中小企業の働き方改革を成功させるには?│京都市 亀永 和彦×SILK 阪本 純子 [対談前編]

「中小企業には現実的に考えると難しい」「一部の社員に負担が集中するだけでは?」

そんな疑問や不安もよく耳にする、働き方改革。経営者、従業員、更には取引先や家族、地域の人たちまで、企業に関わる全ての人にやさしい働き方改革を実現すべく、京都市とSILKは京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」を始めます。

開始に先立ち、京都市産業観光局 産業企画室 ひと・しごと環境整備部長 亀永 和彦氏に、京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」のプロジェクトリーダーを務めるSILKイノベーション・コーディネーター阪本がお話を伺いました。

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働き方改革を考えていない経営者は、実はいないと思います。

阪本: まずは、今回、京都市が中小企業の働き方改革に取り組む目的について聞かせてください。

亀永: 「働き方改革」という言葉は新聞やテレビでもよく耳にするようになりましたが、中小企業の方とお話ししているとまだまだ多くの方が「あれは大企業やからできるんですわ、我々はそんな悠長なこと言うてられません」と言わはります。でも「働き方改革」という言葉が出てくる前から、経営者の皆さんは生産性を上げることやったり、従業員が長く勤めてくれる環境を整えることやったり、ずっと考えてきてるんですよ。悩みながら、失敗しながら、色々試行錯誤をしてきているわけです。その思いや経験を共有して、成功事例を作っていきたいんです。

阪本: 経営者も考えているし、従業員も人生に関わることなので自分ごととして考えているんですよね。ところが、「残業削減」のような形式的な取組になってしまうと、反発が起こったり、続かなかったりして、かえってメンバーの間に壁を作ってしまうこともあります。

亀永: 今回「従業員の声からつくる」というテーマをSILKからご提案いただいて、「そうや、まさにそれや!」と思いました。昨年の京都市の調査で、働き方改革を実践するにあたっての課題を経営者の方々に聞いたのですが、一番多かったのは、「従業員の意識改革」で61.8%でした。次が、「経営者の意識改革」の37.6%です。私の予想では、IT化とかもっと具体的なことで悩んでおられるのかと思っていたのですが、実際には経営者の方は、従業員も自分も一緒に意識を変えていかなあかんという風に考えているんですね。

阪本: そうですよね。トップダウンの指示ではやはりうまくいかないので、会社全体を巻き込んでいくことが大切だと自分自身の経験からも痛感しています。

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「従業員の声からつくる」ことで、継続する取組にしていきたい。

亀永: 働き方改革が進んでいる企業の経営者の方に話を聞くと、やはり積極的に従業員とコミュニケーションをとっています。毎年、就業規則を従業員と一緒に見直しているという声もありました。有効求人倍率が1.5倍を超え、多くの企業が人手不足に悩んでいる現状においても、働き方改革が進んでいる企業の中には求人に困っていないというところもあります。

阪本: 働く人に優しい企業には、自然と人が集まってくるのでしょうか。

亀永: 経営者が、従業員の人生を豊かにすることを考え、その理念を社内で共有できている企業は採用もうまくいっているというのは実感としてありますね。担い手不足は中小企業にとって死活問題です。今回の取組をWebサイトやSNSでアピールしていくことで、若い求職者の方にもっと市内の中小企業に目を向けていただきたいという思いもあります。

阪本: 私たち中小企業診断士が関わる支援では、経営者にだけヒアリングして進むことが多いんです。でも今回は従業員にもヒアリングして、経営者と従業員のコミュニケーションを活性化していくことを重視しています。

亀永: そこが今回のプログラムの肝になってきますよね。

阪本: はい。半年間のプログラムが終わった後も継続していかないと意味がないので、自分たちで先に進めていけるような関係性を築いてほしい。そして、プログラムに参加される企業だけでなく、たくさんの企業に意識の変化が広がっていってほしいと思っています。

亀永: 私が思っている伴走支援のイメージは、子どもが初めて補助輪なしの自転車に乗る時の、お父さんお母さんなんです。乗りたいという意欲がある、けどどうやっていいかわからない子どもに対して、最初は「大丈夫やで」と後ろで支えてあげて、やがて手を離す。子どもは気づけば自力で走っている。そんなイメージです。

阪本: 二人三脚で進むのではなく、企業が自走できるようになることが大事ですよね。色々な機関が企業支援をしていますが、コスト改善をしたいとかこの課題を解決したいとか、ピンポイントでオーダーがくることが多いようです。今回のように、状況を俯瞰して、何に取り組むかから一緒に考えていくプログラムは珍しい。そういう意味では私たちにとってもチャレンジですね。

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京都市に暮らす人々の多様な生き方・働き方を実現するために

亀永: SILKには、既製の型にはめるのではない、オーダーメイドの支援を期待しています。まだはっきりしたことは言えないのですが、こうした働き方改革の支援は少なくとも3年間は続けていきたいと思っています。

阪本: SILKはこれまでも、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」や「イノベーションキュレーター塾」など、多様な生き方・働き方を実現するための事業を実践してきているので、そこで培ったネットワークも活かしてこの事業を広げていけるよう頑張ります!
逆に、今回の働き方改革への取組を通して、ソーシャルに全く関心のなかった方にもビジネスにおける「人に優しい」「社会に優しい」という視点を知ってもらいたいです。

亀永: 京都市の全ての施策の根源には、40年前に出した「世界文化自由都市宣言」があります。宣言の一部を紹介しますね。

世界文化自由都市とは、全世界のひとびとが、人種、宗教、社会体制の相違を超えて、平和のうちに、ここに自由につどい、自由な文化交流を行う都市をいうのである。

亀永: これを実現するには、京都に暮らす人々が幸せじゃないといかんのです。そのためには、多様な生き方・働き方の実現は不可欠です。いきなり大風呂敷を広げる感じにはなるんですけど、京の企業「働き方改革チャレンジプログラム」もこうした都市の理想像につながっていくものにしたいです。今年がちょうど世界文化自由都市宣言40周年になるので、今一度市民の皆さんに考えていただく機会となればと思っています。

阪本: SILKが設立されたのも、そうした流れの一環ですもんね。今回のプログラムをきっかけに、多様な生き方・働き方の実現を加速させていければと思います!

[後編]に続きます。

写真・文 : 柴田 明 (SILK)


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