インタビュー企画「ピンチをチャンスに!」【第10回】大槻 彦吾さん | 株式会社ヒューマンフォーラム
第10回は、株式会社ヒューマンフォーラムの大槻 彦吾さんです。
mumokutekiというブランド名をご存知の方も多いかと思います。他にも、長年、若者のカルチャーを牽引し続けるSPINNSというブランドを展開されているアパレル企業です。この会社には、人の多様さを喜び合い、変化・変容することを歓迎しあう、独特の企業文化があります。また、外部の人材や企業に対してオープンな姿勢があり、非常に高いコミュニケーションスキルを持たれていることも特徴的です。mumokutekiはオープンイノベーションを通じて、自社だけでなく、様々な地域企業にとっても新しい事業の機会を生み出してきました。
おもしろい社員さんがいきいきと働いているヒューマンフォーラムさん。人材育成部の大槻さんに、コロナ禍の影響を受けて会社に起こった変化をお伺いしました。
(大槻さんは、A-KIND塾でもインタビューを受けておられます。記事はこちら)
Q: どんな事業をされているか、簡単に教えてください。
大槻: 株式会社ヒューマンフォーラムは「素晴らしき仲間の集い」を経営理念に置き、「SPINNS」、「mumokuteki」、「gallerie」、「進化型古着屋森」といったアパレルの小売店を全国に展開すると共に、オーガニックカフェ「mumokuteki CAFE」、オーガニックスーパー「&MARKET」も手がけております。また農業生産法人 株式会社塞翁が馬をグループ会社として運営し、「mumokuteki farm」や「SPINNS farm」など様々な切り口で農業を営んでいます。
Q: 新型コロナウイルス感染症による影響はありますか?
大槻: 小売業、飲食業がメインのビジネスなので、ニュース等でも報じられている通り、底知れない影響を受けています。コロナウイルス感染症の影響により、既存の小売業ビジネスからの脱却に舵を切る覚悟を決めました。
Q: 影響を受けて新たにチャレンジしたことと、その中で見えてきた課題や解決策を教えてください。
大槻: 新たにチャレンジしたことは、本業を守り抜くための施策への集中と、“重要だが緊急ではない”事案への着手です。例えば、社内幹部や社員の数名が次々とYouTuberになったり、発信ツール「note」で記事を書き始めたり、描いた絵をinstagramに投稿してコンテストで優秀賞をとったり、それぞれの得意なことや関心のあることを一斉に発信し始めました。特に、動画の制作は盛り上がりがすごいです。イベントや新規事業の広報のために自分たちで動画を編集し、ドローン撮影の資格を取りに行ったり、映画監督さんを呼んできたりしながら、勝手にスキルアップしていきました。会長の出路が率先して始めたことをきっかけに、皆が後に続いて取り組んでいったように思います。
mumokutekiでは、BtoB事業が10月から実験的にスタートします。これは、幹部だけで決めたのではなく、全部門スタッフが集まり、自分たちの特異性や企業の方々にお手伝いしたいことを出し合って生まれた事業です。社員一人ひとりの意見から事業の構築ができればという思いがありました。ストーリーによる商品プロデュースやコミュニティマーケティングなどに特化したビジネス伴走支援に取り組んでいきます。
他の社員も、新たなビジネスモデルを開発し、実装に向けてステークホルダーと対話を進めています。ティーン向けアパレルブランド「SPINNS」では、定時制高校サポート校「SPINNS高等学院」を立ち上げ、9月から募集がスタートしています。この企画は、社外の方との出会いから立ち上がりました。「高校生の時に色々な仕事の考え方や捉え方を知り、活き活きした大人と出会えば、夢はもっと多様になるはずだ」という思いから、急ピッチで開校の準備を進めてきました。
「SPINNS高等学院」を始めたことによって、「SPINNS」というブランドはティーンに向けて服を売っているだけでなく、生き方を提案しているのだと、改めて気付くことができました。小売業だった私たちの会社から教育事業が生まれたのですが、決してブランドのコンセプトとずれたことはしていません。興味深いのは、会社の戦略とは別に、社員の一個人の行動として色々な企画が同時多発的に動き出したことです。
チャレンジする中で見えてきた課題は、重要だが緊急性のない次のステップへのチャレンジを後回しにしてきたということでした。コロナ禍においては、多くの社員の意識が変わり、チャレンジへのハードルが下がりました。課題を乗り越えられたのは、常日頃から企業も個人も「我々は何者なのか?」ということを、情報としても対話としても共有し、考え続けてきたからだと思います。これがあったおかげで、上からの号令を待つことなく、誰からともなく次に向かう決断と推進力が表面化していったのだと実感しています。
とはいえ、うまく行っていることばかりではなく、問題は山積みです。組織も少人数ではないので、承認に時間がかかる側面があったり、社内にクリエイティブ系の人材が少なくて人手が足りなかったり。今まで軽視していた部分から、改善点が山のように現れてきました。走りながら考え、考えながら走り続けているところです。
Q: ピンチをチャンスに変えるために心掛けていることは何ですか?
大槻: ヒューマンフォーラムには、「リミットを外して考える」や「どんなことをするときも楽しむ」という企業理念があります。会議でも仕事の現場でも、ルーティンワークになりがちなことに対して「もっと出来ることがあるのでは?」「もっと面白くするには?」と考え、実行すること。そして、失敗を繰り返すことで、チャレンジのハードルを下げることが大切だと感じます。企業理念の価値観にある「元気に明るくちょっとアホ」が象徴するような、伸びやかな姿勢、しなやかな姿勢を、今は特に大事にしています。
Q: 最後に一言!(これから行いたいチャレンジ、読者へのメッセージ等)
大槻: コロナ禍を迎え、新たな時代に入りました。「満員電車は嫌だな」と思っていたけど行動には移せなかった人々の意識が、「自宅でも仕事できるから満員電車なんて乗らなくてよくね?」という方向に変わってきています。同時に企業でも、慣例化され停止されていた思考が動き出し、「東京の都心にあるオフィスって、家賃高いし無駄じゃね?」というような発想が生まれています。
先ほどご紹介した「元気に明るくちょっとアホ」は、常識を取っ払い、嫌なものは嫌だと素直に捉え、率直に言える姿勢です。違うと思ったらすぐ改める、素直で柔軟で斬新な発想によって、個人も企業も成長してきたと思います。個人も、またその総和である法人も、社会に存在する意義があります。私たちは下手くそかもしれませんが、そのために踏み出したいと考えますし、踏み出す人々の応援がしたい。
その一歩目は、本当に「ちょっとアホ」な、とるにも足らない事のように見えるかもしれません。でも、だからこそ私たちは全力で応援したい。私たちがコロナ禍を契機にYouTuberになり、オンライン飲み会を勝手にはじめ出した「衝動」は、皆さんと共にあるんです。
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