まちづくりアドバイザーが考える「京都での事業コトハジメ」3つのヒント|木村 響子
はじめまして。京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)でイノベーション・コーディネーターをしています木村響子です。私は、京都で育ち、学び、暮らし、働いてはや数年になります。かつては株式会社の社長や大学職員として、現在は、公務員として、京都を中心に、地域で活動する人たちの人つなぎをしています。
ここでは、本業であるまちづくりアドバイザーの仕事を通じて見えてきた、京都での事業のはじめ方のコツを紹介したいと思います。都会っぽいキラキラした地域性でも、田舎っぽいコテコテの人間関係でもない、「京都らしい」まちとの関わり方を探求しています。
このコラムは、こんな方におススメ
・京都で新たに事業をはじめたい方
・京都のまちづくりに興味のある方
・京都に何らかの形で関わりたいと思っている方
改めて、自己紹介。
木村 響子
SILKイノベーション・コーディネーター/京都市まちづくりアドバイザー
大学在学中に出会った京都のおもしろい大人たちに後押しされ、新卒でまちづくり会社を設立。商店街でのコミュニティスペースづくり、行政委託事業の事務局運営、シェアハウスの立ち上げなどに関わる。大学職員として、学生の地域活動を通じた学びの支援に関わった後、京都市まちづくりアドバイザーとして、区役所・支所におけるまちづくり事業への助言、区民のまちづくり活動支援に従事。多様な人たちの縁つなぎ・場づくりを通じて、地域や社会での関係性が豊かになることを願っている。詳細はこちら
[目次]
京都で活動/事業をはじめる際の3つのヒント
その1) 挨拶:自分も相手もまるっと感じる。
その2) 提案:地域やまちへのリスペクトを示す。
その3) 紹介:小さな信頼や出会いを積み重ねていく。
さいごに
その1) 挨拶:自分も相手もまるっと感じる。
まず、ご挨拶からはじめる。ここをすっとばすといいことはない、と断言できます。(ぴし!)では、挨拶って具体的に何をするのか。ポイントを紐解いてみます。
・話すと聞くは、半分半分。
・タイミングを見計らって、雑談もする。
「挨拶=友達作り」と捉えると分かりやすいかもしれません。まずは、相手のことを知り、自分のことを知ってもらうことから始まります。その時、意識するのが、相手のことを受け止めること。受け止めた上で、自分のことを話してください。例えば、どこに住んでいて、何をしていて、何が好きか、始めようとする活動/事業の文脈だけでない、自分自身と相手のお互いのことを話し合えるまでになると素敵です。
いきなり自分の話は……という方は、ちょっとした雑談から始めてみるといいかも。そのためには、相手が暇そうな時間を狙って行くのがおすすめです。直接、まちに関わる人に挨拶しなくても、近くの神社に手を合わせる、近くの銭湯のお湯にまず浸かってみるなども、まちへの挨拶の一種だと思います。
よくやってしまう、もったいない関わり方は、
「いきなり一方的に事業提案」をすること。
小さい字で書いてある分厚い資料を持って行って、一方的に事業プレゼンをする。「あとは資料を読んどいてくださいね。」と言って立ち去る。これでは、提案した側の自己満足になってしまいます。相手の話を聞きながら、自分の話も織り込み、仲良くなる努力をしてみてください。
その2) 提案:地域やまちへのリスペクトを示す。
挨拶の後は、いよいよ事業の提案に移ります。
では、提案ってどんな風にするのか、ちょっとしたポイントをお伝えします。
・なぜ、ここで事業をしたいのかを話す。
・地域や「まち」に絡めて、事業の背景を伝える。
京都の人は、プライドが高いという言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。暮らしてみるとそうじゃないよという人もいるかもしれませんが、まちに敬意を払う姿勢は、持っているに越したことはないです。
では、「まち」って何を指すのか。自分が事業を始めようとしているその場所をイメージしてみてください。前提として、京都市は11行政区に分けられており、行政区内は、学区と言われる町内会・自治会を基盤とした地域コミュニティがあって、まちが成り立っています。
(例えばこれは、京都市西京区の地域コミュニティの例です)
出典:京都市学区(元学区)別すまいの子育て環境検索サイト
提案をする際に、「なぜ京都で、なぜこの地域(行政区)で、なぜこのまち(元学区)で」というように、自分が事業を始めようとしている理由やきっかけを、地域やまちにリスペクトを示しながら語れると、地域の人があなたの応援団になってくれるかもしれません。
よくやってしまう、もったいない関わり方は、
提案する際に「地域の課題解決」を前面に掲げてしまうこと。
いきなりマイナスの言葉から入ると、抵抗が生まれます。地域やまちにどんな課題があるのか、住民やその地域で活動している人も薄々気づいていることが多いです。課題から入るよりは、地域の魅力(あなたが惹かれたポイント)や率直な地域の印象から話し始めて、そこから課題の話に持っていくことをおススメします。
その3) 紹介:小さな信頼や出会いを積み重ねていく。
その1、2のように、挨拶→提案をしていると、情報を提供してもらったり、人を紹介されたりすることが増えてきます。紹介されやすくなる、ちょっとしたポイントを書きます。
・謙虚さ、素直さ、熱量を持ち、直接会える機会を見計らう。
・仕事ではない場やコミュニティも持っておく。
紹介される=応援してもらうと捉えてみてください。いかに応援してもらうかを考えたときに、「謙虚さ、素直さ、熱量」を持っていると応援してもらいやすいかもしれません。メールやメッセージのやり取りだけでも、紹介してもらうことは可能ですが、本当に応援してもらおうと思ったら、人間同士、直接会うのがいいですね~。(コロナ禍では、なかなか難しくもどかしいですが。)
京都では、物理的には、道が碁盤の目になっていて、自転車で移動がしやすかったり、社会的には、SNSなどでつながれば、共通の友人がいないことの方が珍しかったり、立地的にも、人とまちや人と人との距離が近いので、暮らしと仕事や活動が一体になっている感覚が強いです。
歩いていると思いがけないところで知り合いに会ったり、趣味や社交の場で出会ってから、事業や活動につながって、仕事がやりやすくなることが本当にあるんですね。暮らし・趣味・偶然の出会いなど、いろんなシチュエーションでの人との縁が、長期的な事業につながるはずです。
よくやってしまう、もったいない関わり方は、
「一足飛びに、事業協力や人の紹介を求める」こと。
京都では、実績と同じくらい信頼値を見られます。紹介する側は、相手のことを信頼できるか、自分の信頼を落とさないかという視点も持っています。いくら利益があがりそうでも、社会にインパクトがあっても、誠実でなかったり、不義理をしそうな人は、なるべく紹介したくないもの。挨拶と同じで、ここぞというタイミングを待って、紹介を急ぎすぎないこともおススメします。
さいごに
(1)挨拶→(2)提案→(3)紹介
この繰り返しと、たまに挟まるふとした出会いで、まちになじんでいく(しゅんでいく)んだと思います。今回お話したことは、まちになじんでいくファーストステップだけど、とても大事なことだと思っていますし、私も実践していきたいです。
まず土地に行く、人と出会う。一緒の空気を吸う。出されたお茶に口をつける。お菓子も食べる。飲みながら食べながら、今いる土地や人のことを知る努力をする。お互いを知ったうえで、活動や事業の話をする。盛り上がる時もふーんで終わるときもある。そして、またねといって帰る。そんなある日、川沿いを散歩していたら、その人と再会して、「最近どう?」という話になり、なんだか事業を一緒にやることになる。京都という土地、人の気質、文化が入り混じってか、こういうやりとりが、ほんまにあるんです。
最後に、ここで、書いたことは、京都だから特別なわけではなく、どこの地域でも通じるのかもしれないなと思ってきました。この研究コラムをネタに、わいわいがやがや、これを読んでくれているあなたの地域での事業コトハジメについて、お話できると嬉しいです。よろしくどうぞ!