ママがまちを変えていく!自分がワクワクすることを、社会とつながる仕事にしよう

「未来の西京まち結び〜みらまち結び〜」の第1回公開イベントは、カフェトーク「ママがまちを変えていく!」。子育て中のお母さんを中心に約40名の方にご参加いただきました。無料託児スペースにはたくさんの子どもの姿が。「『やりたいことを実現している人』が京都でイチバン多い区に!」というテーマの実現に向けて、大きな一歩を踏み出せた1日となりました。

この日は、子育てをしながら自らが立ち上げた仕事をしている4名の女性が、今の仕事を始めるまでの葛藤や仕事と家庭を両立するための工夫など、ご自身の経験をざっくばらんにお話ししてくださいました。my turnから、SILKのコンシェルジュでもある代表の杉原 惠さんとメンバーの坂野 友里さん、小笠原 梨帆さん。そして、京都オリエンテーションから代表の西 恵味さん。彼女たちの等身大の姿に勇気をもらった方も多かったことと思います。

肩書きも収入もない自分に対してもやもやした経験から、お母さんたちのスキルを活かす場を作りたいと思うように

my turnは、イベント開催や企業のサポート事業をしている、仕事も子育ても自分らしく楽しみたい女性たちのチームです。まずは代表の杉原さんに立ち上げのきっかけやご自身のキャリアを伺います。

杉原: 1人めの出産の時、悩みに悩んだ末にANAのキャビンアテンダントを辞めました。それまでは全国を飛び回って仕事をしていたのに、いきなり肩書きも収入もない自分になって、すごくもやもやしていたんです。ところが、運良く声をかけてもらって、1年後には大学教授のアシスタントとしてまた働くことになりました。その時、働く前よりも忙しくなったはずなのに、なぜか気持ちに余裕ができたことに気づきました。それまで抱えていたもやもやがなくなったんです。

子どもと離れて外で働くことでこんなに気持ちが変わるんだと思ったら、今度は「他のお母さんたちはどうなんやろう?」「保育所のお母さんや前職の同僚の子たちは、どんな風に仕事と子育てを両立してるんやろう?」と、周りの人のことが気になってきました。話を聞いていくと、身近なところに高いスキルを持っているお母さんがいっぱいいることがわかって、しかも皆、社会とつながりたいという思いを持っていたんです。じゃあ私はそれを引き出す役になりたいと思ったところから、my turnの活動が始まりました。

杉原: 2人めの出産後、2015(平成27)年に初めてイベントを開催しました。この時はもう、失敗してもいいわって思ってました。私にとっても、出店してくれるお母さんたちにとっても初めての経験やったし、誰も来てくれへんくても自分たちが楽しめたらいいやって。でも、蓋を開けてみたら100名以上のお客さんが来てくれたんです。私もすごくびっくりして嬉しかったし、出店してくれた皆の表情ががらっと変わったことを感じました。「次いつやるん?」「杉原さん頼むで」という声をたくさんもらって、この活動をがんばって広げていこうと思いました。

そこから自分たちのペースでイベントを続けてきて、2017年に「my turn」として本格始動しました。今、メンバーが約30名、そのうち運営にも携わってくれるコアメンバーが10名いて、企業さんとのコラボレーションの話もいくつかいただいています。アドバイザーとして独身男性やパパにも参加してもらい、活動の幅が広がってきました。

家族との時間も大切にしながら、自分の将来ともしっかり向き合って、人生を楽しめる女性が増えたらいいなと思います。今の子どもたちが大人になった時に、女性が今よりもっと柔軟な生き方・働き方をできる社会になっていてほしいですね。

「私ってなんなんやろう」という気持ちで仕事をしていた

ミニバスケットボールのコーチやPTA、町内会の役員など、地域の仕事にも積極的に関わっているという杉原さん。多忙な日々の中で大事にしていることを教えてくれました。

1.自分がワクワクするポイントを探る
2.それを多くの人に話す
3.話を聞いて共感してくれた人に仲間になってもらう
4.(手段として)起業してみる
5.明日からできそうな小さなことから、まずやってみる

こうしてプロセスの一つひとつを見てみると、ちょっと勇気を出せば自分にもできるかも、という思いが芽生えてくるのではないでしょうか。ここからは、自分のやりたいことを仕事にしているママ3名とのトークセッションが始まります。

杉原: まず、今の仕事の紹介と、その仕事を始めたきっかけを教えてください。

坂野 「耳つぼを通して皆さんの体のケアをお手伝いしています。私はもともと外資系ブランドのアクセサリー販売員として働いていました。育児休暇を取った時に、初めて15年間働いた職場を離れたんです。そしたら、私ってあんなに働いてきたけど手に職を持っていないなぁと思うようになって。収入も時間もある今がチャンスだと思って、育休中に耳つぼの資格を取りました。

その後、職場に復帰したのですが、そこからの生活が体力的にも精神的にもかなりしんどくて……あれこれ工夫しまくっても時間が全然足りなくて、2人めの出産の時にもう無理やと思いました。ちょうどその頃に杉原さんに出会って、こんな風に楽しみながら仕事してる人がいるんや、という衝撃を受けたんです。働くことへの捉え方が、それまでの私とは全然違いました。心の鍵をひとつ開けてもらったような気がします」

小笠原 「私は10歳と8歳の女の子を育てながら、主人の家業の果物屋さんで働いています。その前は介護福祉士として病院で働いていました。出産の時に、取りたい資格もあったけど、あきらめて退職を決めました。そこから果物屋を手伝うことになったんですけど、発送の準備とか事務仕事とか、前からあった仕事を引き継いでやるばかりで……だんだん『私ってなんなんやろう』っていう気持ちが生まれてきたんです。自分から主体的に考えたり動いたりして手にした仕事じゃなかったから。

私にとって1回めのターニングポイントは、下の子が2歳に保育所に入った時でした。ちょうどそのタイミングで病院の受付の仕事に誘ってもらって。これは外の世界に出られるチャンスや!と思って、やることにしました。2回めは、下の子が小学校に上がった時。この果物屋で私は何ができるんやろうって考え始めて、義母がよく作っていたフルーツサンドを作りたいという気持ちが湧いてきました」

仕事を通して知った考え方に、自分が子育てをする中で何度も助けられてきた

西 「私は、海外から子連れで京都に来た家族をサポートをする、京都オリエンテーションという会社の代表をしています。9年前にボランティアから活動を始めて、支援の幅を広げるために途中で事業化し、創業4年めを迎えました。海外から来たお母さんたちの『出産届けを一緒に書いてほしい』『予防接種について来てほしい』など様々な声に応えたいと思って、SILKの創業支援を受けたんです。

この仕事はすごく楽しくて、海外のお母さんたちの話を聞くことで心が軽くなったり、励まされたりすることがたくさんあります。たとえば、あるフランスの方は出産した時にお医者さんから『早くファッショナブルで魅力的な女性に戻ってくださいね』と言われたそうです。色んな生き方や考え方に触れることで視野が広がって、自分が子育てをする中で何度も助けられてきました」

杉原: 西さんはこの中で一番最初に起業されていますよね。お子さんも3人いて、起業する時に色んな不安があったと思うんですけど、どうやってそこを乗り越えたんですか?

西 「もちろんすごく不安でした。やりたいなと思い始めてから、本当に家事と両立できるかなとか、私にそんなことできるんやろうとか、たくさん悩んで、実現までに3年くらいかかりました。でも、サービス内容とかWebサイトとか、そういう外側のことを考える前に、自分はどういう人間で、なんでそんなに外国から来た家族のことが気になるか、という自分の内面をしっかり考える機会を持てたことがよかったと思います。自分の軸が定まると、この仕事は私だからできることなんだ、と自信を持てるようになって、不安を振り切ることができました。

とはいえ今でも毎回新しいお客さんに会う前は毎回不安なのですが、小さい頃に父親から『おまえは幸せの星の下に生まれてるから何があっても大丈夫』と言われたことをずっと覚えているんです。その言葉が効いていると思います」

杉原: 3人とも、起業するぞという意気込みで始めたわけではなくて、自分が気になることや変えたいと思うこと、やりたいこと、日常の中にある自分の気持ちからスタートしているところが共通しているなと思いました。では、参加者の皆さんから何か質問はありませんか?

Q: (男性より)仕事に行くにも、ごはんやミルクなど子どもを預けるための準備を整えてから出かけるという話を聞いて、お母さんの負担って想像以上に大きいんだなと思いました。自分もちょっと夫婦関係を見直さないといけないなと焦っています。お母さんが仕事を始めようとする時に、パートナーがどんな役割を担えたらよいでしょうか?

坂野 「うちはだんなさんがサラリーマンで、土日が休みなんですね。私は土日にマルシェなどに出店することが多いので、家族を巻き込んで、皆でイベントに参加しています。楽しみながら私の仕事を見てもらえるように、お弁当を作って、キャンプ行くぞーみたいなノリで。だんなさんも思った以上に楽しんでくれていて、最近イベントがきっかけでスパイスにはまってカレーを作り始めました(笑)。一緒に楽しんでくれるのって、すごく励みになると思います」

Q: 杉原さんが、お母さんたちとチームを組んで働く上で心がけていることを教えてください。

杉原: 代表は私やけど、トップダウンではなく、フラットな立場で意見を言うようにしています。私は皆のことを尊敬しているし、皆の意見も尊重したいんです。あとは、お母さんたちにとって外に出られる1時間はすごく貴重なので、段取りよくミーティングを進められるよう事前に議題を共有して、予め意見をまとめて来てもらうとか。皆が動きやすいように、「失敗しても誰も責めへんし、サポートしてくれる人も周りにいっぱいいるから大丈夫やで」という空気を作ることが私の役目だと思っています。

自分が「ワクワクすること」を広げていくために、明日踏み出せる小さな一歩は?

「行動を起こしている人たちも自分と同じような悩みを持っていたんだなとわかって、心強いです」

「皆さんが仕事を楽しんでいることが伝わって来て、そんな風に働けたらいいなと思いました」

「自分に自信がないことに気づいたので、自分と向き合う時間を作って、もうちょっと自信を持てるようになりたいと思った」

4名のお話について感想をシェアする時間には、各テーブルからこんな声が聞こえてきました。ここからはいよいよ、参加者の皆さんが明日踏み出す一歩を作るワークショップです。

○あなたがワクワクすることは何ですか?時間を忘れて没頭できる、していたことは?

○その「ワクワクすること」の輪をもう少し広げて、色んな人に届けたい、という人をグループで1人選んでください。そのためのアイデアをグループ皆で出しあいましょう。

○明日踏み出せる小さな一歩を書いてみましょう!

という3つのステップをテーブルごとに進めていきます。すでにやりたいことが明確にある人や個人の活動として挑戦を重ねている人もいて、想像以上にたくさんのアイデアが出てきました。皆さんの「ワクワクすること」として、こんなことが挙がっていました。

・子どもの部活の応援
・手芸
・掃除
・サイクリング
・野菜の栽培
・子ども服を作る
・ヘアデザイン考える
・模様替え
・絵を描くこと
・新しい仕組みを想像すること
・新しい考えや人と出会って、誰かに伝えること
・キャンプやイベントの企画
・夫婦ブログ
・アクセサリー作り

生活の中で大切に育んできた趣味やライフワークを語る表情を見ていると、ここにいる皆さんが今日見つけた「小さな一歩」を踏み出すことができたら、すごいことが起こりそうだなという予感がありました。今後は具体的な事業化に向けての相談会を開催し、この日生まれたアイデアの実現を参加者の方々と一緒に進めていきます。いったいどんな企画が走り出すのか、ワークショップの盛り上がりを受けて、私たちも期待で胸がふくらみます。みらまちカフェトークもあと2回続いていきますので、下記のテーマにご興味のある方はぜひご参加ください!

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[今後の予定]
9月26日(木)19:00〜21:00「西京区の魅力を発信するツーリズム」
10月25日(金)19:00〜21:00「副業×コミュニティビジネス」

詳細は、西京区Webサイトよりご覧ください。

写真・文:柴田明(SILK)