変わるもの、変わらないものを届ける企業 – 『京都デニム』 / 京都寄り道推進室 × 1000とKYOと スペシャルインタビュー #2

京都の大学生が主体となって「これからの1000年を紡ぐ企業認定」の企業を紹介していく「京都寄り道推進室」より、京都デニムさんへのインタビューをご紹介します!

■ はじめに

京友禅染めを施したデニム製品と共に、日本の伝統文化を世界中に届ける京都デニム(有限会社豊明)。

『 デニム × 伝統工芸 』

遠いようで近いものが掛け合わされるとき、どのような化学反応が起こるのかみてみたいと思うのは私だけではないはずです。

京都デニムは日本のデニムブランド。デザイナー桑山 豊章さんが2008年にブランドを設立しました。
デニムと着物は、古くなればなるほど価値が増すという共通点を持っています。


京都駅から徒歩約5分で「本物」に触れることができる京都デニム直営店に着きます。

屈託のない笑顔で出迎えてくれたのは、店長の宮本 和友さん。店舗運営を行いながら、SNSの発信にも力を入れています。

店内で、お客さん1人1人とコミュニケーションをとる宮本さんの接客を目の当たりにすると、京都デニムへの愛だけではなく自身の活動に対する愛も感じました。その愛がどこからきたものなのか、宮本さんの愛の形はどのようなものなのかを明らかにするためにお話を伺いました。

宮本さんは、大学生の頃から代表取締役の桑山さんと共に事業を行い、マーケティング・店舗運営・コミュニティづくりを担当しています。

■ 柔軟性が継続の秘訣

デザイナーの桑山 豊章さんは、江戸時代から続く京都の呉服店で生まれ、幼い頃から手描き友禅が身近にあったそうです。そんな桑山さんと共に、2004年に「京都デニム」を設立した宮本さん。

桑山さんの家業を引き継ぐ形で「京都デニム」がスタートします。事業を行っていくなかで、宮本さんは時代の変化と共に着物の需要が減っていく様を目の当たりにします。需要が増えても、そもそも作り手がいなくなってしまったら技術が消えてしまうということに危機感を覚えたといいます。

京友禅は、着物や帯を染める際の伝統的な技法のひとつ。
はんなりとした美しい雰囲気が特徴です。

では、技術を継承するために自分たちには何ができるのか。

「着物に使用される本物の技術と手仕事の想いを多くの人に知ってもらうためには、新たなモノ・コトが必要だ」と考え、京友禅の技術継承を目標に法人化しました。なんとか着物を着る機会を増やすことが出来ないかと着付け教室を開催するなど試行錯誤する日々が続きます。

「できるだけ多くの人に手仕事の技術を知って欲しい。」

そんな宮本さんたちの思いを「デニム」という素材に乗せ、運び続けること20年。

歴史あるものが故に、最初の頃は批判の声もありながら、それでもこの20年を走り続けることができた理由を考えた時、「自分たちがやりたいことの芯を据えた上で、時代に適したアイデアや工夫を施せる柔軟性を持っていたから」だといいます。

変わらないもの、変わるものを試行錯誤しながら明確にし、「モノ」ではなく「技術」を次世代に伝えようとする京都デニムは、これから社会に出る私たちにとって心強い存在だと感じました。

様々なデザインが施された SIZUKU BAG 

 

■ 双方向のやり取りが生み出す京都デニムファン

「もしSNSやインターネットがなかったら、京都デニムはできていなかったかも。」と、笑って話す宮本さん。

3.5万人のフォロワーが見守るインスタグラムの定期的な投稿だけではなく、DMを通じたお客様とのコミュニケーションや、ChatGPTを使った日英同時通訳のライブ配信も実施。さらに、YouTube なども活用しながら情報発信を行っています。

デニム柄入れチャンネル 京都デニム


双方向のやり取りを行うことで、見ている人が物事を自分ごと化できるようになるといいます。その結果、積極的に京都デニムを知りたい、伝統工芸を知りたいと思い実際に商品を手にする人が増えていきます。

事業と一緒で、継続することが難しいメディア。なぜ続けることができるのかと聞いてみると、

「好きだから。」という一言。

爽快な表情と共に返ってきたこの一言が、宮本さんがさまざまな活動を継続できる理由だと感じました。
京都デニムの魅力は、SNSやメディアでの発信だけではなく、商品そのものが伝統文化の新しい側面を示しているところです。伝える手段によって、情報が届くまでのスピードや質感は異なります。新しい乗り物が登場するとまちのあり方が変わるように、独自のかたちで私たちに新しい発見をくれる京都デニムが、世界に新たな見方を届けてくれるのかもしれません。 

統一感のある京都デニムの instagram 
( 2024年10月10日現在 )

■ 京都への恩返し

受け継がれていくことも伝統工芸であり、日本の文化の良さだと語る宮本さん。

次の担い手になるのは、私たちの世代です。

「若い人が京都という地で生活し、もっと京都を好きになって、自然に京都を盛り上げようという気分になってくれたら嬉しい。そういう人を一人でも増やして、京都らしい文化や雰囲気を作る担い手になってもらいたい。」と、若者への思いを話します。

大阪の大学に進学し、その後20年間京都で過ごしてきた宮本さん。京都の人や文化に囲まれた生活の中で、大きく成長できたと言います。だからこそ、今度は宮本さん自身が京都への「恩返し」として、若者に関わる一人になっています。

その関わり方の一つが、京都デニムというブランドを通して固定概念を壊し、新たな方法を提案し続けることだと感じました。

デニムで作られた熊のぬいぐるみ DENIGUMA は
若い世代にも人気の商品


新たなものを見つけたり、固定概念を壊すしたりすることを難しいことだと感じる人も多いのではないでしょうか?

しかし、それすらも楽しんでいるように見える宮本さんにその秘訣を聞くと「こんなんやったら面白いんちゃう?みたいな大学生のときのノリを大切にしていて、その柔軟性が結果としてより良いものを持続的に届けることに繋がっている。」と話します。

まさに、変わるものと変わらないものを見極めた上で、若者と自身の京都への恩返しに期待を膨らませている様子でした。

■ 最後に

軸となる変わらないものを据えた上で時代の変化を肯定し、その時代の動きに柔軟に対応することで商品と思いを届け続ける宮本さん。

目まぐるしく変化する現代を生きる若者に必要な「軸のしなやかさ」を、私たちの1歩先で示してくれているように感じました。

今後も、京都デニムの推し活はやめられそうにありません。

撮影・取材にご協力いただきありがとうございました!


○ MOTHER HOUSE

着物に使用される本物の技術、手仕事の想いを「デニム」という素材に昇華、継承し、多くの人に新たなモノ・コトを通して知ってもらう活動をしている世界で唯一のブランド。

京都デニムオンラインショップ

○ 1000とKYOと

1000年先に続く持続可能な社会をつくろうとする企業と若者たちとが新たに出会い、対話・交流し、協働しながら、これからの働きかた・生きかたをともに探索するプロジェクト。

ABOUT 「私たちが紡ぐ、これからの1000年。」について| 私たちが紡ぐ、これからの1000年。

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