「100年人生のためのお金を考える」トーク&ワークセッション レポート

12月7日(木)「100年人生のためのお金を考える」というテーマで、トークセッションが開催されました。講師はトータル・ライフ・コンサルタント 志野元信氏、ファシリテーターはSILK イノベーション・キュレーター 秋葉芳江氏です。会場は、公益財団法人信頼資本財団が管理運営する町屋スペース「風伝館」、志を支援する町家スペースです。趣ある和の空間です。前半は講義形式、後半は参加者の皆様が3、4人の輪になって話し合うワークを行いました。

今回の対象は、6月に開催された、「サードキャリアを切り拓く」トークセッションと同様、「概ね40歳~60歳くらいの、自分を女性と思う人」です。100年人生を考える上で金銭面についても考える必要があることから、前回のセッションの続編として開催しました。イントロレクチャーとして志野氏の「これからの人生が安心してわくわくできるようにするためのお金の話」をお聴きしました。

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■3つの杖

これからの人生を考えるには、「あなたの杖」「みらいの杖」「まさかの杖」の3つの杖を考える必要があります。これらの杖は、それぞれどのようなもので、どう活用していくのが良いのでしょうか。

■あなたの杖

「皆さんは自分が今持っている杖が分かりますか。ここでは「年金」と「保険」を例に、私たちが困ったときに貰えるお金はどれほどあるのか」というお話を聴きました。例えば、医療保険のうちの1つ、加入者やその家族に適用する「公的医療保険」。これは、病院に行った時だけではなく出産した時にも貰うことができますが、実際には貰っていない人が多くいるそうです。このように自分の持っている杖を再確認し実際に使うことで、将来の貯蓄への資金を増やすことができるのではないか、というご提案をいただきました。私自身知らないことも多くあったため、自分の持っている杖を上手に活用していくためにも、まずは情報を知ることが重要だと感じました。

■みらいの杖

「これは、100年人生において非常に重要なものであります。人は生きていく上で何をするにもお金がかかります。では、実際にどれぐらいの資金が必要なのか、その時にどうしたらいいのか」というお話を聴きました。例えば、2種類ある住宅ローン。返済方法は、「元利均等返済」「元金均等返済」の2つあります。「元利均等返済」は、安定しているが、最初の数年は利息の返済に充てられ元金がなかなか減らない方法。「元金均等返済」は、最初の返済額が多いが、返済が進むにつれ毎月の返済額は減り、総返済額が安くなるものです。このことを知らない人は多く、銀行から勧められた「元利均等返済」を行う人が多いそうです。しかし、「元金均等返済」を行うことで、将来的に返済額を減らしていくことができる、というお話を聴きました。2つの返済方法があることを知らない参加者は多く、「家を購入する際に、きちんと返済方法を知っておけばよかった」という声があがりました。家を買う際に初期資金に余裕のある方は、「元金均等返済」を活用して、返済額を減らすという選択肢があります。

■まさかの杖

いつ、何が起こるのかは、誰も予測することができません。そのため、どのように予防をするのか、起こった場合はどのような対策を取るべきなのか考える必要があります。そのため、保険の内容を確認することもまさかの時の備えにつながります。それには4つのポイントがあり、「どんな時に受け取れるのか」「保険料の負担は大丈夫か」「いくら受け取れるのか」「いつまで保険の期間があるのか」だそうです。まさかの杖は、自分が持っている不安を無くして安心した生活を送るために必要なものであり、個人によって杖は違うように感じます。みなさんも、4つのポイントを参考に、自分に合ったまさかの杖を探してみてはどうでしょうか。

■これからしていくべきこと

このように、知って得をする情報は多くありますが、ほとんどの人がそれを知らないのが現状です。そのため、私たちはたくさんの情報を仕入れて活用する必要があり、それによりお金に対する不安を減らすことができるのです。また、それらの知識は自分で勉強をするだけではなく、相談できる相手を作っておくことも重要だと感じました。今回のようなセッションに参加してみることも、不安を減らすことにつながるかもしれませんね。

■ダイアログ

参加者の皆様から事前にいただいた質問、今回のお話から出た疑問に対する質問やお金に対する全般的なことに対して、講師・ファシリテーターが、参加者との会話を交えた和やかな雰囲気の中、答えました。

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最初に出た質問は、「お金を稼ぐことに対する罪悪感を消したい。」というものでした。それに対して、「お金を稼ぐことは悪いことではない。稼ぎ方と使い方の問題。そのお金を元に色んな事にチャレンジすることができる。周りの人を喜ばせることもできるかもしれないし、起業することだってできる。今よりもいい生活をしたいという風に贅沢ができると捉えるのではなく、ワクワクしたり、自分の視野を広げるツールとして使えばよい。」というアドバイスがありました。

こちらには、共感を覚える人も多かったようです。参加者の中にも「お金を稼ぐ=マイナスイメージ」を持っている人もいましたが、稼ぎ方と使い方次第で、プラスのイメージに変えることができるようです。

続いて、「資産の何%ぐらいを事業に使えばよいか。」という質問がありました。こちらは、「人によって様々で、何%とは言い切れない。その事業の将来性によって見極める必要がある。可能性のあるものでも、いつ「まさか」が起こるかは分からないので経験的には50%以上は残しておくとよいだろう。」ということでした。

「一概に何%とは言い切れず、その事業の将来性を見極めることが重要」ということから、「みらいの杖」と同様、未来について考えることが重要なようです。

そして、今いくつかの企業で取り入れられている旬の話題に関しての疑問、「兼業はどんな人にもできるのか。」というものがあげられました。これに対して、「無理のないもので、その事業が楽しかったらするのがお勧め。目標貯金額があるお金稼ぎのためにするのなら、期間を決めてする。副業をしてもよい会社も増えてきている。会社によっては、もし社員が「他のことをやりたいから退職する」といった場合、良い人材を逃さないために、社内で社員がやりたい事業を起こすということも増えてきている。そして、それが会社の強みになる場合もある。兼業はできるかできないかではなく、近いうちに当たり前になるだろう。」ということが話されました。さらに、日本の兼業・副業の最新動向についても紹介がありました。

「兼業が当たり前になるかもしれない」ということは、企業にとっては「個々の能力が上がる」個人にとっては「自分のやりたいことができる」というメリットがあるようです。

これらの質問は、今回の参加者に限らず、みなさんがこれからのライフスタイルを考える上でも、参考になることがあるではないでしょうか。学生である私は、社会人の時に「兼業が当たり前」になる可能性があります。不安もありますが、自分のやりたいことに挑戦できるのがとても楽しみです。

■キャリアとお金について

ワークショップでは、「どのようなキャリアで今日にいたっているのか」「お金と自分のキャリアの終着点について」について、3、4人のグループになり参加者同士で話し合いました。同世代の話し合いということもありお茶会のような楽しさもありながらも、真剣にそれぞれのキャリアについて考えました。

それぞれのグループで最も盛り上がった話題からキーワードを出して共有し合いました。出てきたキーワードとして、「健康年齢」「助け合い」「介護」「年金」「自由」「楽しみ」などがありました。話を聞く前に持っていたお金に対する不安が減り、前向きな言葉も多く出てきたように感じます。

■まとめ

今回のセッションを通して、私たちがこれからのライフプランを描くうえで出てくる金銭面での不安は、「自ら知識や情報を取り入れること」「誰かに相談すること」で軽減させることができることを学びました。

また、全体を通じて、個人的に印象に残る言葉が多くありました。例えば、「お金を稼ぐことは悪いことではない。そのお金を元に色々なことにチャレンジすることができる。周りを喜ばせることもできるかもしれないし、起業することだってできる」「もしダブルワークをしたいなら、楽しいか、楽しくないかで考えてみる」などです。学生であり社会人と立場を経験していない私は、これまではお金に対して生活をする上で欠かせないものという固定概念を持っていました。しかしそれだけではなく、「挑戦をする機会を増やし、自分の視野を広げる」という側面も持っているということを認識し、これから働くことが楽しみになりました。

これからもキャリアに関するセッションを開催しますので、ぜひ皆様ご参加ください。
みなさんもぜひ、一緒にキャリアについて考えてみませんか。

尾形早佑莉

尾形早佑莉

京都市ソーシャルイノベーション研究所 インターン生 (大学2年生)