The True Cost(ザ・トゥルー・コスト)から考える私たちの暮らし
京都市ごみ減量推進会議職員の堀様より、MAKING OER MARKET KYOTO 2016 期間中のイベント「DEMOCRATIC MARKET”僕らの市場経済”」に上映された映画「TRUE COST」のコラムを寄稿いただきました。
The True Cost(ザ・トゥルー・コスト)を観ました。
「ファストファッション 真の代償」と副題にあるように、ファストファッションと呼ばれる衣料が、なぜ安いか、その裏に何があるか、原料生産や縫製の現場を取材した映画です。
東京はじめ他都市では公開中ですので、すでに観られた方もあると思います。2016年1月現在、京都市内では未公開でしたが、1月30日(土)「MAKING OUR MARKET KYOTO 2016」の期間中のイベント「DEMOCRATIC MARKET”僕らの市場経済”」にて上映されました。これに参加し観ることができました。
ザ・トゥルー・コスト公式WEB
安いことの裏側
日本円で表現しますが、数百円で売られるシャツ、千円程度のジーンズ、数千円のスーツなど、いつしか珍しくなくなりました。ですが、まともに考えたらあり得ない値段です。それだけ安い衣料を提供するため、海の彼方で何が起こっているか、知る必要があります。最近起きた長距離バスの事故のように、「安いものには、理由がある」のです。「企業努力」「合理化」の言葉の裏で、誰かの健康や安全まで押しつぶし、そのひずみがどんどん大きくなり、システムされています。ファストファッションが広がるなかで、どのような悲劇が起きているか、遠い世界のことに限りません。
映画の内容を細かく紹介できませんが、紹介された報告のうち、気になったケースを1件だけ紹介します。それは「古着による海外支援」。アメリカで大量に集められた古着が、中米のある国に「善意の寄付」として持ち込まれます。とてつもない量で、その国の人たちの需要を上回っています。「支援」という名のもと、実態は「衣料ごみの輸出」だと感じました。
それだけではありません。その国にもともとあった産業も押しつぶしています。元スーツの仕立て職人が証言していました。「昔はスーツの仕立ては、立派な仕事だった。何人もが私のところに縫製や仕立てを習いにきた。今じゃ誰もこない。仕事もなくなった。」と。彼は今、元よりはるかに安い賃金で、外国の縫製工場で働いているといいます。「先進国からみたら安い賃金であっても、途上国に仕事をつくり出しているのは良いことだ」と言う人がいます。希望のない低賃金での労働は、形を変えた新たな奴隷制に思えました。
多くの衣料を消費する日本
映画から離れますが、私たちの国では毎年どれだけの衣料を消費しているのでしょう。京都市ごみ減量推進会議は、2015年10月京エコロジーセンターと協働で「布フェス」と題した、布や衣料をテーマにしたイベントを実施しました。その際にスタッフ(齋藤)がまとめた記事があります。それによると、1990年度は年間約20億点の衣料が国内に供給されていました。それが24年後の2014年度は約38.9億点へと、四半世紀で約2倍に増えました。1990年といえばバブル景気に湧いていた頃、その頃と比べても2倍に増えているのです(詳しくは、こちら→ごみにまつわるこの数字なぁに?)
この四半世紀に、ファストファッションが日本全国津々浦々に浸透しました。その一方、国内の繊維産業は衰退の一途をたどりました。
衣料ごみはどうでしょうか。
少し前のデータですが、2009年度の国内の衣料供給量は、重量で約111.2.万トン。うち国内製造は、約7万トン。ほとんどが海外からの輸入です。この111.2.万トンのほとんどが家庭向けに供給され(約103.4万トン)、事業所向けには約7.8万トンが供給されました。
そして、家庭から出る衣料ごみは、約65.2万トン。全体の6割近く。1年で65万トンもの衣料品が、ごみとして処分されました。
その他、リユースショップやバザーなどに出され再使用されたものが、約13.9万トン。集団回収などでリサイクルされたものが、約13.6万トン。可燃ごみや不燃ごみから抜き出されリサイクルされたものが、約1.7万トン。リユース・リサイクルされたものを合わせて約30万トンになりますが、ごみとなった衣料はその倍以上。前項のように、ファストファッションの浸透は、リユースやリサイクルが追いつかないほど、衣料の消費を急増させ、ごみとなる衣料も増やしました。
※上記の数字の出典「繊維製品3R関連調査事業報告書(独立行政法人中小企業基盤整備機構、2011)」より
ならばどうすればいい
手軽にたくさん買って、手軽に捨てる、そんな暮らしぶりが数字によくあらわれています。「捨てるのは気分悪いし、国外への支援を謳うリサイクル回収に出す」のも、本当に現地の役に立っているのか考えもの。
ならばどうすればいいのか。映画のなかでは、20年前に日本で誕生したピープル・ツリーが紹介されていました。フェアトレードを広め、現地の生産者の利益にもつながり、自分たちも欲しいものを得る、そんな活動が少しずつ広がっていることが紹介されました。
ただ、生活に必要なものすべてをフェアトレードで得るのは、結構難しいものがあります(特に私のような貧乏人には)。それだけにどうすればいいのか、別の機会に書くことにします。
京都では、京都みなみ会館が3月7日以降の上映を予定しています。機会があれば、ぜひご覧ください。