平和の担い手を育むための関係構築|小田 起世和|テラ・ルネッサンス

2021年に設立20周年を迎えたテラ・ルネッサンスは、すべての生命が安心して生活できる社会の実現を目指す認定NPO法人です。第2回「これからの1000年を紡ぐ企業認定」認定企業でもあり、紛争や災害の被害を受けたアジア・アフリカの人々を対象に、自立に向けた支援を行っています。

事務局次長を務める小田さんは、学生の頃から世界平和を目指す活動に参加し、現在は紛争が起こる原因やその解決方法を世に広める事業に力を入れています。今回のコラムでは、インターン制度に焦点を当て、150名を超えるインターン生とどのような関係を育んできたのか、教えていただきました。

過去の取材記事はこちら↓
地球上のすべての生命が安心して生活できる社会へ。「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」[これからの1000年を紡ぐ企業認定]

[目次]

1. その経験が人生になる
2. 平和の担い手を育むための関係構築
3. コロナ禍で変容するインターンの在り方
4. 未来のパートナーに出会うために

1. その経験が人生になる

「平和のために、自分には何ができるだろう?」

被爆地である長崎に生まれた私は、小学生のころから熱心な平和教育を受けて育ってきました。祖母が被爆者だったこともあり、日常的に戦争や原爆について話を聞く機会も多かったと思います。

高校生の頃、友人の誘いを受けて『高校生一万人署名活動』に参加しました。街頭に立って核兵器廃絶のための署名を集め、毎年その署名を国連へ持参し、核兵器廃絶の声を世界に発信するといった活動でした。

「日本に、長崎に生まれた意味とはなんだろう?」「平和のために、自分には何ができるだろう?」そんな好奇心が、活動へ参加したきっかけでした。

結果として、この経験はその後の人生に大きな影響を与えてくれました。

大学卒業から4年後、私は現在所属する認定NPO法人テラ・ルネッサンス(以下、テラルネ)の職員となります。

高校生の頃、街頭で署名を呼びかける筆者

2. 平和の担い手を育むための関係構築

テラルネは、アジアやアフリカで、紛争の被害にあった難民などの方々が「自立した生活」を取り戻すための支援に取り組む国際協力NPOです。

職業訓練として洋裁の技術を学ぶ、ウガンダの元子ども兵

生計向上支援を受けて家庭菜園に励む、カンボジアの女性たち

日本国内では、紛争が発生する原因やその解決方法を伝える啓発活動に取り組み、学校やイベントでの講演を行っています。

海外における支援は社会課題への「対処」であり、日本国内における啓発は「予防」のための活動です。この2つの取組を両立することで、団体のビジョンである「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」を目指しています。

啓発活動における重要な取組のひとつが、今回のテーマである「インターン」です。

テラルネにおけるインターンとは、「平和の担い手を育成する」という目的のもと「研修生」として位置づけられたスタッフを意味します。

インターン生は、主に京都事務局にて啓発事業の運営に関わります。寄付や助成金など活動資金の調達をはじめ、講演・イベントの企画、さらにインターネットを活用した広報など、その活動はさまざまです。

中学校の授業で、地雷の問題について話すインターン生

研修生という位置づけのため、金銭的な報酬はありません。その代わり、私たち職員はインターン生一人ひとりに寄り添い、業務を通じて成長や学びの機会を提供します。ここで重要なのが「適切なフィードバック」です。

インターン生は、最初に目標管理シートを作成します。さらに、毎日の業務と振り返りを実施するノートや月1回の面談などにより、職員との関係性を深めていきます。

インターンの方々にテラルネでの経験について聞くと、「否定することなく受け入れてくれ、個性に注目し強みを伸ばしてくれる」「世界が広がり、将来に対する選択肢が増えた」という言葉をもらいました。

6ヶ月の勤務期間を延長し、1年以上インターンを継続してくれる方が多いことも、テラルネのインターンの特徴です。

3. コロナ禍で変容するインターンの在り方

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、テラルネにも大きな影響がありました。とりわけインターンの活動については、オフィスへの出勤が制限されるなど難しさを伴いました。インターンの学びや成長には、自身の業務遂行だけでなく、職員の働きぶりを隣で見ることや、インターン生同士のコミュニケーションが重要なのです。

一方では、コロナ禍によって社会のデジタル化が進み、あらゆることが効率化されました。そのおかげか、最近は関西以外の地域からインターンに応募してくださる方が増えています。

まだ発展途上ですが、少しずつリモートワークでの就業環境の検討などを進めています。大切にしたい価値観はそのままに、時代の要請に応じてインターンの受け入れ方法も柔軟にアップデートしていきたいと考えています。

コロナ禍以前、一緒に昼食を食べていたときの様子

4. 未来のパートナーに出会うために

2021年、テラルネは団体設立から20年の節目を迎え、これまでに受け入れてきたインターン生は150名を超えました。インターン卒業後の進路はさまざまで、企業をはじめ国内や海外の大学院、青年海外協力隊などそれぞれのフィールドで活躍しています。

過去の私がそうであったように、ここでの経験がインターン一人ひとりの人生に大きな影響を及ぼすだろうという確信があります。重要なことはインターン卒業後の進路そのものではなく、それぞれの場所から「平和を体現する」ことです。

例えば、ある卒業生は中学校の先生になり、勤める学校で平和教育の一環としてテラ・ルネッサンスの講演を企画してくれました。また、別の卒業生はNPOの職員となり、子どもの教育や貧困の解決に取り組んでいます。

「平和」の状態は一つではなく、それぞれの場所から「平和を体現する」ことが大切なのだと考えます。必要なのは、「自分にもできることがある」と自らを信じる“勇気”です。私たち職員は、この“勇気”に働きかけるコミュニケーションを意識し、平和の担い手を育んでいきたいと願っています。啓発活動においてインターンという取組が重要な理由は、テラルネのビジョンを実現するためには、組織の中だけにとどまらない幅広いアプローチが必要だからです。

また、最近ではNPOをはじめ、さまざまな団体からインターンの受け入れについて問い合わせをいただく機会が増えました。

20年におよぶ私たちの経験から貢献できることがあるならば、積極的にそのノウハウを提供していきたいと考えています。


 

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小田 起世和

小田 起世和

認定NPO法人テラ・ルネッサンス 事務局次長・ブランディングデザイン室長・啓発事業部長

2014年よりテラ・ルネッサンスへ入職。「デザインの力を平和のために発揮したい」というミッションのもと、同団体の様々なデザインを手掛ける。さらにファンドレイジングの実践から、チーム体制および資金調達能力の基盤を構築。2021年には同団体の新たな部署として「ブランディングデザイン室」を創設し、組織経営のためのデザインを実践している。