京都から広げる、アフリカチームづくり │ オープンダイアログ レポート

「オープンダイアログ」の魅力は、集まってくださった参加者の方たちと一緒に、何もないところから場を創っていけること。言い方を変えれば、始まるまでどう展開するか全くわからないイベントです。そんな実験的な場に相談者として飛び込んできてくださったのが、株式会社AFURIKA DOGS 代表取締役 中須 俊治さん。最後に中須さんがされた決意表明には、私たちも驚きました!

この日は「京都から広げる、アフリカチームづくり」というテーマのもとに、SILKコーディネーターを含め16名がオンラインで集まりました。中には、東京や静岡など遠方からご参加いただいた方も。中須さんと話すのは1年ぶりだという方やはじめましての方も多かったのですが、和やかな空気でスタートしました。

まずは、中須さんから皆さんに相談したいことをお話しいただきます。中須さんは2018年に株式会社AFURIKA DOGSを設立。トーゴにも日本人初の現地法人を設立し、3週間前には常設店舗を京都・西陣にオープンされました。

「日本人がいない国に行きたかったんです。隣のガーナには日本人が数百人いたんですけど、トーゴには2人しかいませんでした」

「新卒で入社した京都信用金庫の仕事で、現在のビジネスパートナーである染め職人 西田 清さんに出会いました。伝統工芸の職人さんの現場には数字では表せない価値が多すぎて、金融機関の審査では適正にはかることはできないと思いました」

「去年一緒にトーゴに行った大学生が、なんと卒業後に西田さんに弟子入りしたんです。伝統産業を続けていくためには、ブランディングや商品開発も必要ですが、後継者ができることが何より大事です。すごく大きな出来事でした。こういうことは、机の上で勉強していても絶対に生まれません。現場で人と出会うことの大切さを実感しました」

「多くの人は、ボランティアも募金もしないんですよね。正しいことを正しく伝えるのは難しいということに、気付きました。正しさよりも楽しさが必要なんじゃないかって」

画面越しに伝わってくる情熱を受けて、参加者の皆さんが、何かできることはないかと真剣に考えているのを感じました。トーゴでのツアー旅行「一着の服を旅してつくる」の構想や、大手のwebサービスでしか情報が得られない画一的な就職活動への疑問など、興味関心の向く方へと活動範囲をぐいぐい広げていく中須さん。そのエネルギーは、いったいどこから湧いてくるのでしょうか。

「アフリカチームを作って何をしようかとずっと考えているけれど、どんどんイメージが変化しています。詰まるところ、皆でおもしろいことがしたいっていうだけなんですけどね。今の社会では、ハンディキャップを持っているとか、女性であるというだけで、機会が著しく奪われます。幸せじゃなさそうな人が、たくさんいるように見える。僕には0歳の息子がいます。病気が見つかって、目が見えなくなるとお医者さんに言われました。息子のためにも、色んな人の選択肢を広げられる場を作っていきたいです」

中須さんは、決して簡単ではない問題に正面から向き合いながらも、常に前向きな姿勢で進んでいかれます。悲しみも苦しみも受け止めた上でのポジティブな言葉と行動を見て、たくさんの人や企業が彼を応援しようと行動を起こしています。

最後に投げかけられた問いは、「どんなチームつくったらおもろい?」。なんともざっくりした、ファンキーなテーマをいただきました。3グループに分かれて、中須さんに贈るアイディアやアドバイスを話し合います。

その一部をご紹介しましょう。

● 一方的に受け取るのではなく、自分も参加できる「楽しさ」を作っていけると良い。
● アフリカのドラムと京都の和太鼓とか、音楽でのコラボレーションも楽しそう!
● 中須さんが思いついたことを実現するためのチームを作っては?
● チームというよりヴィレッジ(村)みたいなイメージはどうか?
● 京都に住む外国人の方に、伝統産業の技術を継承する取り組みをぜひ。
● 京都は青年海外協力隊のコミュニティがあるから、まずは一緒に飲み会を開こう。
● 中須さんが色んな人と対談やケンカっぽい議論をするイベントをしてほしい。
● 中須さんの明るくポジティブな発信の仕方で、トーゴの実情をもっと伝えてほしい。

参加者から様々なアイディアが贈られた後、中須さんが「明日はちょっと難しいのですが、明々後日くらいからやってみようと思います!」「これは……そうですね来週くらいにやってみます!」と笑顔で返答してくれました。とにかく、決断と行動が早いのです。こうして、この日また全国に中須さんを応援する人が増えました。AFURIKA DOGSに実習に来ていた高校生にも参加していただき、社会への率直な希望を語り合う時間も。

中須さんの問いに対して、皆で知恵を絞った90分間。SILKにとっても実験的な試みでしたが、中須さんと参加いただいた皆さんとの対話により、次のアクションにつながる創発の場となりました。オープンダイアログは今後も毎月続けていきたいと思っていますので、皆で考えたい問いをお持ちの方は、ぜひお声がけください!

AFURIKA DOGS
https://afurikadogs.com/

文:柴田 明(SILK)