルでないと、そこで生きている私たちの生活もサステナブルではないからです。

私のミッションは、個人・組織・社会が、それぞれのレベルで、本当の意味でのサステナビリティを実現するためのお手伝いをすること。そう考え、新しい持続可能な働き方を始めたのです。

3. 拡がりはじめた私の挑戦

現在模索しているのは、個人・組織(コミュニティ)・社会に向けて異なるアプローチをしながら、それぞれにインパクトを与えられ、かつ私個人としてもちゃんと持続的な生活が成り立つ仕事のやり方です。また、VUCAと呼ばれる不安定な時代の流れに寄り添いながらも自分は流されない、しなやかな心を持ち続けるためのマインドフルネス(瞑想や「今ここ」に集中するプログラム)も実践中です。

組織に対しては、いくつかの会社と業務委託契約を結んで、人材育成のプログラムや組織へのメンタルヘルスサービスの導入をお手伝いしています。組織や組織で働く人のWell-beingの実現をお手伝いしていると、実はサステナビリティとWell-beingはすごく近い概念だと感じるようになりました。Well-beingを追求していくことでサステナビリティな社会が実現するのではないか、とも思っています。

そして最後に、社会に対しての取組。これはなかなか難しいな、と思っていたところ、ご縁をいただき、産学公連携体として発足した「京都超SDGsコンソーシアム」の事務局のお仕事を開始しました。京都大学、京都市、サステナビリティに積極的に取り組む企業が手を携えて、SDGsの社会実装に取り組んでいくお手伝いをしています。

このようにフリーランスとしての活動を始めたばかりなのですが、慣れないながらも学ぶことがとても多く、充実した毎日を送っています。様々な規模感の持続可能な取組をサポートしていると、私自身も自然とサステナブルでWell-beingなあり方を目指すようになってきました。健康であることや気持ちのよい人間関係、自然の近くで過ごすことが、いかに幸せで、自分にとっても社会にとってもサステナブルであるか。そんなことを日々実感しながら、生活をしています。

4. あなた自身のキャリアのポートフォリオ、考えてみませんか?

はじめましての皆様、また、河村は独立したらしいけど何をやっているんだろう?と思われていた皆様、なんとなく私がどんな働き方をしているか、おわかりいただけたでしょうか?

ただしこのポートフォリオはあくまでも現時点でのものなので、今後どうなっていくかは私自身もわかっていません。個人に対する活動の割合が増えていくかもしれませんし、ここには出てきていない新しい仕事や取組を始めるかもしれません。どんな形になったとしても、自分自身と取り巻く環境のどちらもがサステナブルであるキャリアの組み合わせ、つまりポートフォリオキャリアを、探し続けていきたいと思います。

私のケースはこのような感じですが、人それぞれに、その人に合った働き方・生き方があると思います。withコロナ、afterコロナのこんな時代に、一度立ち止まって、深呼吸をして、ご自身のキャリアのポートフォリオを見直してみてはいかがでしょう。柔軟な働き方ができる時代です。何か新しい発見があるかもしれませんよ。


 

>研究テーマ・研究員リストへ

河村 翔(かわむら しょう)

河村 翔(かわむら しょう)

フリーランス
ポートフォリオ・キャリア実践家

1982年岐阜県生まれ、京都在住5年目。化粧品メーカー⇒東南アジアのNPO⇒東日本大震災の被災地である宮城県牡鹿郡女川町にて新規事業立ち上げ⇒京都のクラフトチョコレートメーカーDari K(ダリケー)で広報・直営店舗統括など担当。
2021年7月よりフリーランスとして活動開始。サステナビリティとWell-beingを軸に複数の組織と協業しながら自分らしい働き方を実践中。