やりたいことを実現できるまちづくり ─ アイデア具現化ワークショップ ─

2019年6月、SILKの新たなプロジェクト「未来の西京まち結び〜みらまち結び〜」がスタートしました。【「やりたいことを実現している人」が京都でイチバン多い区に!】というテーマを掲げ、京都市西京区のまちづくりに取り組みます。キックオフ研修として、支援に関わるメンバーが集結し、アイデアを具現化するためのワークショップを行いました。

ベッドタウンから、住民の力を活かして発展する街へ

近畿地方の遅い梅雨入りが発表された翌日、6月27日木曜日。雨が降りしきる中、西京区役所、京都市まちづくりアドバイザー、阪急電鉄、京都信用金庫、京都市桂イノベーションセンターなど、さまざまな立場でまちづくりに取り組む人たちが西京区の一角へと集まってきました。この日の会場は、カウンターを廃止した新しい店舗作りが注目されている、京都信用金庫 東桂支店です。

一般的な接客カウンターを設置せず、ソファやテーブルセットで接客を行うという先進的な店舗設計。電源が使えるコワーキングスペースや本棚もあり、「ちょっとゆっくりしていこうかな」と思わせてくれる空間です。2階に上がり、大きなガラス窓に囲まれた開放的なコミュニティルームにお邪魔します。

京都市中心部や大阪へ働きに出る住民が多く、ベッドタウンとしての機能が強い西京区。今回のプロジェクトは、西京区に住んでいる人の力をまちの中で活かしたい、地域の中にもっと仕事を生み出したい、という思いから始まりました。まちの人たちのやりたいことを実現するために、まずは支援をする自分たちがアイデアを生み出す力、アイデアを実現する力を身につけよう。そんな期待と緊張の中、4時間にわたるワークショップが始まります。

一人の天才に頼らず、誰もがアイデアを出せるチームになろう

この日ワークショップを進行してくれるのは、一般財団法人ひらめき財団 理事 高本昌宏さん。「知名度のなかったiPodを家電量販店以外の場所でどうやって売るか?」「鍵付きDVDを商品化するなら?」などの難題に、高本さんがどんなアイデアで挑んできたのか。たびたび笑いを交えながらお話いただき、今日の3つの目的を参加者のみなさんと共有します。

・アイデアを出す楽しさに出会う
・仲間の素晴らしいアイデアに出会う
・じぶんのやりたいアイデアに出会う&見えるきっかけづくり

「脳を活性化するために立ちましょう!」という声かけと共に、いよいよチームでの取り組みに入っていきます。まずはサイコロを使った自己紹介。

自己紹介サイコロ

3つのサイコロの目にしたがって話をしていくと、ふだん自己紹介では出てこないような話題がどんどん飛び出し、皆さんの表情が一気にやわらかくなりました。

高本: 今までに自己紹介で話したことのないネタを話した人?たくさんいますね。今、新しい自己紹介のアイデアが出たわけです。

この時、アイデアという一見ふわっとした言葉が、皆さんの手元にぐっと引き寄せられた感覚がありました。「抽象度」「分解」「記憶」など、さまざまな角度からアイデアが生まれるプロセスを教えてもらい、次は具体的な課題にアイデアで挑んでいきます。

ここで、「すること × 誰のための × モノやコト」を示す新たなサイコロが登場します。「国内旅行 × が出来ない人向けの × コミュニティ」など、サイコロをふって出たお題に対しアイデアを出しまくるという実践ワーク。実現可能か、成功するかはいったん考えず、どんどんアイデアを出そう!という挑戦です。

サイコロ

約15分間で、一番多かったチームでは47個のアイデアが出ました!どのチームからも10個以上のアイデアが出て、8チームの合計数はなんと218個に。会場に大きな拍手が起こります。

高本: これだけたくさんのアイデアを、1人で出すのは難しいですよね。今日は皆さん、めっちゃいい笑顔で取り組んでくれていました。新しいアイデアを生み出すには、仲間がいることがすごく大事です。1人でやろうとすると失敗することが多い。仲間を大切に、仲間と一緒にアイデアを具現化しましょう。

アイデアとは、人の欲求を満たすモノやコト。

続いては、欲求カードという19の欲求が描かれたカードを使って、アイデアとの距離を縮めていきます。「アイデアとは、人の欲求を満たすモノやコト」と高本さんは言います。

高本: 多くの人が、この『欲求』をイメージせずにアイデアを考えてしまいます。誰のどんな欲求を満たすためのアイデアなのかが明確になると、するべきことが具体的に見えてきます。

欲求カード

まずは、カードを使って自分の欲求を見える化します。19個の欲求を人生で大切だと思う順番に並べ、ベスト3、ワースト3の理由をチーム内でシェアします。4人全員が「交流」をベスト3に選んだチームもあれば、見事にバラバラだったチームも。西京区というまちの中にも、多種多様な欲求を持つ人が住んでいることが想像できます。さて、この欲求をどのようにアイデアに落とし込んでいくのでしょうか。

10年後の西京区がどうなっているか?そのためにあなたがやりたいことは?

ここからは、どうしたら西京区がより良くなるのか、「未来の西京まち結び〜みらまち結び〜」事業で自分がやってみたいことを考えていきます。そこで大切なのが、先ほどサイコロとカードで体験した「欲求」と「すること × 誰のための × モノやコト」を組み合わせること。どの欲求を満たしたいから、また何を回避したいのかを考え、そこから「したいこと」「したくないこと」「誰のための?」というアイデアのベースを考えていきましょう。

ここでも高本さんが、ユニークな事例をたくさん教えてくれました。サントリーの「宅弁」や伏見区の「田んぼラグビー」など、既に世に出ているアイデアから、それぞれがどんな考えで生まれたのかを学びます。おもしろかったのが、同じ「すること × 誰のための × モノやコト」に違う「欲求」を組み合わせると、出てくるアイデアが変わるということ。今日集まった皆さんからは、どんな欲求、どんなアイデアが出てくるのでしょうか。

アイデアシート

断片的ではありますが、この日出たアイデアをご紹介します。

・隠れているアイデアや財産を集めてつなげる西京区いきいきポータルサイトを立ち上げたい
・みんながリフレッシュしに来られる農園パークを作りたい
・強くて稼げるチームが移住してくるe-sportsの聖地にしたい
・めっちゃイケてるコワーキングスペースなどを作って移住者を増やし、多様性に寛容な町にしたい
・筍を掘ってその場で料理人が調理し、西京区の米と一緒に食べる1日旅を企画したい
・無人配送運転で嵐山の買物難民を救いたい
・来場者と出店者が交流できるマルシェを開催したい
・西京エリアのほとんどの人が参加する、多世代が楽しめてインスタ映えする祭りを作りたい
・失敗体験で学び合う失敗Barを開催したい

この他にもたくさんのアイデアが生まれ、中には具体的に「ここを助けてほしい」「こういうスキルが今足りていない」という課題が見えているものも。高本さんからは「JUST DO ITでお願いします!」「機能面がすごく大事ですね。これはみんなで考えましょう」と力強い声かけをいただきました。

高本: ここから実現に向けて動いていくと、アイデアがどんどん上書きされていきます。かなり変わると思います。でも大元にある思いはできるだけ変えたくないですよね。そのためにも、3つめの「何を避けたいか」というところを、どうポジティブに持っていくかがポイントになってきます。楽しみながら、仲間と一緒にわいわいがやがや取り組んでください!今日のチームメンバーとのつながりを大切に、ぜひ今後も交流してもらえたらと思います。

[ 参加したSILKメンバーの感想 ]

支援者同士、人と人とのつながりが生まれました。目の前の相手が実現したいことを知り、それに対して自分が知っている情報を共有したり、それに対する反応で気づかせてもらうことがあったり。話題は尽きることがなく、その場にいた全員が新たな出会いを楽しんでいるように見えました。仕事の打合せでは出てこないような個人の関心事など、雑談もワイワイと盛り上がり、お互いの人となりを知れたので、今後の連携がグッとしやすい状況になりました。ここから何がどのようなプロジェクトが生まれるのか、楽しみです。(川勝)

みんなが「自分ごと」として西京区にいろんな形で関わっていけることを共有でき、懇親会も盛り上がりました。これからもどんどん輪が拡がっていく予感がしました!楽しみです。(山中)

あっという間に4時間が過ぎ、皆さんの笑顔と活気にあふれたワークショップが終了しました。こうして、無事にはじめの第一歩を踏み出すことができた「未来の西京まち結び〜みらまち結び〜」プロジェクト。8月から公開イベントを実施いたします。SILKwebサイトでも随時お伝えしますので、今後も応援よろしくお願いいたします!

写真・文:柴田明(SILK)


 

[ みらまちカフェトーク第1弾 ]

my turn 代表 杉原 惠 氏「ママがまちを変えていく!」
8月25日(日) 10:00~12:00
会場 : 西京区役所2階大会議室
申込 : 7月25日開始予定

くわしくは、西京区Webサイトをご覧ください。

京都市西京区 │ 「未来の西京まち結び~みらまち結び~」の実施について
https://www.city.kyoto.lg.jp/nisikyo/page/0000253848.html