京都に出店した社会的企業が、京都に根ざし、メッセージを伝えていく一つの方法|益田 晴子|IKEUCHI ORGANIC(株)

「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の第1回認定企業である、IKEUCHI ORGANIC株式会社(本社:愛媛県今治市)。他府県から京都に出店された社会的企業の中でも特に積極的に、京都の様々な企業や場とコラボレーションを広げ、ファンのコミュニティを形成されてきました。その展開の豊かさに他の企業様も注目されていて、色々な場面でお名前を耳にします。京都での展開の広げ方について、IKEUCHI ORGANICの益田さんに寄稿いただきました。

[目次]

1. IKEUCHI ORGANICが大切にしていること
2. 同じ考えを持つ地域企業と、大きな集合体になり伝えていく
3. “同じ目的”があるからこそ、コラボする意味が生まれる
4. さいごに

1. IKEUCHI ORGANICが大切にしていること

こんにちは。IKEUCHI ORGANIC ストアマネージャーの益田です。普段は京都ストアでIKEUCHI ORGANICを伝えるお仕事をさせて頂いております。京都ストアは三条富小路上がったところにあり、お陰様でオープンして7年目を迎えさせて頂きました。

IKEUCHI ORGANICは、愛媛県今治市に本社工場があるタオルを始めとしたオーガニックテキスタイルメーカーです。企業理念は「最大限の安心安全、最小限の環境負荷」。1枚のタオルに携わる方々、綿農家さんから始まり、糸にする方、織る職人たち、伝える私たち、そしてタオルを使って下さる皆様、全ての方が笑顔ですか?Happyですか?と問いながらモノを作っている会社です。

IKEUCHI ORGANICのものづくりの根底にあるのは、人々のエネルギーです。作り手である私たち、オーガニックコットンの生産から製造にかかわる仲間たち、そして、多くの生活者としての「人」。人は、笑い、泣き、喜び、怒りなど、感情のエネルギーに満ちています。人々の幸せに突き動かされて、私たちはファブリックをつくります。私たちは、すべての商品、サービスに人格を感じることを大切にします。作り手の汗も、接客の笑顔も。そしてそれらを全て、製品に必ず込めたいと考えています。

使用しているコットンは100%オーガニックコットン。使う電力は100%風力発電。タオルを染めた後の排水は、世界最高水準の浄化施設を備えた染色工場によってクリーンな水に戻し、海に返しています。

そうして完成した最終製品は、テキスタイルの安全性に関する世界基準「エコテックス規格100」の中で最も基準の厳しいクラス1をクリア。「赤ちゃんが口に含んでも安全」だと証明されています。また、2073年には赤ちゃんが食べられるタオルを作るという指針も掲げています。最近はタオル1枚1枚にQRコードをお付けしていて、web上でタオルのトレーサビリティを見られるようになっています。

5周年記念イベント「共感と新しいお金のお話」(2019年9月開催)

2. 同じ考えを持つ地域企業と、大きな集合体になり伝えていく

私たちはこの1年、コロナの影響もあり「ぜひストアにお越しくださいね!」と言いづらい日々を過ごしています。昨年は臨時休業もしました。そんな中でも赤ちゃんは産まれてきてくれるし、毎日使うものだからこそ安心安全なタオルをお届けしたい。まずは単純に、お客様にお会いしたい!そんな思いで、どうやったら必要としてくださるお客様にタオルをお届けできるかを考え、昨年4月にオンラインzoomストアをオープンしました。いまでは、お家時間を豊かにするタオルをたくさんの方にお届けすることができています。

また、コロナの影響があるまでは、1ヶ月に1度、ストアに50名ほどのお客様に集まって頂きトークイベントを開催してきました。「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の認定企業の方々ともコラボして、トークイベントをたくさん開催し、私たちの目指す社会について話をさせて頂いていました。

私たちのような小さな企業は、目指す社会について発信しようとしても、1社だけでメッセージを伝えられる範囲には限りがあります。同じ考えを持つ企業のひとたちと大きな集合体を作ることで、仲間が増えて心強いですし、大きく広がっていくのではないかと考えています。

今はストアに集まって頂くことが出来ないので、オンラインでより多くの方に向けてイベントを開催させて頂いております。昨年の11月には、綿を作ってくれているタンザニアの農家さんと、綿を供給してくれているスイスの会社、そして私たちがいる今治と京都をオンラインで繋ぎ、タンザニアツアーを開催しました。

例年であれば、今治の本社工場にお客様にお越し頂き、オープンハウスという工場見学会も開催していました。こちらも昨年はオンラインで開催したのですが、お客様は大変喜んでくださいました。

タオル1枚を通して、全国のお客様、世界中の方々と同時に繋がる事ができると気付いた貴重な経験でした。タンザニアツアーは下記のURLから見て頂けますので、ぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=L8rNJIEwE2Q

3. “同じ目的”があるからこそ、コラボする意味が生まれる

私たちは今まで、坂ノ途中さんや、GOOD NATURE STATIONさん、銭湯の玉の湯さん、サウナの梅湯さんなど、京都の企業とのコラボイベントも開催してきました。色々な企業さんとコラボをする上で大切にしていることがあります。それは「携わる皆さんに幸せになって欲しい」という気持ち。どんな企業でも「ひとに幸せになって欲しい、幸せを届けたい」と思っていますよね。自分の仕事はそのためにあると信じているはずです。その気持ちの強さが同じであれば、一緒にいろんな取り組みができると思います。だから、私たちは幸せと気持ちよさで、どんな業界の方ともつながることができます。

銭湯の方々は、毎日あたたかいお湯を準備され、皆さんに「気持ち良いなぁ」を届けていらっしゃいます。そういった場所でIKEUCHI ORGANICのタオルを使って頂くことで、さらに「気持ち良いなぁ」を増やして頂くことができます。同じ目的があるからこそ、コラボをする意味が生まれるのだと思います。

コラボが生まれるまでに大切にしているのは、まず、正直に私たちがやりたいことをお伝えすること。目指していることを相手に合わせて決して曲げない。そこはきっちりお話させていただく。同じ持続可能な社会を目指すもの同士が、考え方の違いがあるときもお互いを否定せず、合う部分でご一緒できればいいと思っています。

小さい会社が、同じ考えを持つ企業の人たちと連携をとって一緒に動くことで、世の中が変わっていくといいと思います。大きな集合体です。手を取り合いながら。京都というこぢんまりとしたまちの中にも仲間がたくさんいるような。みんなの得意分野を合わせて、一緒に発信していければ。

4. さいごに

また、私たちはコロナの影響を受け、ストアの意味、あり方を考え続けています。ただ、これだけは決まっているな、と思うことがあります。それは何年経ったとしても世の中から全てのお店は無くならない。それだけは決まっています。そして、京都は世界一のものが集まる場所でもあります。だから京都でやり続ける。

お店という場所を通して何が出来るのか?何をするべきなのか?を常に思い、考えています。タオルは生まれたときから今日の今日まで、毎日使う生活道具。そのタオルを通じ、私たちが沢山の方に幸せになって頂きたいと思い続けることで、お客様もスタッフも常に笑顔でhappyでいられると信じています。

学びや出逢いがある場所。

皆さんの光や希望である場所。

それがこれからのストアにとって一番大切なことだと考えています。そんなストアで、オンライン・オフラインを問わず、同じ思いの企業さんと今後もコラボできれば幸いです。


 

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益田 晴子

益田 晴子

IKEUCHI ORGANIC株式会社

京都市出身。営業部リテールストアマネージャー。京都ストア店長。タオルソムリエNo.1001。短大でテキスタイルサイエンスを学び、繊維メーカーや商社で働いた後IKEUCHI ORGANICに出会い、5年に渡ってアプローチをし続け、入社に至る。接客未経験ながら、初代店長に就任。天性の明るさと、タオルを「この子」と呼ぶタオル愛溢れる対応で、関西はもちろん、全国各地から、これまでに約4,000人ものファンが多く訪れる。京都新聞、書籍「金融排除3」、京都KBS「京Bizプラス」ほか多数メディア出演。