ご縁から生み出す、持続可能な価値づくり|中田 俊|(株)夢びと
「本物と出逢う」「生き方、働き方について考えてみる」「自ら、仲間と一緒にやってみる」をコンセプトに、2018年に四条烏丸に学び場「とびら」を立ち上げた中田さん。税理士でもありながら、農業や飲食店の新しい形の運営にも挑戦するなど、つながりと広がりの中で独自の歩みを重ねている方です。そんな中田さんが生きる上で軸にしてきたこと、試しながら見えてきたことを、思いのままに綴っていただきました。
田んぼ道を散歩しながらオンライン朝礼をして1日が始まる。冬は凛とした空気と日の出の組み合わせがすごくいい。こんな風景を朝に見て感動してたら後の1日はおまけみたいな感覚になってくる。
社会に出るのが嫌で会社員には絶対ならないと言っていた僕が、今はどうしたら地球全体で人も動物も植物もいい感じに共存できるのかを真剣に考えている。一体どこでどう人生が変わったのか。
振り返って考えてみると、旅やユニークな人との出逢いが僕の中にあった想いや行動を引き出してくれたことに気づく。
いろんな人と関わり合いながら、感じたことや響いたことを自分の中に取り込んでいく。その積み重ねで今の自分がある。5年近く不登校を続けて、特に目標もなくただ目先の楽しいことを追いかけながらどこかに虚しさを感じていた。当時の僕が今の僕を見たら、別人だと思うかもしれない。
それくらい人には可能性があるし、いつからでも変われる。
[目次]
1. 違和感を大切に
自分はどんな風に生きていきたいんだろう。教科書には載っていないし、誰かが正解を持っているわけでもない。
高層ビルが立ち並ぶ大都会、大自然に囲まれた田舎、1日1ドル以下で暮らす絶対的貧困と言われる村、地域の人たちが自由に出入りできる公園のような会社。離島で割れたグラスを回収し、新しい作品に蘇らせる島唯一のガラス工房。
僕は旅が大好きで、気の赴くままにいろんな場所に行き、いろんな人に出逢う。
行き先は自分の行きたいと思うところより、誰かに誘われたり話の流れで決まることが多い。
その方が、自分の関心事だけで動くよりも非日常的な出会いがあり、想定外の気づきや違和感を与えてくれる。
自分がどんな風に生きるのか。決めるのは自分だと思っている。
でもそのきっかけは誰かからやってくる事が多い。適当に流されてみるのも時には面白い。
2. 自分のことも、わからないまま進む
大学を中退したので、就職活動というものをしたことがない。自己分析もしたことがない。
40代になった今も自分の強みが何かよくわからない。
わからないことと幸せでないことはイコールではない。
今、染め職人さんと一緒に「世界に1着の服をつくる」ワークショップを毎月開催している。職人歴47年の職人さんと仕事をしていると、自分の知らない世界を感じられる。職人さんと同じ景色を見ることは一生かかってもできないだろうけど、時間を共有する度に分からないことがちょっとだけ分かるようになってくる。その過程が楽しい。
すぐに分かることに深みはない気がする。
3. 意義も自分でつくり出す
学生の頃、働いたことがないのに何で働きたくないって思ってたんだろう?
自分が経験したことがないのに。
今、僕の周りには楽しく生き生きと働いている人がたくさんいる。その人たちと一緒に仕事をしていたら自然と自分もそんな感じになってくるから不思議。
20年前は分からなかったけど、今では仕事が楽しい理由がよく分かる。
理由はたくさんあるので書かないけど、どんな人と時間を過ごすかはとても大事。
人は環境に影響される生き物だとすごく感じる。
ここ数年、僕のいる場所は段々と都会から田舎にシフトしている。
3年前に引っ越してから、少しずつ馴染んできている。
田舎に流れるゆったりした時間が好きだ。
忙しく働くと達成感はあるが、それ以外に何を得ているのだろうか。
人が価値を感じることはそれぞれだが、僕は自分だけでなく
子どもたちも地球の裏側も喜ぶ仕事がしたい。
自分だけ、自分の会社だけ利益が上がることに意義を感じない。
1社だけの決算書に本当に大切なことは現れない。
田舎にシフトし、自然と近づいていくことで見えてきたことがたくさんある。
ここ数年の異常気象が人間の生活に及ぼす影響は計り知れない。
異常気象で農産物ができず、収入がなくなっても受け入れるしかない農家さんの現実があったりする。食べ物が作れなくなった時に困るのは都会にいる人も同じだ。全て繋がっている。
対岸の火事では済まないのに、都会にいると自分事になりにくい。
効率や便利を求めて、商品やサービスを消費するだけでいていいんだろうか。街中でオフィスワークをしながらそんな事を考えていたら、段々とつくり手に近づいていた。
食べる物、着る服を自分でつくる。自分が作れないものは、顔の見える近い人がつくったもので生活する。その心地よさは、誰がつくったか、どういう流れでここに届いているかわからない商品をただお金と交換していた頃には、得られなかった感覚。
つくり手のこだわりや苦労を知ったうえで目の前に現れる商品には、ありがたみしか生まれない。たくさん作れたら、みんなで分かち合う関係性も心地いい。
コロナで問題になったトイレットペーパーの買い占めとは、対極の世界観。
人は1人では生きていけない。
困った時に安心できるのは、人と人との関係性に包まれた社会じゃないだろうか。
そういう関係性はすぐにできない。
だから僕はカレンダーをスカスカにしている。
大切なことにちゃんと時間を使うために。